展覧会案内・感想

2013年12月24日

 文化財を甦らせる結晶学 ―紅白梅図屏風の300年前の姿を復元する
世界結晶年(IYCr2014)記念講演会ポスター 

世界結晶年(IYCr2014)記念講演会ポスター 
2014年2月16日(日)会場 MOA美術館 能楽堂
主催  世界結晶年日本委員会 共催 日本結晶学会、日本分析学会 後援  MOA美術館

 尾形光琳作、国宝 紅白梅図屏風の謎に迫るNHKの番組、このおりご縁をいただいた東京理科大学の中井 泉先生のお誘いで、今回の講演会に私も参加させていただくこととなりました。

 番組では、中井先生の科学調査により、紅白梅図屏風の背景は金箔であり、また黒い流水は全体に銀箔が用いられ、その表面から硫黄を検出、そして黒く見える部分については、硫化銀であることが確認されました。その調査結果を受けて、私が再現制作を担当させていただいたのです。それまで実験していた私の手法もあながち間違いではないということ(私の作業全てが正しいという気は毛頭ありません・なんといっても300年前の話なのですから)が材料、化学反応的に裏付けられたということでもありました。

 中井先生がこの時、紅白梅図屏風の調査に用いた手法こそが、この結晶学を用いたものであったとのこと。

 以下は、今回の講演会開催に際しての企画文章から

<結晶学は、一般の方々には耳慣れない学問ですが、この分野の研究に23個ものノーベル賞が授与されていることが示すように、現代文明をささえる重要な学問分野です。国際結晶学連合(IUCr)は、世界結晶年の制定に向けて国際連合教育科学文化機関(UNESCO)に働きかけを行ってきたところ、2012年6月に開催された国際連合総会は近代結晶学の誕生100年を記念して、2014年を「世界結晶年」(International Year of Crystallography:IYCr2014)とすることを決めました。 そして、日本学術会議は世界結晶年を我が国において推進するため、「世界結晶年日本委員会」を発足させ、現代生活における“結晶”の重要性を知ってもらうこと共に、日本における結晶学の先駆的・歴史的活動の紹介をおこなう企画を実行することとなりました。このような背景のもと、この趣旨に沿った諸事業を「世界結晶年」の旗の下に推進しています。その一環として、文化財科学の分野で、結晶学がどのように役立つかを一般市民の皆様に知っていただくことを目的として、MOA美術館様の全面的ご協力を得て、本講演会が開催されます。本企画は世界結晶年(IYCr)の公式ウエブサイトにも登録されています。>


 科学は、もちろん私の専門ではありません。しかしアートがずっと科学と密接な関係をもって発展してきたことも事実なのです。いろいろな謎、知りたいと思う人間のこころ。300年前、尾形光琳が描いた紅白梅図屏風、中井先生の調査研究で明らかにされた 銀箔を硫黄と反応させ、硫化銀とすることで表現する技法、その再現制作を行う過程で私が絵描きとして光琳から何を学ばせてもらったのか、そして発見したのか、そんなお話が出来たらと思っています。

※ポスターのキャプション部分(画像下の文字)をクリックすると大きく表示できます。講演会プログラムなども読むことが出来ます。

※講演会ですので、開催は2014年2月16日(日曜日)当日のみです。また、私が再現制作した屏風もこの日一日だけですが、能楽堂に展示してくださる予定です。