展覧会案内・感想

2018年01月07日

 岡本神草の時代展 笠岡市立竹喬美術館
岡本神草の時代展 フライヤー表

岡本神草の時代展 フライヤー表
 笠岡市立竹喬美術館で 岡本神草の時代展 が開催されています。2018年1月4日(木)〜2月12日(月)開館時間 9:30〜17:00 入館は16時30分まで 休館日:毎週月曜日(※ただし1月8日、2月12日(月・祝)開館・1月9日閉館)

 昨年暮れに京都国立近代美術館で行われた展覧会の巡回展です。会場が違えば作品の見え方も違います。同じ展覧会だからこそ美術館スタッフの腕の見せ所、京都とこの笠岡の地でどのように違って見えるかも見どころの一つかもわかりません。

 個人的に岡本神草らが活動した大正時代から昭和初期の日本画についてはとても興味深く見てきたように思います。事実、私自身が「日本画」を探すおりの一番の手がかりとなったのはこの時代の一群の作品でした。

 画塾やその徒弟制度の中で伝承されてきた伝統的な手業の世界を保持しつつも、その場所から飛び出そうという個人の思いのせめぎあい、チャレンジが見て取れるからです。平安時代や江戸時代の絵画に感じる遠さとは違う、身近な感覚の存在が感情移入を促し、初期の好奇心を刺激してくれました。

 彼らにあって私に無いのは何か?

 <画塾やその徒弟制度の中で伝承されてきた伝統的な手業の世界>でした。
惹かれる何かを実際に試して描く中で出会ったそれぞれ。材料との関係、道具の使い方、そして<そのように使う>ことで見えてきた古より連綿と大切されてきた「何か」の存在。

 個性というものが個人的な存在であるならば、はたして「伝統」と呼ばれる存在はどのような形で現れるのか、もしくは長い年月、個人を越えて繋ぎ伝え続けることが出来るのか。もちろん「花鳥風月」を愛でるといったある種の美意識、内容についてを否定するわけではありませんが、日本画の定義と出来るような学べば誰にでも出来る具体な伝承とするなら、<画塾やその徒弟制度の中で伝承されてきた伝統的な手業の世界>に注目する意味もあるように思うのです。
 技術的なこと、素材との関係の作り方が当たり前すぎると軽んじられてきたから故の、それらの存続において危機的な状況の今を思うのです。

 制作についての工程が書かれたメモが展示されています。神草のそれが意味するところ、骨描きに続く、墨隈の作業ボリューム。線と色の関係、装飾的な表現に加えられた心の動き。この墨による隈取がポイントのように思います。油絵が登場した頃のグリザイユ。本紙に鉛筆によるラフな柄の下書き、下塗りなどを加えつつそれを墨線描き。着物を描くおりの下塗りと上塗り、堀塗りの有効な使い方など。

 展示される同時代の作家たちの作品も見どころの一つ。

 絵肌を間近に感じられる展示。じっくり楽しめました。前後期、展示替えもあるそうです。制作の途中が垣間見える展示もポイントです。日本画・人物表現の展覧会としても見ることができそうです。

 凝った展覧会図録も作られています。オススメの展覧会です。