国内V/UHFの歴史 1967〜1973年 
この時期ですが、
V/UHF帯で、出力10Wを得る手段として、真空管からトランジスタへ
ポケベルほか電波利用の拡大で、混変調や混信が問題になる都会地でも実用になる受信能力を得るために、新しいデバイスとして登場してきたFETの採用
部品点数を減らすためにICの採用
V/UHFもSSB化
などなど、技術的にも大きな変化を遂げた一つの時代だと思います
日本経済に目を向けても高度成長期・・・東京オリンピック開催を成功裏に終え、大阪万博の開催など日本中が好景気に沸いた時代でした
たまたま入手できたこの時代の無線機にフォーカスを当ててみました
入手時には、すべて不動(正常ではない状態)でしたが、Marker 22(受信基板が欠品)、Marker 66以外は、最低の送受信をするところまで、手を入れました
いわば頭の体操?です! 数日間楽しめました
Marker 22
多分ですが、1967年の発売 
今はなきクラニシから発売されました
当時のクラニシは、無線機メーカーでした
本機は、144MHz帯FM10W 終段のみ管球式のハイブリッド形式のトランシーバ
シリーズとして、50MHz帯用のMarker 66がありました
多分ですが、DC12V用とAC100V用の2つの電源ケーブルの用意があったものと思います
DC-DCコンバータを内蔵、終段は6360です
送受信別の基板がシャーシを挟んで上下に配置されているシンプルな構造です
電源は、12P角型ジョンソンコネクタが採用してあるのですが資料がなく、本機ばかりは全く手つかずです(受信基板も欠品している)
当時、福山電機(FDK、後に倒産後エンジニアの一部はALINCOへ)でも同様のハイブリッド仕様の無線機を販売していました
  シリーズ・コンビ、Marker 66と一緒に
マイクとACケーブルのついたMarker 66をつい入手してしまいました
動作NGというものです

発売時期の違いか、PLの色、CH切替数など異なります
AIWAのカーボンマイクが使われていたようです
分解して、初めて中を目にしました
こちらは、Marker 66の内部です

受信基板と送信終段が見えます
ハイブリッド構成で、終段は真空管6360です
受信のフィルタは、東光の24KHz巾のメカニカルフィルタが採用されています(本式!)

送信基板が見えているほうのリア側は電源部です

改造・欠品は無さそうなのですが、電源が入りません
リア側の状態が悪く(保存状態が良くない)、標準の2Aのヒューズでは飛んでしまいます
試しに5Aのヒューズを入れたところ巻き線抵抗から発煙・・・
基板は、ガラスエポキシ風で劣化は見られないのですが残念!

トランスがNGかな・・・です

回路図が入手できれば、もう少し手の入れようがあると思います
IC−6F


IC−2Fと一緒に
1969年の発売  
50MHz帯FM10W オールソリッドステートです
同シリーズに、144MHz帯 IC-2Fがあります
高周波増幅段にFET、中間周波数段にICと、当時最新のデバイスを採用
また、アンテナ切替もリレーが当たり前の時代でしたが、ダイオードを使った電子式のものが採用されています(接点の接触不良が問題になっていました)
この頃ですが、マイクロホンはハイインピーダンス(10kΩ)のものが採用されていました
1970年には、本格的な固定機(1つのVFOで送受同じ周波数で運用ができる)IC-71が登場します
本機ですが、同調の取り直しだけでカタログ値をクリアできました

同じ年代の兄弟機 IC-2Fを入手
送信できなかったのは、送受電源切替部のTrの不良、旧型のPNP-Trは無いので、適当なTRで代用しました
その結果、送信で9W程度の出力が得られるようになりました
一方、受信感度が取れない・・・SQ感度はまあまあなのですが肝心の感度が・・・0db入力でS/Nが10db位しか取れません
多分ですが、IFに原因があります(SQを閉じたほうが感度が良い?)
中和が崩れるとRF段が発振します
送信ができたところで、深追いは止めました
IC−20
1970年の発売(本機の製造ラベルには1971年の刻印あり)
ポケベル・警察無線など電波利用が増え、混変調に強くないと都会地では実用にならなくなってきた144MHz帯、ヘリカル同調を採用した高周波フィルタと、FETの採用で、当時東京タワーの下でも実用できる数少ない無線機と言われていました
50MHz帯のIC-60も同時発売
430MHz帯のIC−30は、翌1971年の発売です
構造はユニット(ブロック)化され、きっと3バンドの商品を作るのにも効率的に作用したものと思われます
本機ですが、送信プリドライバ2SC730がNGでした
前オーナーは、終段がNGと思ったのでしょう、プリドライバーから外部に取り出してAmpさせようとした痕跡がありました
確かにファイナル・ドライバのゲイン低下はあるようで、10W出力にはちょっと届きませんでした(7〜8W程度)が、これで良しとしました
 Liner2(改)
フロントは、Liner2
リアシャーシは、430

VXOつまみは、社外品
二連VRは、そもそも単連のSQ-VRのはず
本機では、内側がRF-VR、外側がSQ-VRに

Liner430とも異なります
(リアパネルも含むトランスバータ部)
改造品にしては、メーカーっぽいし
もしかして430開発のための試作品でしょうか??
1972年
日本電業より発売(Belcomブランドだったと思います)
ベースの設計は、CBそのもの
この分野では、しっかり実績があったと思われます
2群のクリスタルの組み合わせによるシンセサイザ方式の局発により、7.8MHzの中間周波数から28MHz帯を得て、ここに116MHzの信号を加え、144MHz帯へというまさしくトランスバータ方式に見受けられます
入手した本機ですが、430MHzへの改造?が行われているようで、トランスバータ部分が、別の構造のものが取りついていました
外ケースとシャーシサイズが合いません!?
ANT接栓がN型だし・・・・コンバータOSCの周波数を見て気づきました
50MHz台のオーバートーンクリスタルを8逓倍し、401.6MHzを得ていました
本機の一番の問題は、送信スプリアス
401.6+28.6=430.2MHzにならないといけないところ、引いてしまった373MHzに簡単に同調してしまいます(レベルだけで追っかけたら、必ずこうなります!)
DBM構造のハイレベルミキサが採用されていますが、このあたりに問題があると思われます
終段から3段くらいの同調も、目的の周波数以外の周波数で動作しようとばかりします
最終的に3〜4Wくらいで使えるかどうかというところでした(目的外周波数なら、10Wは簡単に得られます!)
かなりの改造というか、ハーネスのケーブルは切断されているし、後から追加されたユニットはあるしで、送受最低の動作をすることろで取り組みは止めました
Liner2DX
1973年の発売
こちらは、2群のクリスタルの組み合わせによる局発ではなく、デジタルシンセサイザ方式が採用されています
周波数関係は、Liner2と変わりません(28MHz帯=>144MHz帯)
受信高周波段には、ヘリカルレゾネータ(同調回路)が採用されています
送信同調について、こちらも不安定(不確実)要素を多く感じます
なんとか既定の10Wを、ほぼほぼ得ることができました

2つのLinerシリーズを見て
アンテナ切替リレーは、いずれも同軸リレーが採用されているように、コストをかけている面も見受けられます
日本電業(Belcom)は、CB無線機においては、多くの実績がある社でしたが、ことV/UHFに対する技術は、よちよち歩きのまま製品を出した、そんな印象を受けます
当時、スペアナなど使えない状態での設計でしょうから、やむを得ない点はあるでしょう
時間の経過した無線機の動作不良
素子の不良・劣化、同調ズレ、SW・VRの接触不良、半田割れ(ハズレ)・・・元々の設計がしっかりしていれば、このあたりの対応で何とかなりますが、設計そのものに問題があるものについては、相当厄介であることを改めて体験することとなりました
2022.04  JA4FUQ

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