仕上げ 絵の具を焼く
シベを胡粉で描きます。ゆっくりと筆を動かして、一度である程度の濃度が出るように描きます。筆が重なる部分は、先に入れた筆跡が乾いてから筆を入れます。完成時、背後に隠れる部分から描きます。めしべは胡粉と白緑、黄土やガンボージなどを混ぜて色を作ります。
葉の葉脈を胡粉、白緑、黄土などを混色して描き起します。掘り塗りした部分全てを塗りつぶさず、すでに出来ている調子を活かすように作業します。
葉の付け根、枝に着く部分を描き起します。
全体を見渡しながら葉の輪郭となる部分に白録や黄土、場合によっては藍や墨などをつかって葉一枚一枚を描き込みます。これまでの作業を壊さぬように慎重に作業します。(初心者ほど自身の作業結果を早くもとめたくて、一度に濃度を上げすぎたり、広い面積を塗ってしまいやりすぎてしまうものです。時間をかけて良いところなので、描いては乾かし、眺めるといった作業を繰り返しましょう。)
シベの先端、花粉のついた部分を黄土、胡粉、ガンボージ、洋紅などを使って描き込みます。絵の具の混色:基本として同じ粒子の大きさは混ぜてOKですが、岩絵の具と胡粉などで比重が違うような場合は沈殿の速度が違うので使用時、注意が必要です。染料系の絵の具、墨などを胡粉などに混ぜると具絵の具と呼ばれるものになります。染料系の絵の具だけを塗った場合、どうしても絵の具の存在感といったものが弱く感じられますが、具絵の具とすることで実態をもった描写にも使えます。また微妙な色の幅、諧調を作る方法として有効です。
折りとった枝の描き起しをします。地塗りの胡粉の状態に応じて、より強くした場合は胡粉を加えます。ただし、全体に一様に塗るようなことはせず、片ぼかしなどを使い、塗る面の中で差を作るようにします。
■■■ 絵の具を焼く ■■■
天然の岩絵の具は、火にかけて熱を加え酸化させることによって、明度を落としたり、色身を変化させて使うことが出来ます。椿の葉を仕上げるにあたって、粒子の感じられる(No.12〜No.11程度)岩絵の具を塗ります。地塗りの細かい絵の具から仕上げに近づくに従って荒い絵の具とすること、また明るい地塗りから仕上げに近づくにしたがって明度の落ちる絵の具を上に使うことで色を濁りにくくします。このようにすることで粒子の大小がある絵の具の積層を使った、複雑な色表現ができます。
焼いた絵の具は、同じ少し明るめの絵の具を混ぜることにより、色が生きたように感じられます。何段階か焼くときに分け、使用する時に混色するとよいでしょう。絵の具を皿に擦り付けるように膠で絵の具を伸ばしてなじませます。膠も一度にたくさん入れず、強い膠を少量づつ加えながら練るようにします。絵の具の粒子が荒くなるほど少し多めに加えます。岩絵の具の良い発色と、安定な定着の為に、金泥を溶くときに行うような「焼き付け」を行う場合もあります。粒子の感じられる絵の具を滑らかに塗ることは難しいものです。何度かに分けて行うなど工夫が必要です。■■■ 仕上げ ■■■
花の下になる部分など、明度を下げたい時は先に墨や藍などで暗い調子(隈)を作ったり葉の細かい抑揚なども同様に先に作業しておきます。最終的に焼いた岩絵の具を面積多くまとめるように塗ることで、葉の厚み、質感を感じさせます。この作業により、これまで行った葉へのそれぞれの作業を大きくまとめ、明度を一段階全体に落とすことによって主役である花を際立たせます。
画面全体を見直し、問題がある場合は、調整作業を行います。場合によっては、一段階戻り、背景を変更する必要が出るかもわかりません。ここで重要なことは、思いつきですぐ筆を入れるようなことはせず、遠く離して眺めたり、逆さにしたり、鏡に映したりして自分の作品であっても客観的に見るように試みることです。画面全体を見ながら気になる部分を減らすように作業を進め、まとまりが感じられたら筆を置き、完成とします。
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