展覧会案内・感想

2016年11月07日

 近代花鳥画の巨匠 榊原紫峰展
近代花鳥画の巨匠 榊原紫峰展 チラシ表

近代花鳥画の巨匠 榊原紫峰展 チラシ表
 笠岡市立竹喬美術館で 近代花鳥画の巨匠 榊原紫峰展 が開催されています。2016年10月29日(土)〜12月4日(日)開館時間 9:30〜17:00 入館は16時30分まで 休館日:毎週月曜日 11月20日は竹喬誕生祭で入館無料

 ずっと前(30年以上前?)、京都で開催されていた榊原紫峰展を見た記憶があります。土田麦僊や村上華岳、入江波光、そして小野竹喬らと共に京都市立絵画専門学校(絵専)を卒業し、のちに国画創作協会を創立する重要なメンバーの一人、今風の言葉で作風を評するならキレッキレッな筆の人でしょうか・・・。

 国展出品作が会場に並んでいます。

 昔、京都で見たときとは違った何かを感じます。私自身が歳を重ね、いくらか日本画について考えたりまた試して来たことと関係があるのでしょう。紫峰の暮らした時代背景、現在の社会とは違うのは当たり前ですが、「国画」と呼ぶそれこそが、今の「日本画」という言葉に意味を与えるところだったのかもわかりません。

 自然との関係の結び方、綿密な写生。表現において個性的な友たちからの刺激。

 どのように描くのか? 技術的な課題よりも、悩みは自分自身の在処を問うこと。


 展示室Aに展示されている卒業制作では、中国絵画、古典的な線描に加え、墨による調子を加えた下塗りを試みている様子、また当時この国に紹介されていた洋画に見られるタッチといってよいような筆使いも見られる作品もあり、紫峰の絵画様式に関する研究の様子が垣間見られます。また観察の妙、描写の腕!葱坊主の描写、アゲハ蝶の羽の表現。
 展示室Cは圧巻。鷺の頭部、くちばし、目を描く緊張感をもった筆使い。猫、ヤギ、鷹にライオン、それぞれの描き分け。「雪中藪群酉図」の本紙の地の残し方、竹の葉の墨による堀塗り。大きな暈し、柔らかな質感表現。
 展示室Dでは、小品なれど墨を使った作品のきりりとした様子が目に止まります。

 筆先に込められた神経。さも高らかに「ここまで描いていいいんだ!」と声を上げているようにも見えます。

 中国絵画と異なる墨の使い方、紫峰の思う「国画」の在り方。古典的な材料の使い方、用法、そして技法の冴え。晩年は墨を使った小品を中心に描かれていたようですが、その筆の運びの中に「日本」を感じていたような気がします。

 なかなかこれだけまとめて見る機会は無い展覧会。「日本画」の可能性、特徴についてをもう一度考える場、オススメの展覧会です。

11月6日 展覧会付帯「水墨画で花鳥を描く」ワークショップ開催記録
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2016/110701/index.html