展覧会案内・感想

2019年05月01日

 106歳を生きる 篠田桃紅 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち
106歳を生きる 篠田桃紅 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち 展チラシ表

106歳を生きる 篠田桃紅 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち 展チラシ表
高梁市成羽美術館で 「106歳を生きる 篠田桃紅 とどめ得ぬもの 墨のいろ 心のかたち」が開かれています。2019年4月13日(土)〜6月30日(日)開館時間 9:30〜17:00 入館は16時30分まで休館日 毎週月曜日(但し5月6日開館・5月7日休館)

 雨のためかこの季節にしては少し冷え込んだ平成最後の日。道すがら、輝く新緑、八重桜、川面に映る山の緑を楽しみつつ成羽美術館へ向かいました。お目当ては、篠田桃紅展です。ゴールデンウイーク中ということもあって、駐車場が満杯で入れないかもという私の危惧をよそにすんなりと停めることができました。聞くところによれば、日々盛況、大勢が訪れているそうで、今日は珍しく人の入りが少ないとのこと、ゆっくり見たい私にとっては嬉しい限り^^;でした。(訪れたのは4月30日、美術館はよくあるように月曜当日が祝日の場合は開館、翌日休館と思いこの日を避けた方々が多かったのかも・・・)

 安藤忠雄設計により山間の川沿いに建つ成羽美術館。特徴的な打ち放しコンクリートの外観、幾何学的な造形。ともすると自然の風景に対立をもたらすかもと思われるこの姿が、不思議な均衡とともに存在感を放っていると感じるのは、このコンクリートの色合いが大きく関係し、また周辺の姿を映し出し(建築と)一体として取り込む水面の存在、仕掛けもあるようです。

 何故、今回は建築の話から始まったのかと言えば、この美術館デザインで試みていることと展示されている篠田桃紅作品の間に何らかの関連性を感じずにいられなかったからなのです。

 伝統とは何なのか?意図せずとも抜き難く身体に染み付いたなにかしらに支えられて自然と姿をあらわすものという言葉が浮かびました。敢えて伝えよう、守ろうといった試みはいつの時代もあるにしろ、結局血肉に至らないそれでは生硬さばかり目立って普遍への共感とはなかなかならないように思います(自戒も込めて・・・)。

 展示の流れにそって試みを見ていくと、素の状態から西洋との出会いを経て、自分自身の内なるものとの対話が、我が身の中に抜き難くあった素材、毛筆という道具との関係を手がかりとして研ぎ澄まされていくのを見るように思いました。私自身、若い時、経験を積む前に見た折では気づけなかった多くの存在を意識しつつ確認できたように思います。筆というやわらかいもの、連綿と使われてきた墨、日本の画材、その扱い、美意識。箔、金泥、銀泥、朱。

 ここのところ私が人によく言う言葉に「歳をとったら良いことがある」がありますが、連綿と変わらぬ材料と道具、そして身体の関係の中にそれをかねてより見出してきた先人たちの素晴らしさをあらためて思います。
 
 今展付帯のワークショップ、6月9日13:30〜「”わたし”と出会う」を行います。篠田桃紅さんの「言葉」をキーワードにしながら「出会いの見つけ方」、先人のそれぞれを紹介、体験していただけたらと準備中(作品をじっくり見ながら学芸員の方と打ち合わせしてきました^^)です。
  ※要申し込み・問い合わせは成羽美術館。

 自然の中にある成羽美術館。安藤忠雄建築に篠田桃紅作品、おすすめです。