SWAN 500

現役として復帰させる取り組みについて
古き良き60年代・・・USの「ものづくり」が世界をリードしていた頃の製品の一つです
これらUSの先輩を真似るところからスタートした日本の「ものづくり」
70年代以降、日本の「ものづくり」は先輩であるUSを追い越して世界制覇をしてしまいました

この時代に憧れを持ってUS製品を見ていた者にとっては、このデザインこそが無線機!

写真は、SWAN500 本体と、117-XC コンソール電源


メータとダイヤル表示の間に見えるものは、X−Lock動作表示の2色LED(後付したもの)
きわめてシンプルなフロントパネル


50mmスケールファンは、どこかのタイミングで後付けされたもの
元々写真のように外部スピーカー配線も電源配線と一体なのですが
S/N測定、スピーカーを換えて・・・等に便利なように別配線にしました
背面もご覧の通りシンプル! 調整VRは、ファイナル・バイアス調整と、Sメータ零点調整のみ

 手にした時点でざっと使用した感じですが、そこそこ実用に供しそうな状況に思えました

 現用化に向けて、手を入れたくなるところは、半世紀前の新製品に共通ではありますが
   1.VFOダイヤル・メカなどメカ部分の補修
   2.VFO安定度の改善
   3.受信音質の改善

 1.メカはメカで解決するしかありません
   本件は、ドライバと半田ゴテでなんとかなりましたが、場合によっては、大問題となるケースも!

 2.VFOの安定度について
   まず、現状のツェナー・ダイオードによる供給電源の安定化では不十分です
   実際、時々ではありますが、受信音が変に変調(周波数変調)されて聞こえることがあります
   これは、三端子レギュレータで安定化した電源を用意することで「解決」しました
     −10V供給です! オリジナルは、スタンバイ用バイアス電源と共通でした
   最終的な安定度の確保は、以前Atlas-210xで実績のある X-Lock の世話になる予定です

 3.受信音について
   当時の設計では、一般に過ぎたローカットが気になります
   本機はそうでもありませんでしたが、残留ノイズ(主にハム)が気になります
   プロダクト検波器への入力レベルも下げたい!(感度を上げるためか、過大入力が多い)
   今時の音質とは比較できませんが、通信という目的で聞けば、何ら問題なく聞くことが出来ます
   余分なことかもしれませんが、
   電源内蔵スピーカーの後ろにグラスウールを詰めました(ケースが変に共振するのを防ぐ目的)

VFOの構造
このSWANの構成を真似た、八重洲無線 FR−50/FV−50等とは一見して様子が異なります
非常に頑強に作ってあります(このバンド切替機構に耐えるだけの強度を確保! フロントパネルにも止めてあります/パネルにビスの頭が見えてまでも!)
余談ながら、写真左側がフロントパネル側になります
入手した本機では、2段で構成されているバーニア機構のVC側が少々くたびれていて、シャフトにガタが生じ、ポジションによっては、シャフトが空転するようなところがありました
今となっては、バーニア・メカもそうそう簡単に入手できないので(ちょっと特殊な構造のものが入っていたし!)、調整を試みることにしました
なんとか左写真の分解状態で、小型のマイナス・ドライバを使ってバーニア・メカの締め直しをすることが出来ました
この処置により、シャフトのガタは無くなり、シリコングリスを塗布して、この問題は「解決」としました
VFOメカ(バーニア機構)の整備のため、フロントパネルを外しました
この便に周波数表示盤なども含め清掃と、実用化に向けてこれから作って取り付けようとしているVFO安定化策 X−Lockの動作表示用2色LEDをパネルに取り付けることにしました
メーターとVFO表示窓との間のスペースにφ5の穴を開け、裏から2色LEDを差し込んで糊付けしました
500Cなら、このあたりの位置には、先客・・・RF出力のメーター感度調整VRが付いていますが、500ではラッキーなことに?スペースが空いています
全体的にコンパクトな作りです(上手く作ってあります!)
入手した時点で、小型クーリングファン(50mm角)が3個取り付けられていました(ここまでのオーナーのどなたかの努力、不要な隙間はきちんと塞いであります!)
1個に2個を並列接続したものを直列にして、規定の安定化させた12Vがかけてありました
ここは、6Vの三端子レギュレータの世話になって、3つのファンとも6Vで駆動するようにして折角の付いている「もの」を活かすことにしました
写真右上に見える後付の立ラグについている一式が、この電圧を得る関係の部分です
8Vもかけると、ファンの動作音が気になるようになります
余談ですが、たばこの煙が流れる程度の空気の動きであっても、クーリング効果は「大」です
また、12V管が入手しづらいせいでしょう、一部真空管が3V管や6V管に交換してありましたが、ヒーターラインからのノイズ問題などあって、オリジナルの12V管に戻しました(現時点で12BZ6が入手できず、受信RF段は12BA6で代用です)
ツートーン波形です(14.2MHz 100W時)
調整後、キャリア送信で最大
  3.5MHz帯〜21MHz帯
     200W以上
  28MHz帯
     160W程度
の出力です(終端電力計にて)
RF同調コイルの調整で気づくこと、全然クリティカルさがありません(全てのコイルにQダンプ抵抗がパラに接続)
ちょっと不安になって、スペアナで見てみました(14.2MHz ツートーン100W時)
マーカーがあるところが2倍の高調波です
まずまずでしょうか(−45db程度)
この結果から、送信 13.0MHz トラップ調整は必須そう!
受信側では、13.0MHzと5.17MHz各 トラップ調整の効果は確認済みです(すっぽ抜けが、大幅に低減されます)
 プロダクト検波器の動作・・・IF信号のオーバー入力は分かっているのですが、ここでレベルを絞ればAGC電圧出力も低下(オーディオ・ハング型AGC)・・・痛し痒しです
 どこかで折り合いを付けるしかありません(10PのトリマCを直列に入れて、カットアンドトライ)
 AFの残留ノイズ(主にハム)も気になります
 275Vの定電圧出力をかけてみたり、ヒーターを直流点火するなども試しましたが、あまり実用的とは言えません
 オーディオ段で、帰還をかけ、カソードコンデンサの容量を追加し、ハイカットとローブーストを組み合わせ、ほぼ満足できるところまできました(通常のQSOには気にならない程度の満足!)
 最終的なVFOのドリフト対策を行えば、ラグチュウにも耐える実用マシンになりそうです

ドリフト対策の切り札/X−Lockの組み込み
X−Lockの効能について
予想通り、本機のVFOのほうが堅牢で、先に取り組んだAtlasに比べ、電源投入直後のドリフトが少なく、すぐに安定化動作がスタートします(元の性能が良いと「楽」!)
X−Lockと言えども大幅な周波数変動には対処が出来ません
VFOユニット
LC部はシャーシ上シールドボックス内に、その下にVFO基板があります(こちらは露出!)
写真中央は、このVFO基板です
基板左側に−10Vの三端子レギュレータが見えます
基板上にLC部との接続点があり、ここにバリキャップ(実際にキットに付いていたのは整流用ダイオード!)など小型の4P立ラグを使って後付けしています(基板右側)
X−Lock基板は、VFO−BOXの上に両面テープででも貼り付けようかと思っています(スペーサを立てる高さに余裕がない!)
写真は動作テスト時のもので、基板下には絶縁目的で養生テープを貼っています
2色LEDは、Lock状態の緑点灯中です(LEDの点灯がわかりやすいように、ダイヤル照明ランプを消灯して撮影)
RF(VFO信号)入力は、VFO出力(真空管バッファの手前)をそのまま取り出すことでOKでした
こと、このX−Lock組み込みについては、本機ではとても簡単に済ませることが出来ました(DC12Vも、リレー用のところから簡単に得ることが出来ました)

このあたりで、本件は一段落させようと思います(そうでないと、きりがなく、泥沼に足を入れた状態に陥りそう!)
と言いながら・・・
3.5〜14MHz帯の送受と、受信だけなら全く問題ないのですが、21/28Mhz帯で送信するとパワーに応じてX−Lock動作表示LEDが、緑の点灯から赤の点灯に
この状態で、送信状態をモニタしてみても、送信時にドリフトしている風はありません
送信出力の回り込みを疑って、裸にしている状態から、上下のケースをきちんと取り付けたら21MHz帯に関しては症状が消えましたが、28MHz帯については、症状は変わりません
念のため、Atlasで実績のあるバッファアンプを追加してみましたが、変化がありません
Atlasとは異なり、LED表示にのみ影響しているように・・・

あと一点、とても気になること
同調ハムよろしく、IFTの最大感度を取ると、ブーンと言うノイズが気になります
感度そのものは、それなりに取れているのですが、このノイズのせいでS/Nの測定値は良くありません(聴感上のS/Nも良くありません)
実際に運用しても、信号が弱いと気になります
パスコンの効力を願って(疑って?)チェックを開始すると、意外なことに気づきました
ヒーターのパスコン  付ける位置(17本の球のヒーター供給ピン)によってこのノイズが変化
カソードのパスコン  特にIF初段アンプ カソード・パスコンのアース位置によってこのノイズが大きく変化
パスコン(0.01μF)とアース・ポジションをキーワードに、もう少し追いかけることにしました
鉄シャーシの年代物のせいか、それともオーディオ・アンプの世界が高周波の世界でも・・・か
まだまだ奥は深いようです

欲が出て、なかなか一段落とはいきません!?

後日談(オシマイ宣言)
X−LockのRF(送信電波)回り込み
  私のお粗末!  高さの制限で、きちんとケースに取り付けていない/両面テープ止めでした
  基板のグランドをシャーシに直接落とすことで解決しました(裸の運用でも、問題は生じません)
受信ノイズ
  デカップリグコンデンサ、あるいはパスコンを追加するなどして、細かく積み上げた結果、名実ともに
  0.5μV入力でS/N10db以上を確保できました(〜21MHz帯)
  ただRF入力が送信のπマッチの兼用で、受信最大感度が得られるところと、送信最高出力が得られる
  ところが異なります
  これは仕方ないこととして、今回の SWAN500 の取り組みはオシマイにします
後日談U
SWAN500CXの回路図を見ていて、気づいたことが・・・
ちょっとパクって実験してみました
予測通りゲインが向上し、14MHz帯でS/Nが3db程度改善、そのうえπマッチの送信出力最大点と受信感度最高点がほぼ一致するようになり、これはオドロキです
本気で、再調整をしてみようという気になりました!
3.5MHzは、コアを他に流用!したため手を付けていませんが、
 全て送信の最大に合わせて、受信でS/N10dbを得るのに必要なアンテナ入力電圧は、
    7.1MHz   0.29μV 
   14.2MHz   0.38μV 
   21.25MHz  0.4μV  
   28.5MHz   1.0μV  
  と、なかなかの好結果です(管球式ですから、28MHz帯については、頑張ってもこんなものかと)

最後は、ロードバリコンを分解/再組立する羽目に
どこか動作が不安定・・・・チェックすると全体にガタがきていて、ある位置でシャフトを動かすと(こじたりすると)、ローターがステータにショートしている様子
ガタ修正では解決せず、結局バリコンそのものをファイナルユニットから取り外して、ステータ部を固定しているスタンドに半田付け直し(取付位置の修正)を行うことに(位置決めは、結構な手間)
時間はかかりましたが、作った人に出来ることは自分にも出来る?式の理屈というか取り組みで、何とかなりました!(やれば出来る!)
正確には、ガタの修正をして、それに合わせてステータ部の位置を決めてバリコンを組み立て直した、です
部品まで直しのある本格的なリニューアルになってしまいましたが、仕上がった状況はなかなかのものとなりました(電気的性能は、間違いなく新品時の能力以上のものに!)

後日談V
探していた 12BZ6 が入手できましたので代品であった 12BA6 と交換
再度、RF段の調整を試みました
その結果です
 全て送信の最大に合わせて、受信でS/N10dbを得るのに必要なアンテナ入力電圧は、
    7.1MHz   0.15μV 
   14.2MHz   0.3μV 
   21.25MHz  0.25μV  
   28.5MHz   0.25μV  
  と、思わず目を疑うような・・・結果です
使い勝手も簡単なので、つい気に入って?このマシンでON−AIRする機会が増えています(少ない機会の中で!)
そうそうコアを他に流用した3.5MHz帯への対応ですが、古いTOKO製のコイルを見つけ、一回り小さいコアだったのですが、輪ゴムを挟んで一緒に締めこむことでOKとしました
SSGはかけませんでしたが、送信出力200Wの確認はしました
また実用に供する無線機が増えてしまいました
そうでなくても、あまりON−AIRすることがないのに・・・
どこぞのPC台数と同じ・・・関わる人員の何倍もの台数を使っていますが、その状況に近い世界がここにも!?
2014.06   JA4FUQ

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