膠(にかわ)を煮る
三千本膠は乾燥した状態で売られています。一本あたり約11グラムから15グラム程度の重さです。煮るときには水に溶かしますが、それぞれの分量等、使い方によって異なります。あくまで一つの例として捉えてください。
ビーカーやニカワ鍋を使って煮ますがそれぞれに入るように細かく砕かねばなりません。私の場合は、日本手ぬぐいなどを使って包み、割っています。ペンチなどで切ってもよいでしょう。
細かく砕いた3千本ニカワ
煮る前日に膠を水に浸けておきます。一中夜すると膠は水を吸って柔らかくなり、溶けやすくなります。分量(割合):三千本膠(1本)+ 水(60cc程度)
一昼夜、水に浸したニカワです。水を吸って膨らみ水から飛び出しています。(膠は腐りやすいものです。こうして浸け置きする場合も。梅雨や夏などどうしても常温では腐ってしまう場合があります。なるべく使わない時は冷蔵庫に入れておくなど注意が必要です。)ちなみに、左画像は3千本2本に水120ccを加えたものです。(参考の割合を2倍にして作ったものです)
鍋に水をはった状態で、浸け置きした上記のニカワを湯煎して煮ます。完全に溶けるまで十分に煮てください。
膠は生ものです。特に梅雨の時期、夏は腐りやすくなります。防腐剤の入った膠もありますが、この防腐剤が絹など基底材をいためる場合もあります。基本としては自分で膠を煮ましょう。腐りやすいですので保存は冷蔵庫を使います。胡粉など、膠の柔軟性が重要な絵の具もあります。胡粉を作る時は特に新鮮な膠を使いましょう。冷蔵庫から出し、左画像のように湯煎して使います。
出来上がった膠
参考:鹿膠、ウサギ膠、板膠、パールニカワ、ゼラチンなど様々なニカワがあります。描き方、ご自身の制作の用途に応じて使い分けます。腐りやすいものもあったり、乾燥後の強度もそれぞれです。制作のテクニックによっては、強すぎる接着力よりもある程度助長性のある固着力がポイントの場合もあるのです。経験によって自分が使いやすいものを選択し、描く作業によって使い分けましょう。何種類か混ぜて自分なりの膠にすることも可能です。ただし、科学的に作られた接着剤と、古くからある膠を混ぜた場合、不都合が出る場合もあるそうです。注意して使いましょう。鹿膠も夏用、冬用があり、冬用(茶袋)は乾燥による硬化を強くさせない性格付けがされていると聞いた事があります。ちなみに夏用(白袋)は乾燥時に水分含有を少なくし、定着を良くします。絵の具の重ねをする場合など有効です。三千本をベースとして他の膠を混ぜて使用する場合もあります。また粒膠、ゼラチンなどをベースにする場合もあるようです。パールニカワと呼ばれるニカワは固着力が強い変わり、柔軟性に欠けるように私は思います。三千本に鹿膠をごく少量混ぜる事で幾分腐敗が遅くなるように思います。参考2:膠を煮る場合、今回は湯煎する方法を紹介しましたが、作家それぞれ、膠の使用品種、水との濃度割合にも差があるように、煮方も様々です。私がこれまで聞いたり、試した経験のある方法として、上記の他に、土鍋に膠と水を入れてそのまま直火にかけ、吹きこぼれないようによくかき混ぜて煮上げる方法もあります。このとき、膠が煮立ってもよいという方もいらっしゃり、この場合水との割合は濃く、ある程度煮詰めて使うそうです。絵の具の種類にもよりますが、一番最初に加える膠の濃度こそが大切とのこと、量ではなく溶き方に発色の秘密があるとの事です。私も膠の扱いは異なりますが、接着については同様に思っています。膠は冷えるとゼリー状態になります。いわゆる「煮こごり」と同じです。絵の具を塗っている時に室温が低すぎると、乾燥するまえに画面上でゼリー状になり安定な定着とはなりません。冬はこういったことにも注意が必要です。一方、梅雨、夏場は腐敗に注意する必要があります。腐臭を感じるようになった膠は、一見接着されているように見えても不安定で、後の作業に影響を出す場合もあります。膠は「なまもの」と考えて使いましょう。煮上がった膠に不純物が見られる時は、ガーゼなどで濾して使うこともあります。
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現在では工業用膠もありますが、今回は古くから使われて来た三千本膠を例にして紹介します。