完全対称 2SK135 MOS FET Power
No.126 1995/3
難産でありました。記事に書かれたのが95/3であり,出来上がったのがついこの前なのでもう7年も経っています。
95年と言えばWindows95が出た年でした。当り前ですネ。(~_~;)
最初はGOAのA級30Wのアンプを作ろうと考え○クニカル・○ンヨーでRコアのトランスとタカチのケースを購入
したんだったかなー記憶が無い。(-_-)
基板はこの1枚??????修理に7年もかかる?
七年も管理の悪い場所でほったらかして置くと写真では分かりにくいですが配線は錆びだらけになってしま
います。たぶん他のアンプもこんなことになってるのもあるでしょう。(-_-;)
この放熱器フラットタイプなのでキャンタイプを付けるときは,こんな方法しか有りません。
MOS-FETの構造
これがMOS-FETの構造です。ゲートと基板の間に絶縁膜があります。この膜が酸化金属で(メタル・オキサイド)
語源の由来のようです。 修理にかかる
ご覧のとおりタカチのケースは使っていますが,オリジナルとはかなり違います。おかげでシャーシの加工に苦労し
てしまいました。バックナンバーお持ちの方元記事#126と比較してみてください。部品配置はまったく違っています。
ただ,放り出していたのも理由があるわけで,一番大変なシャーシの加工なども済ませ,最後の基板の調整段階でう
まく行かなくなって,それを調べようと思っていた矢先に,転勤になりそのまま7年間放り出していました。(-_-;)
このとき以来,完対アンプは難しいと思い込み真空管以外は挑戦する意欲が沸かず,(真空管の方が難しい気もしますが)
このHPではTr式完対アンプは初めての登場となりました。
ま,このアンプ完成しないうちは,最近のUHC-MOS完対アンプを作ってもうまく行かないだろうと,何が何でもという
思いもあって今回登場したというわけです。
ちょうどその時に完全対称アンプの記事が出たので,予定を変更し初めてこの完全対称回路で組もうと思
い挑戦した物です。
このアンプに使うパワーTr2SK135はディスコンで今は入手不能です。コンプリならyahooオークションなんかで探せば
まだ望みがありますが,Nチャネルだけなんてのは絶望的です。日立の有名なパワーアンプHMA−9500に使われているためか
今でも探している方が多いようです。
アイドリング電流は500mAにしました。記事では1.37Aとしていますが,2SK135壊してしまえば
もう手に入れることはほぼ不可能です。もっともモールドタイプ2SK1056あたりを代替にできそうですが、
モールドは音が悪いとのこと。
しかし,元記事のシングルプッシュで30Wはちょっと厳しいような気がします。今まで使っていたNECの石ならシングル
プッシュA級で15W位だったので,かなり発熱しそうです。
配線はやり直す必要がりますが,今回無事音が出るかどうか保証がなかったので,そのままとし後で替えればいいでしょう。
なんて事を書いてますがどうなることやら?
パワーFETのゲート抵抗はバインデングポストをFETの近くに立ててそこへ付けています。発振止めはこんな感じで
FETの近くでないと効果がないように,教科書に書いてあったように思います。
考え込んだあげく5mm厚のアングルを放熱器に付けてこんな格好になりました。かなり四苦八苦したような
気がします。もう二度とやりたくありません。
格好はいいですが,熱はアングルを経て放熱器まで伝わるので,熱抵抗が高くなるのが欠点と思います。
500mAでもアングル部分はかなり熱くなります。記事のとおりの電流を流すには1cmぐらいはあったほ
うがいいようです。
ソースとドレインの間がチャネルと呼びここはP型半導体で,電圧をゲートに掛けていないときは電流が流れない
構造です。
ゲートにプラス電位を掛けるとチャネル部分にマイナスの電気(電子ってことですネ)が吸い寄せられ結果
ドレインとソースの間が同じマイナスになり電流が流れると言うことのようです。
なるほど,MOS−FETがなぜゲートにプラスの電位を掛けて使うのか分かりました。
こんなところでMOS−FETのお勉強をしても始まらないでしょ。なんて声が聞こえてきそうですが。
壊れた物を直すのに動作原理を知らずに手をつけるのは無謀と言うもの,この際お勉強してみました。
ま。回路図に載っている電圧を測って違っていれば壊れていそうなところを,手当たりしだい替えていく
のも手でしょうが,動作原理が分かればその電圧がどうしてそうなるのかも,推測できようと言うものです。
修理にかかる前に次のことは押さえておきましょう。
1.トランジスターの場合ベースとエミッタ-の間は0.6Vの電圧がかかっている。
2.トランジスターのベース・エミッター間とコレクター・ベース間はダイオードと同じ特性を示す。つまり
整流作用がある。
3.ツェナーダイオードは順方向で定格のツェナー電圧が発生する。
4.普通のダイオードは順方向で0.6Vの電圧が発生する。逆方向は無限大の抵抗値を示す。
5.MOS-FETはゲートとドレイン・ソース間は絶縁されているので,抵抗が無限大を示す。
6.MOS-FETはドレイン・ソース間の抵抗は高抵抗値を示す。(裸の状態で少し電流が流れるみたいです)
なおFETが壊れたときはドレイン・ソースの間は低抵抗値を示すみたいです。あくまで私が経験した限りですが。(^^ゞ
他にもあるかもしれませんが,こんなところでしょうか。
当初の金田氏の目論見どおりのオールFETにはなりませんし何よりも音質がどうなるか分かりません。しかし、最近
はTrとごちゃ混ぜの記事も出ているので良しとしましょう。また、1775は定評なのでそれほど悪くないでしょう(~_~;)。
気に入らなければ1400もいくらかあるので気が向いたら変えてみるのもいいかもしれません。
で,2N5465は壊れていたのか?と言うと壊れていませんでした。耐圧ぎりぎりで使っていて,不安を抱えたく
なかったのでそうしました。
さて本題に入る
基板だけにして出力段のK135を外し,まずは電圧増幅(出力の2SK135も増幅しているのでこの表現は×ですね)の
初段と2段目を調べてみました。回路はこんな感じ。
この回路に可変電圧の電源装置で電圧を0Vから徐々に上げていくと,20V位で各部の電圧が安定します。たぶん
ツェナーに既定の電圧がかかって安定するのでしょう。
出力Trバイアス用の1kオームをアースに繋いでその電圧変化を見てみます。まず,初段のVo調整用ボリュームを
回すとそれぞれ反対に動くはずですが,ムム?動かない片方だけ変化しました。次にアイドリング調整用ボリューム
を回すとそれぞれ同じように動くはずですが,片方だけしか動きません。
壊れているのだから当然ですけど,この状態だと電圧の変化のないほうが壊れているに間違いなさそうです。
で,各ポイントの電圧を測ってみました。
初段のドレイン抵抗には2mA流れているので2V位あるはずなのですが4V位ありました。片側は2Vちよっとなので
4Vの方がおかしいようです。次に初段定電流の電流を決めるエミッター抵抗1.2kの電圧降下は正常なので4mA流れ
ています。ドレイン抵抗の片方が4Vになるのはオームの法則に矛盾します????
次に2段目を測って見ました。2SK72のドレイン電圧を測ってみると左右で違うようです。しかも片方はゲート
電圧と同じ,さらに2SJ77のソースとドレイン電圧が同じ,ウーム?2SJ72と2SJ77両方壊れている
みたいです。回路から外して抵抗を測ってみるとJ72はドレイン・ソース間の抵抗がなし,J77はゲートが破壊
しているようです。
更に調べていくと初段のチェナーと2段目のチェナー電圧が4V位しかないのでここも壊れているようなので交換する
ことにしました。
原因は7年ぐらい前に放り出した物なのではっきり分かりませんが,調整中に電源を付け外ししたとき+−を間違えたのか,
サージが入ったのかいずれかでしょう。それにしてもツェナーまで壊れていたとは思いもよりませんでした。
2SJ72はディスコンなので入手不能です。ではもう諦めなければならないのかと言うとそうでもありません。
2SJ74を替わりに使うことができそうです。しかし,手元にはIdss10mA以上のものはランクJ74Vしか有り
ませんが,これしか無いのでしょうがありません。動作しなくて元々だし,音質もどうなるか分かりません,うまく
行けばもうけものとしましょう。
早々にTrほか取り替えて電圧を掛けてみました。うまく行きました,各ボリュームを回すと思いどおり動くので良しと
しましょう。
なお,アイドリング電流を500mAに設定するつもりなので,オリジナルから変更して2段目ソース抵抗を
150オームに変更しました。
電圧増幅段はこれでOK,後はパワーTrを繋ぐだけ,その前にすることがありました。パワーTrが使えるのか
調べていませんでした。テスターで調べてみるとゲート対ドレンおよびソース抵抗が無限大を示すので問題無さ
そうです。
パワー段をチェックするには、容量が2〜3アンペアある可変電源を繋いで電圧を徐々に上げ、異常が無いのを確認
するのが最善だと思いますが,200mA位のしかあいにく持っていませんし,今から作るわけには行きません。
ので,とりあえずこの200mAの電源を繋いで見ました。うまく電圧が出てVoも調整できるし,アイドリングも
200mAまでならスムーズに動きます。これでファイナル段も大丈夫だと思えます。
そのまま100Vを繋ぐのは怖いのでスライダックを繋いで徐々に電圧を上げていきます。電圧増幅段が20V
位になると,各部の電圧が正常になるので,そのまま100Vまで上げます。この段階はアイドリングとVo
を両方とも監視しながら行い,何かおかしいことが起きたらすぐに止めることのします。
が,何事も無く100Vまで上がってしまいました。
簡単に書きましたが,ここまで途中で気分を変えながら,慎重にやってきたので2週間ぐらいかかっています。
何しろ1回失敗しているもので。(~_~;)