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表示は、52.000MHzです
CWの運用には、BFOオプション(100KHzマーカーと一体)が必要に |
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本機の発売は、1969年末か1970年初頭だったと思います
YAESU FT-101の登場とほぼ同じです
1970年といえば、大阪万博開催の年でした
以下、少し時代背景ついて記します
今や、無線の世界では世界中で知らない人はいない有名ブランド ICOM
TRIO(現JVC_KENWOOD)や、YASEU(八重洲無線)に比べ、後発のメーカーです(創業者が、現役会長さんです)
先行2社がHF固定機スタートであったところ、井上電機製作所(現ICOM)は、VHF携帯機スタートでした(一番の先行はTRIO/春日無線・・・HF AMの時代から)
スタートした時代の違いと言えばそのとおりですが、井上電機製作所(現ICOM)は、ソリッドステート・スタート、それも携帯機スタートです
FDFM-2(144MHz帯1W FM)、FDAM-1(50MHz帯1W AM)というオール・ソリッドステート携帯型トランシーバーが、そのスタートとなった製品です(確か東京オリンピックの年/1964年)
VHF帯においては、まだまだタクシー無線上がりのハイブリッド式(送信ファイナルは真空管を採用)・・・送信時にピーというインバータ音がする無線機が多く使われていました
クラニシや福山電機工業(いずれも、今は無きメーカー)などアマチュア無線専業メーカーでも、終段は真空管という車載トランシーバが主流でした
お話を戻して、当時の50MHz帯は、いわゆる入門バンドで、そのほとんどは学生さんだったように思います
日頃は、仲間とラグチュウ、Eスポが出ると北海道や沖縄などDX QSO、仲間と山の上に移動しては遠くを狙うなど、仲間と一緒にいろんな楽しみ方が出来たのがその大きな理由だったと思います
この市場は、TRIO TR-1000(1965年発売)が市場をリードしていて、その後1100、1200とバージョンアップするのですが、対抗意識丸出しで出したのが、FDAM−3でした(FDAM-1、2では、市場を先行するTR-1000に対抗できなかった!)
そんな中で、本格的な固定機を目指して登場したのが本機です
この「型」は、その後、V〜UHF固定機に多く使われたので、何となく製品イメージが分かるという方も少なくないと思います
さて、このIC−71の特徴は、ダイヤル(VFO)にあります
まずひとつのVFOで送受信できること、今では当たり前ですが、これまでのトランシーバといえば、送受信別のダイヤル(送信機と受信機は別のものを、一体で組み込んだのがトランシーバ)で、先にキャリブレーションを取って(受信機と鳴き合わせをして)から送信というパターンが一般的でした
また高安定度というのが大きなポイントです
使い方もユニークで、大きく(早送りで)動かして、戻して細かく選局、というなかなか面白いメカニズムです
スプリアス対策と言うことでは、送受信とも、4連同調バリコンを採用し、RF段の選択度を向上させています
このメカも、送受上手く連動させると共に、MHz台のカーソルとして活用してあります
50MHz帯の運用においてはTVI(加害者)
144MHz帯の運用については、ポケベルによる混変調(こちらは被害者!)
この大きな問題に、優れた技術で対応したのが当時の井上電機製作所でした(FET、ヘリカル・レゾネータの採用など)
このIC−71発売の直後だったと思います、現在の大阪営業所の場所に新工場(本社)が建ったのは・・・
今昔
■仲間と一緒に(つるんで)遊ぶ
その昔は、当たり前だったことですが、最近は子どもも減り、ゲームを代表に「個」の遊びが中心に
なってきたようで、仲間と云々というのは良くないお話しに出てくるケースばかりが、目につきます
■TVI
こちらも死語になりつつあるようです
TX−88A(AM:28MHz)でパラ発振しても、そばに置いたTV画面は何ともならなかった、
というリストア挑戦者からのお話もあります
地上波放送デジタル化のメリットです
AmpIも、オーディオ・マニアの減少でしょうか、こちらもあまり耳にしなくなりました |
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例によって古いマシンですので、まずは分解して清掃からスタートです
何かが落ちて、本格的に錆び付いている部分は、どうしようもありません(軽くサンド・ペーパーをかけるくらい) |
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こちらが、背中に背負うタイプの純正定電圧電源(IC−71PS)の内部です
本体との接続は、GTプラグを介して行います
本体への固定は、蝶ネジ・・・トランスの右上に写っていますが、このもので固定します
取付位置を固定するためのノックが、本体背面にあります
外部電源への接続も、このGTプラグを介して行うことになります |
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本体底面
内蔵スピーカーは、コネクタ接続ではないので仮止め、そのスピーカーの陰に見えているのがIF基板、中央のアルミ筐体は、VFOです
機械的にも良くできていて、なかなか安定です
水晶群は、バンド切替用で、1MHz単位で4バンドをカバーします(現状は、標準の2バンド実装)
VFOは、1MHzをカバーします
VFOの後ろは、少し空いて変調段ファイナル、ファイナル・ユニット(パンチング・メタルの中)とLPF(四角なシールド)です
当時、TVIが少ない点も評価されていました(この地域の事情もあったのでしょうが、TRIO TR-5000/5200は、TVIが酷かった)
下に見える金属プレートの下にはAM変調トランスがあります |
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本体上面です
上に見える4連のVCは、受信RF部
下に見える4連のVCは、送信エキサイタ部で、右のドライブ段を経由して、シールドの中、ファイナル部へと
2つのVCを糸掛けで連動させてあり、その途中に周波数表示(50〜54MHz)のカーソルが取り付けられています(ナイスなアイディアです!)
基板については、一般的なベークライトを採用
頑張ってガラスエポキシ基板を使ってくれていれば、もう少し綺麗な状態が保てたことと思います(密度が低いから、これで良いのかな?!) |
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まだ、ロゴ戦略とまでは進んでない頃です
ICOM ICE INOUE 3つが混在しています OSAKA JAPAN は、素敵!
IEWと表記されていた時期もありました |
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上から見た全体像
純正の定電圧電源オプションを背負っています
本体へ固定のための蝶ネジの頭が見えています
ハンド・マイクも、当時付属のものです
当時のことですから、マイクはハイ・インピーダンス(10KΩ)です
オプションで、水晶付きBFO・100KHzマーカーの用意がありましたが、本機には装備されていません
あとは、バンド用水晶と、車載ステーがオプションでした |
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清掃後、整備を開始
破損部品は無く(PLも切れていない)、調整(機械的/電気的)のみで対応を終えました
純正電源を使用(AC100V運用)、50Ω負荷
送信出力 11W程度(AM/FM共に)
受信感度 AM:0dbμV入力 30% 1KHz変調 S/N13db程度(W) 15db程度(N)
FM:0dbμV入力 デビエーション5KHz 1KHz変調 S/N23db程度
S9表示 おおよそ13dbμV入力時
多分ですが、新品時スペックに近いものと思います |
2016.09 |
2台目を入手、こちらは全4バンドクリスタル、マーカ/BFO基板を内蔵です(フル・オプション内蔵) |
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本機によくある、PLの熱による日焼け
表示「52」MHzの部分によくある日焼けはありません
通電時間が短いのか、ダイヤル表示、PLの位置関係・構造が改善されたのかは???です |
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オプションである100KHzマーカー/BFO基板搭載です
フロントから見て、左サイドに縦に取り付け、です。
接続は、MT7Pプラグを差し込むだけです(455KHzクリスタルの下に見えています)
CW受信時の様子は、最後に記します |
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2台目に付属のIC-71PSは左側です
定電圧電源Trにカバーがかかっています
1台目についていた状態であれば、コレクタがむき出しですので、どこかとショートなど事故が考えられますので、これは安全策でしょう |
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受信RF/IF部、送信ドライブ・ファイナル段の調整を行いました、その後に
52.0MHzにて計測してみました
( IC-71PS使用) |
電気的性能は2台に大差ありません |
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送信 |
出力 10W強 |
消費電流 AM時:3AMax FM時:約2A |
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受信 |
AM Wide 30%変調 |
1.0μV入力 S/N 15db |
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0.5μV入力 S/N 8db |
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AM Narrow |
1.0μV入力 S/N 17db |
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0.5μV入力 S/N 10db |
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FM ±7.5KHz変調 |
1.0μV入力 S/N 23db |
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0.5μV入力 S/N 20db |
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CW 信号のON/OFF |
0.15μV入力 S/N 10db |
説明書にある仕様を見ても、受信感度についてはS/Nが書かれているだけです
上記の結果から想像ですが、1.0μV入力でのS/Nが記されているものだろうと思われます
余談ながら、BFOをONにするとSメーターが振れます
IFにBFO信号が回り込んでいる結果です(455KHz/中心周波数のBFOですので、この点は致し方ありませんね)
CWの受信そのものに影響を与えるものではありません、上記の通り十分な感度が取れています |