7/17//2001 材料技法  記事
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絵絹について(その2) 絹枠に張る

絵絹について(その1)
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/image/2001/062401/index.html
では、現在、市販されている絵絹の一般的なことについて紹介しましたが、今回は、より細部について見てみましょう。

絵絹の密着スキャン画像
■ 絵絹の密着スキャン画像
 ■ 絵絹といっても織物の絹に違いありません。昔は、絹の着物、帯などに即興で絵を描いたりもしたそうです。かって、海外旅行が珍しかった頃、ある著名な画家は、毎晩のように催される夜のパーティーに出席するおり、西洋の方々のパーティードレスに対して、婦人の着物に墨、金泥などで絵を描き、その場をわかせた?そうです。(もちろん何も描いていない?着物を準備して行っているのですから・・・前もって?やる気!は合ったのでしょうね。)

左、画像は、絹地のサンプルです。目の荒いモノ(左端)がどちらかというと古い時代のスタイルです。近代(大正から昭和初期頃、紙と同じように描ける絹として、目の詰んだものがつくられるようになったそうです。

織物の特性として、縦糸、横糸、それぞれのよられる本数、張力によって素材としてのコントロールを行うのだそうです。

絹枠と絹を張った状態
■ 絹枠と絹を張った状態
 ■ 左画像が、絹枠と、枠に絵絹を張り、描ける状態になったモノです(最前面)。

絹枠については、「絵絹について(その1)」でも書きましたが、絹の縮み方向について考慮して作る必要があります。同時に、この縮みは、かなりの張力となりますから、それに耐えられる木材選択、幅の確保(厚みよりも正面からの木材幅)が必要です。

最近は何らかの処理が施されている関係からか?買ってきたばかりの衣服が洗濯によって縮む経験というのは少ないかもわかりませんが、一般的な絵絹を使用する場合、この縮みは必ずありますから、注意してください。

*ただし、この縮みを想定して絵を描く事の難しさからか?絹離れが起きていると考える人もおり、縮み難い絹というものも試されているようです。しかし、試してみると、乾燥した状態でゆるんでみたり、水を張った状態では、縮んでみたり、これはこれで絹枠に張って旧来通り描く場合、扱いが難しいものです。
先に、裏打ちし、パネル等に張って紙の様に描くなら、便利かもしれませんね。しかし、この使い方では絹に描く場合の本来?のおもしろさとは違うものになりそうです。

絹を張る
■ 絹を張る
 ■ 絹を枠に張る場合、小さなサイズでは、あまり問題とならないのですが、幅が広く、絹自体の重さで、垂れてしまう場合があります。このような場合、芯となる棒などに一度巻いて枠上を動かすと良い結果が得られます。

生麩糊準備
■ 生麩糊準備
 ■ 上記の様にして張る場合、まず、絹枠に糊をつけておきます。強めの生麩糊を先に枠につけ、その上に絹を押さえつけ、絹地の隙間から上面にしみ出してくるように押さえつけて行います。

糊が足りない場合、上面からも加えて竹べらなどで密着させると良いでしょう。

また、「ドーサ」の項で書きますが、絵を描けるようにする準備として、張り上がった絹(一晩くらいは置いて、完全に糊が乾いてから)にドーサを塗ります。これは、絵の具の定着を助けるために行うのですが、このドーサによって、張力が生じます。ピンと張った状態にこの時なりますから、糊を付けて枠張りするとき、あまり神経質にピンと張らそうと引っ張る必要はありません。枠隅につれ等が無いように、また織り糸が枠と平行になりたるんでいなければこの段階ではOKです。

絹いろいろ
■ 絹いろいろ
 ■ ドーサを引く前に、「湯引き」といって絹地が持っている油分を取る事を行う人もいますが、直接暖かいドーサ液を塗る事で同時に?行うことも出来るでしょう。

さて、絵を描く場合、この「ドーサ」は、紙でも絹でも重要な意味を持ちます。「ドーサの項」を参照ください。

 


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