展覧会案内・感想

2021年10月22日

 近代日本画の諸相 蓬蒿コレクションより
近代日本画の諸相 蓬蒿コレクションより チラシ表

近代日本画の諸相 蓬蒿コレクションより チラシ表
 井原市にある華鴒大塚美術館で「近代日本画の諸相 蓬蒿コレクションより」が開かれています。2021年10月9日(土)〜11月23日(日)開館時間9時〜午後5時 ただし入館は4時30分まで

 昔々、学芸員さんについて私が思っていたイメージは、大学時代の博物館実習のおりに出会った方々、作業の様子からでした。もちろん展覧会カタログ、美術史などの書籍、美術雑誌などに書かれている文章によるものもありました。

 作品を買う人ではなく見る人。美術品は高価であり、お金持ちが買う人で、学芸員さんは見て調べて研究する人、購入する場合は、公立の美術館だと税金で、もしくは私立などではスポンサーのお金を使ってと思っていたのです。間違いでは無いにしろ、極一面しか見ていなかったことにその後気づくのですが、「人のお金で勝手なことを書いたり、言ったりする人」といったイメージも持っていました。
 そもそも美術品がどのように売買されてきたのか、またそれらを作る、作ってきた製造者たる画家や彫刻家たちがどのようにして生活してきたのか。昔の王侯貴族、お殿様といった権力者、そして富裕な方々が集めた衝動、またコレクターと呼ばれる方々の身銭?を切る感覚といったものは?そんなことを考える中で、どこか距離のある方々と思っていたのです。

 いつしか学芸員の方々が身銭を切って作品を購入していることを知りました。自分の好みに応じて、また研究資料として。関わり収集、コレクターの一面を見せる姿に触れるようになったのです。一方、昔々の美術研究家、趣味人の方々は、そもそも経済的に豊かな家庭に生まれ、育つ過程で目にする物の善し悪し、それらを知る環境も良かったというのは知る人ぞ知る話だそうで、その後の大学を中心とした職業社会では、絵描きもそうであるように研究者の背景も多様になったのかもしれません。

 さて、今回の「蓬蒿コレクション」、私もよく存じ上げた研究者の所蔵品です。名付けた「蓬蒿」は、李白の言葉に由来するということを教えていただきました。

 私自身が絵を描くことを続ける中で、美術について考えるベースとなった倉敷の大原美術館、そして日本画について考え、取り組む上で、東京中心とは違ったもう一つの選択肢、出会いをくれた竹喬美術館、岡山、故郷のありがたさを思います。

というわけで、今回はワークショップではなく、実際の絵を見ながら、それぞれお話したいと思います。

★鑑賞講座★
絵画技法から読み解く日本画の近代
講師:日本画家 倉敷芸術科学大学教授 森山知己
10月30日(土)13:30〜15:00

華鴒大塚美術館 展示室
「今の日本画は、洋画みたいだ」なんて言葉を聞いたのも今は昔となりました。
現代アートという言葉が社会の中で次第に大きくなり、すでに洋画も日本画も古典絵画の仲間入りをしそうな勢いの今日このごろです。
明治以後、声高に叫ばれた日本画の革新とはいったい何だったのでしょうか。
伝統的な絵画、伝統を守る絵画といった枕詞とともにあった日本画が、西洋文化の受容によって変化する様は、一般的に主題といった何が描かれて来たかに注目して論じられることがこれまで多かったように思います。
一方、実際に描く画家の立場からなら、使用された材料や技法の変化の中にも、同様にそれらを見つけることができるように思うのです。
実物の絵を前に、使われた材料や技法を手がかりにして、日本画の近代について触れられたらと思います。

問い合わせは 華鴒大塚美術館まで