展覧会案内・感想

2009年09月28日

 美人画 描かれた女たち・魅惑の女性美(16日追記)
美人画 展リーフレット表

美人画 展リーフレット表
岡山県井原市の華鴒大塚美術館で特別企画「美人画ー描かれた女たち・魅惑の女性美」が開かれます
平成21年10月10日(土)〜11月23日(月)
休館日:10月13・19・26日:11月9・16日(11月2日は開館)

美人画にテーマを絞った展覧会です。上村松園、鏑木清方といった名手と呼ばれる方々の作品や、ここ岡山出身の画家大林千萬樹の作品も展示されるそうです。
ちょうど昨年の今頃、新見美術館で開かれた伊東深水展では、本画に加えてその下図が展示されており、美人画制作における綿密な下図(下図の段階で落款の具体的位地まで計画されている)の存在にふれる事が出来ました。
さて、今回はどのような発見に出会えるか?

現在、このまとめ中の川合玉堂の著わした「日本画實習法」。人物画制作の紹介では色の塗り方、調合までが書かれており、時代を同じくする出品作の表現にその具体例を見るチャンスになりそうです。


※10月16日追記:本日展覧会を拝見して来ました。
「同じ事をすれば違いが見えてくる。」ということを強く感じた展覧会でした。作家として同じモチーフや材料、描く技術といった共通のテーマを制作に持ち込むことで、そのテーマが具体的であればあるほど、描いた人間の違い、描かれた時代の違いと言ったものが現るということなのです。真似しようとしてそれが出来ない何かを発見することもあります。またこうして開かれる展覧会のテーマが「美人画」というように絞り込まれた場合には、描かれた時代背景、作家を取り巻く環境の違い、暮らしぶり、作家が暮らした地域(関西:関東)の違いといったことまで浮き彫りにしてくれるように思います。

以前、岡山県立美術館で見たおり気になった大林千萬樹作、「紅粧」、この他、今回はこの作家の作品をまとめてみられるチャンスにもなっています。時の過ぎるままに忘れさられて行く様々、こうした検証、発見、紹介に出会うとき、作品のみの感想とはまた違った何かを感じます。

御舟が「京の舞妓」を描いたのが大正9年、もしこの会場に一緒に並べられたら、さて、どのように見えるでしょうか。そんなことをふと思いました。

さて、美人画というカテゴリ、単に人物画の一部とくくれない何かがあるように思います。個人を特定出来る肖像画のような作品も中には有るでしょうが、多くは描かれた人物以上に装う着物へ注がれたただならぬエネルギー、表現が目にとまります。

今展の見所の一つは、ずばりそれぞれ描かれた着物の表現です。描き方、使われた絵具の美しさです。逆説的な話ですが、近代に入り、個人がことさら強調され、作家自身絵画との向き合い方も変わらざるおえない状況下で、日本画ならではの技術、美しい絵具をこれほど有効に使うことができる場所は、絵(日本画)の中にここで見られる「着物」以外にもはや見つけにくい時代となっていたのかもわかりません。


手や顔を現す線描、肌の表現の違い。
単に絵の具とかたずけられない何かをもった「朱」の輝き、「黒」の厚み。

多くは、大正時代に描かれた作品です。
是非見る事をお勧めする展覧会です。

※高梁市成羽美術館で始まった「近代日本美術の精華」展(〜11月29日まで)も2階会場の一室には鏑木清方、伊藤小波、上村松園の美人画が並びます。双方見比べてみるのもまた一興です。二つの美術館とも国道313号線沿線ということでも不思議な縁です。