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4/3//2009  「無い」から始める日本画講座

背景、もしくは余白への作業

■ 地塗り1(基底材に絵の具を安定につけるための下地作り)に加えて、描こうとしている対象物自体への下塗りである地塗り2をすでに行いました。。描こうとしている対象物以外の部分は、未だ下地作りのための絵の具のままです。

基底材への”地塗り1”を薄い胡粉や、基底材自体の表面をより活かすような主張しない色、もしくは形で塗っていれば、このまま対象物のみを描き込んでいくだけで完成することが出来る絵の描き方もありますが(金箔地や板、壁などに描いた絵を想像してください。)、今回は、この段階で画面全体の色合い、絵肌を調整するような彩色を行います。(このような作業は、ある意味で時代的に新しい部類に入る作業と思われます)
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骨描きの項で「骨描きとは、描く対象とそれ以外の空間を切り離す表現そのものでもあります。」と紹介しました。花や人物を見たとき、現実の世界ではかならず一緒に地面や遠景があったり、もしくは部屋などが存在しています。絵画の上でしか存在しない何も無いかに見えるこの切り離された残りの空間を”余白”と呼びます。
対象物と余白による表現、この国の絵画が装飾的と呼ばれる一つの要素になっているのではと思われます。こうした空間の存在、表現が当たり前と考えられること自体、ある意味で特別なことなのかもわかりません。


※余白:現在では、コンピュターの画像処理技術や、3DCG技術の発達でまた異なった考え方、定義が必要になったようにも思いますが、なるべくわかりやすい表現ということで今回はこのように説明することにしました。
 

 
背景への着彩、画面全体の調整を行ったことによる変化を比較
>> 背景への着彩、画面全体の調整を行ったことによる変化を比較 (31.62KB)

画面全体に薄い胡粉をまず塗り、乾かない間に地塗り2でぬった以外の余白部分に重点的に絵の具を加え、刷毛で全体をならして画面を整えました。

注意しなければならないのは、塗る絵の具の層を厚くしすぎないことです。「地塗り2」の作業が透けて見える程度ということが重要です。

作業が終わり乾燥したとき、花の部分に行った”骨描きの線が透けて見える程度”の厚みでなければ次の作業が行いにくくなるのです。

使う絵の具の濃度や作業の手際などが一度でやろうとすると関係して来ますが、順序立てて自分自身が試みてみたい背景の色を想像し、何度かに作業をわけて行ってもよいのです。(この時、注意することは、前に塗った絵の具が完全に乾くのを待ってから次の作業を行うことです:クーラーが効いた部屋などでは表面が乾いたようにみえても、基底材の芯の部分が湿っていたりして思わぬ失敗を引き起こすことがあります)

平筆を使ってまず何らかの色を調子をつけながら塗り、あとで全体に薄い胡粉を塗って調整する方法もあります。

参考:金泥を余白部分全体に平筆で塗っても面白い表現になるでしょう。(こういった作業をするのに平筆は適しています)

 
絹の上でも同じように作業してみました。
>> 絹の上でも同じように作業してみました。 (45.27KB)

絹本の制作も同じように作業を行います。

参考:紙本の場合よりもより絹は水との親和性が高く、乾刷毛(空刷毛、暈刷毛)を積極的に使用した表現が可能です。ただし、こちらも一度で行うには経験、手際が必要です。

 
絵の具の準備
>> 絵の具の準備 (63.66KB)

参考:もしこの背景と全体への作業を一度とか、数回、それも薄く滑らかな色の変化をつけようとすると、それなりの準備が必要になります。

白群青、白緑青、藍+胡粉、洋紅+朱土、胡粉など必要な絵の具を全てをまず用意してから作業にとりかかる必要があるのです。

作業には水を使う以上、膠が水に溶ける速度も考慮する必要があります。手際、いわゆる作業のスピードがとても重要な要素となります。過去の方々の絵を見ていると、弟子など、何人かで行ったからこそ出来たような表現、絵の大きさがあるように思うことがあります。個人で制作することが一般的になった現在では、大作などでまた違ったアプローチ、表現を考える必要があるように思います。だからこそ現在多く見られるような塗り方が一般化したのかもわかりませんが、、、、。

 
背景への彩色が終わった状態。
>> 背景への彩色が終わった状態。 (34.9KB)

刷毛で全体をならしたことにより、地塗りの色が混ざると同時に花の胡粉部分にも色が乗っています。このため色が少し濁ったように見える部分もあるように見えます。しかし、このことは一概に悪いわけではありません。このことによって外と内、画面全体の調子を整える働きをしているのです。
また、これから仕上げで塗る胡粉をより際立たしてくれる働きにもなるのです。