展覧会案内・感想

2009年06月06日

 朝鮮王朝の絵画と日本
朝鮮王朝の絵画と日本 チラシ表

朝鮮王朝の絵画と日本 チラシ表
岡山県立美術館で「朝鮮王朝の絵画と日本」が開かれています。平成21年6月5日(金)〜7月12日(日)休館日/月曜

昨年より噂を聞いていた展覧会。個人的にも心待ちにしていました。初日の今日(5日)開館とともに早速見に行って来ました。感想の冒頭ですが、言いましょう。噂に違わず必見の展覧会です!。是非ともと、お勧めします。

昨年の11月だったと思います。ふらりと立ち寄った書店で表紙の朝鮮民画の虎が目にとまり、手に取った別冊太陽「韓国・朝鮮の絵画」。どんな内容かとパラパラとページをめくると何処かで見たような絵画が偶然目にとまりました。大倉集古館蔵の群禽図です。この絵が東京国立博物館蔵の呂紀の作品群の中にあったような気がしたのです。この他、どこか懐かしい、知っている、目にした事があるような絵が次々に飛び込んできます。

「えッ!朝鮮の絵画を(私は)こんなに知っていたっけ?。」

民画の虎をもともと好きだったことは確かです。昔々「虎の美術」という趙子庸著の画集を古本屋で手に入れて以来の興味ですが、その他、虎の図では、「えッ?若冲」、犬の図では、「えッ?宗達」、葡萄図、草虫図など、見知った絵そのものを使って、朝鮮の絵画との関連が紹介されていたのです。

朝鮮の絵画と言うと、なんとなく他のジャンルのものも含めてこの民画のみをイメージしてしまい、それ以外をいかに知らなかったか、この国の絵画が大きく影響を受けていたかに気づかされたのです。

この時、この本はもちろん購入し、巻末・展覧会紹介での
「宗達、大雅、若冲も学んだ隣国の美」というキャッチ、この岡山でも展覧会が開かれるという告知にワクワクとしたのです。



さて、心待ちにした実際の展覧会は、本以上!はたして、大変なボリュームで目の前に登場しました。関係者に聞けば、毎週のように展示替えされるとか。作品数の多さに嬉しい悲鳴だそうです。

この国の絵画、価値観に中国のそれが及ぼした影響は言うに及びませんが、今ひとつ、私自身はその表現の間にある大きな違いを感じていたように思います。今回、朝鮮王朝の様々な絵画をこうして見る機会を得る事で、より近しい存在を確認する事が出来たように思うのです。平明さ、柔らかさ、自然へのまなざし。花鳥画と呼ばれる存在の根底となるもの、自然との関係、捉え方も、大きな影響を受けているように思うのです。

資料性の高い立派なカタログも作られています。今日見る事が出来なかった(展示替え予定)見たい作品がたくさん紹介されていました。

虎、猫、犬などに見られる表現はそのまま現代に持ち込んでも十分な強さを持っているように思います。いえ、今だからこそ、よりこの面白さを受け止められるのかもわかりません。また、花鳥、草虫、一般に花鳥画と呼ぶ世界も一度この地点に戻って見返す事で、かって若冲が生き生きと描き出した何かをまた見つけられるかもわからないと思うのです。

開会式、展覧会の準備に尽力された韓国の関係者がはからずも話されたこと。「いろいろな外からの文化、事、物を柔軟に受け入れることで発展し、素晴らしい成果を得て来たこの日本、そして日本の絵画。(これまで、ともすると中国の影響のみ語られることが多かったけれど、)日本絵画史で大きく評価される宗達、大雅、若冲の名前を出して朝鮮からの影響を正当に評価しようとするこの展覧会の意味は大きい。(要約)」この言葉が全て。影響を受けた原点と向き合う事で、また大きな成果に結びつけることが出来るような気がします。

純粋に絵画を見て楽しむことに加え、私も含め絵を勉強している者には、墨の使いこなし、線、絵の具の付け方など、制作の参考に出来る事も多い展覧会です。また、紹介しきれなかった仏画についても、素晴らしい作品が並んでいます。この岡山にも凄い作品があることに驚かされました。また、芹沢_介らの工芸、民芸運動の流れも紹介されています。必見です!!。




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