金田式完対UHC-MOS-FETパワーアンプ
2005/01/09

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 別冊「オーディオDCアンプ製作のすべて」下巻の9章に載っている2SK2554を使用した半導体パワーアンプです。 このパワーに繋ぐスピーカーはいにしえの彼方にすでに生産修了したアルテック604Eと考えているので,今どきの物の ように低インピーダンスでは有りません。したがって8Ωスピーカーに合わせて定数を決めました。
 MJ05/03号にアルテックの特集記事が出ていましたが,604Eは16Ωだったんですね(^_^;)

 ご覧のとおり外見が少しばかり変わっています。温度上昇には気を使う必要が有るらしく,先人はいろいろと苦労されて いるようです。ので,放熱板をケースの外部に出しました。おかげでほとんど温度上昇しないようです。
 イスラム教のモスクのように4本のポールが建っていますが飾りではありません。調整をするときにケースをひっくり 返しますが,その時使うためです。少々格好が悪いですが,しかた有りません。ま,調整がすめば必要ありませんが。(~_~;)

電源部
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 オリジナルとほとんど変わったところはありませんが,私なりに工夫したところを紹介いたします。

放電用ブリーダー抵抗
uhcmosfet002.jpg  私は,電源SWを付けませんでした。その代わりコンデンサーに溜まった電荷を抜くためにリレーを使った 回路を追加しました。
 写真に写っているのはAC100Vで動作するリレーとブリーダー抵抗です。セメント抵抗が +−39V用で奥に見える金属皮膜抵抗が+−100V用です。電源を切るとリレーの励磁が解かれコンデンサーに ブリーダー抵抗が接続されて電荷が抜ける仕組みです。

LED電源表示ランプ回路
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 取り立てて説明する必要はないかもしれませんが,このトランスにはヒーター用の巻き線がたくさん巻いてあります。 整流管で整流とかハイブリッドアンプを考えなければ,この巻き線は余ってしまいます。
 そこでその一部を電源のパイロットランプ用に使いました。贅沢ではありますが,必要ないのでこのような使い方も ありかと思います。
 気が変わったときには標準の戻せばよいかと。

電流遮断型保護回路
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 この保護回路はオリジナルでは底のアルミシャーシにじか付けですが,別にアルミ板を用意してそれに取り付けました。
 また保護回路が動作したとき点灯するLEDとリセットSWはこのアルミ板に取り付けています。保護回路が動作した ときは不便ですが,どのみちそのような時は内部点検のためシャーシをはぐることになるでしょうし, LEDは幸いケーブル引き出し用の穴からのぞけば見えるので支障なさそうです。
 なお。ブリーダー抵抗を付けたおかげで電源を切れば完全に電荷が抜けてしまい,再度電源を入れるときにはSWを押さ なくても,保護回路は初期状態から起動されるので現状ではまったく問題無さそうです。


アンプ部
2005/02/14

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 たいして変わったこともしていないので,紹介することもありません。
 スピーカー端子は左右に付いているキャノン・コネクタを使って送り出しています。電源を切った後にこれを抜 いておき再び電源を入れた後に挿すとポップノイズに悩まされなくてもすみます。ただ,このアンプはかなり少な いようです。

2SK2554の選別
../senbetu/01.jpg  出力段のFETは自分で選別することにして,通信販売で20個ある会社から購入しました。選別は別冊に書いてあるような 方法ではなく,少しばかり精度が出ることを考えました。これから作ろうという方があれば参考にしてください。

放熱板
uhcmosfet053.jpg  放熱用のヒートシンクはパイオニアのジャンクのアンプから引き剥がしてきた物を使いました。
 手元にあったもので代用したので思うようにはなりませんが,製作記事のようにシャーシ内部に入れるよりは,放熱効果 が上がり少しはましかと思います。

放熱板とMOS-FETの熱結合
uhcmosfet054.jpg  ヒートシンクとMOS−FETの熱結合はなかなか難しくタカチのケースの上蓋に穴を開けてその穴から直接ヒートシンクに 取り付けました。ヒートシンクへトランジスターをビスで止めるのがやっかいでした。ホ−ムセンターで売っている タップを購入しヒートシンクに直接ネジを切り込み取り付けました。したがって裏側にビスはありません。このようにすると 後の作業性が格段に上がります。
 サーミスターはエポキシ樹脂で固定しました。表面側はエポキシが薄くサーミスターが直接見えます。したがって,外気に 触れる面積が多いので熱結合の完全を期すのなら,もう一度上からエポキシを流したほうが良いかもしれません。

基板の実装状態
uhcmosfet055.jpg  MJの製作記事では上下にFETを並べているため蛇の目基板に邪魔されてFETとサーミスターが見えませんが,MOS −FETと基板の接続はこのようにするとFETの配線の長さも均等にできます。MOS−FETの実装も製作記事とは違い ますが,この方がハンダ付けも,後の確認作業も簡単になります。
 また奥に見えるスケルトン抵抗はMFB回路を形成する一部です。配線をできるだけ短くするためと基板の裏へのアクセスが 簡単になるようにするため,この部分のみ基板に付けないで空中配線にしました。が,見た目良くないですネ。
 パワー段電源の+−39Vラインへは心配性なもんで,とりあえずヒューズを挿入しています。(~_~;)

アンプ基板
uhcmosfet056.jpg  電流遮断型の保護用回路を除いて,まったくのオリジナルどおりなので説明の必要はないですネ。
 なお,別冊の回路図は,初段カスコードのエミッタ-側の電圧が8Ω仕様と4Ω仕様では違っています。たぶん チェナーダイオードが違うのではないでしょうか。8Ω仕様ではRD27Fを使っているものと思われます。写真を見て もそんな感じです。
 MJ誌のNo.167ではRD27Fを使っているのでこの後ぐらいに18Vに変更したのではないかと思われます。 なお,HZ18C2はパーツ屋さんから規格にないと言われてしまいました。ので,電圧値の近い代用品で逃れました。最近 では12V位になっています。

保護回路基板
uhcmosfet057.jpg  DC検出の保護回路ですが,感度調整用のキャパシターは双信のデップマイカで容量は1000pFとしています。 この部分は保護回路の一部なので音にまったく影響はないと判断しデップマイカとしました。むろんセラミックなどでも まったく問題ないと思いますが,手元にデップマイカがあったので利用しました。

電流遮断型保護回路
uhcmosfet058.jpg  No.176で登場した電流遮断型の保護回路を追加しましたが,ニッコームには指定された抵抗値がなかったため 近い値の物で代用しました。2SA1400は金田式ではほとんど見かけませんが,ここは耐圧の高い物が必要なため 今回登場したのでしょう。
 この回路を追加したので基板は少々大きくなりカットせずにそのまま使いました。

uhcmosfet060.gif  この図は出力段の保護回路です。別冊では2SD756のコレクタを2SK214のゲートに接続して電流制限型の保護回路を形成 していますが,今回はこの回路常数そのままで電流遮断型保護回路に接続しました。
 この回路は2SD756のベース・エミッタ-間の電圧が,計算では約0.3Vになっています。B・E間電圧が0.6Vを超えると コレクター電流が流れるトランジスターの特性を利用した保護回路です。
 この常数のままで計算すると,常時の場合つまり出力電圧0Vのときに2SK2554のアイドリング電流が3Aを超えると 2SD756のB・E間電圧が0.6Vを超えるので保護回路が働くことになりそうです。また,出力電圧が電源電圧に張り付いた ときには6Aで動作します。

 常時のアイドリング電流は200mA設定なので設定値の3Aはちょっと大きいように思え動作電流をもっと少なくしたいと ころですがままなりません。62kΩと510Ωの分圧比を変えれば良さそうですが,仮にこの比を変えて1Aぐらいで動作す るように設定すると出力端子の電圧が−電源に振れたとき上側の2SD756のB・E間電圧が0.6Vを超えてしまい保護回路 が動作しそうでうまく行きません。下側の2SD756も出力電圧が+電源に近づくと同様になります
 また,2SK2554のソース抵抗値を上げることでも動作電流を下げることができますが,この抵抗は音質的な理由からこの 値にしてあるので変更することができません。

 出力電圧が電源電圧に張り付いた時には8Ωスピーカー(直流抵抗はそれよりも少なくて6.2Ω位とされています)では 約6A位の電流が流れるのでやっと動作することになりますが,そのときSPが消費する電力は100Wをはるかに超える ので,私のスピーカの許容損失は高々25W位ですからお亡くなりになってしまいそうです。もちろんこのような状態では Vo監視用の回路が働き保護可能ですが(~_~;)
 感度を鈍らせるのは4Ωスピーカー用の常数を使えばいいので簡単にできそうですが,これ以上感度を上げるのは 簡単にできそうに有りません。

MFBのボリューム
uhcmosfet059.jpg MFBのボリュームは近所の電気パーツ屋さんで2連1kΩをたまたま見つけたのでこれを使ってみました。なお, シャーシ内に収めたので開けないと調整できませんが,そうそういじることもないので不便はありません。
 MFBの回路常数は8ΩSP用にしてあります。604Eに合わせるには電流帰還用の0.68オームを 倍にすればOKでしょうが,今のままでも電流帰還の効きがちょっと悪いだけと思うのでそのままにしておきます。

 左にあるSWは2段目以降を生かすためにと思い付けています。今のままでも不便がないので使わないままになって います。
 このSWも使い終わったときに切り忘れると,今度電源を入れたときびっくりすることになりそうでうまくあり ません。付けることになればリレーを使った回路を考えることになりそうです。

アイドリング電流測定

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時間min 0.5123456789
電流mA 264214206213216220217216222216214
時間min 1012141618202530405060
電流mA 218209210214210202202201203198206

 このアンプのアイドリング電流の変化は気になるところですが,上の表のとおりかなり安定なようです。測定はUHC-MOSの ソース側に入っている0.1Ωの電圧降下で測りました。SW−ON直後に多少多めに流れますが,1分ほどの短い時間で 落ち着いてきます。測定したのが冬場ですので夏場になるとこの電流は減ってくると思います。
 1分を過ぎると上昇しているところもありますが,1時間以上稼動したところも測定してみてほとんど変化がないので このままで大丈夫なように思います。なお,安定期の電流は,夏場の暑い時期には周囲温度が上がるためもっと増えるか もしれません。夏になってもう一度測定してみようと思います。