展覧会案内・感想

2015年02月14日

 生誕150年記念 竹内栖鳳展
竹内栖鳳展 小型ちらし表

竹内栖鳳展 小型ちらし表
 兵庫県の姫路市立美術館で<生誕150年記念 竹内栖鳳展>が行われています。2015年2月7日(土)〜3月29日(日)まで。開館時間 10:00〜17:00 入館は閉館30分前まで 休館日 月曜日 <<広島県・海の見える杜美術館での開催につづいての展覧です(今後、愛知県・碧南市藤井達吉現代美術館、栃木県・小杉放菴記念日光美術館で開催予定です)。

 月に一度の姫路通い、昨年より姫路市立生涯学習大学校で日本画の講座を担当しています。授業では、基本的な素材の扱い、古典的な描法を伝えることを一番の目的としていますが、同時にこの学習の過程で、美術館などでの鑑賞において、それぞれが学びのために有用な具体的な見方、視点も得られるようにと技術と表現を結ぶ理解に繋がる配慮をしながら進めています。

 これまでの岡山や、倉敷、それぞれの美術館でのワークショップや講座を担当させていただき、上記のようなことをより意識して行うようになりました。決して自由な見方を否定しているわけではありません。何を学ぶかについて、その折々「評価」を行う視点を明らかにすることの大切さを思うからです。

 せっかく県外(岡山より外)に出て継続的に行う姫路での講座です。何かしらご当地ならではの学びが設定できたらと思っておりました所、姫路市立美術館のありがたい協力によって酒井抱一作品の模写を授業に取り入れることが出来ました。生徒それぞれが実物を間近に見る機会も作ることが出来たのです。

 模写と言ってももちろん文化財保存を目的とするような厳密なものではありません。この国の絵画を学ぶ過程で、先人画法の理解の助けと出来るような、いわゆる粉本として用いさせていただいているのです。授業資料、マニュアルも作りました。これらを姫路の方だけにではなく、岡山で私が関わる学ぶ方々にも使わせていただく事ができないかと相談した所、快諾いただき、岡山で日本画を学んでいる方々も同じことを行う事になりました。ただし県外でもあり本物をおいそれとは拝見させてはもらえません。また距離もあります。


 日本画の大スター!竹内栖鳳の展覧会、2013年に大規模な展覧会が東京と京都でありました。私も京都に出かけたのですが、聞けば今回のものは、そのおりとは違う作品が並ぶ展覧会とか、この展覧会見学を機会に皆で姫路市立美術館に伺い、岡山で学ぶ方々にも本物を拝見させていただく機会を設けていただくことが出来ました。姫路で学ぶ方々もご一緒しての約50名の大所帯となった展覧会見学+のイベント(2月12日に実施しました)です。

 酒井抱一作品の模写、水墨の作品でしたが、得られた墨への理解、用筆、水の用い方を具体的見方として参加者は「竹内栖鳳展」を見て廻りました。運筆、絵の具の素材について、具体的な「片暈し」といった言葉をポイントにおいてじっくりと見て回っていました。会場で出される質問も適格で的を得たものになったと感心することが多くあり、私自身の新たな気付きにつながるものもありました。

 展覧会図録では、絵の全体像とともに拡大された部分図も多く挿入されており、「筆使い」をより実感出来る構成となっています。こちらも鑑賞の視点を企画者側でより明らかにしようとする試みかもわかりません。我が意を得たり・?私自身もこの「毛筆という道具」、またその「用法」、「運筆、筆意」といった言葉が指し示すあたりに「日本画」という言葉に今日的な意味、理解をする重要な手がかりを見つけられるのではと、今まさに思っているところでもあり、実物を頻繁に、そして間近には見ることが出来ない身にとって、大変有用な資料となりました。ただ見るだけではなく、実際に素材に触り、自分で同じことを描いて行おうと試みることで感じられるようになること。こうした美術館での鑑賞に具体的なリアリティーを見つけるおりの大切な手がかりとなるように思います。

 展覧会図録巻頭にあります高階秀爾さんの「栖鳳芸術における西欧と日本」という文章中に欧州旅行を経ての栖鳳の言葉の引用がありました。

※展覧会図録より引用<<その「独特の筆ゆき」でもって「感覚趣味」を進めていくことを是非ともやらなければならない>>

 その後の栖鳳の試み、取り組みをまさに現した言葉のように思います。

 生徒さんたちへは鑑賞前、毛筆という道具がまさに「身体、そして心とともにある存在」ということを意識してもらう、模写体験を元にした説明をしましたが、はたしてどのように見え、体が感じることが出来たでしょうか・・。


 このサイトでのこの展覧会紹介ページの数々、一緒に日本画を学んだり、関わる方々、興味を持っていただいている方々への何かしらのお役にたてばとWebにアップしています。今回はちょっと変わった紹介になりました。模写のこと他、技法材料の記事であらためて紹介したいと思っています。

 姫路での竹内栖鳳展 個人的に注目する毛筆、筆の動き大変楽しむことが出来た展覧会でした。オススメです。