Collins 651S-1
 1970年代の軍用/プロ用受信機 651S-1です
PN522-4836-180 の刻印がありますので、初期モデルではなさそうです(-180が、Revision)
周波数表示も7セグメントLEDですし・・・初期モデルは蛍光表示管です
75A-4に続き、51S-1というモデルが登場、本機はそのあとのモデルでオール・ソリッド・ステートです
いろいろな特徴を持ちますが、中にはアマチュア無線目的には向いてはいない点も見受けられます

0.2500〜29.9999MHzを連続カバー、周波数チェンジについては、1MHz/0.1MHzの単独選択ツマミがあり、先代の51S-1に比べ、ずいぶん素早くできます(51S-1は、1MHz単位のバンド切り替え+メイン・ダイヤル/1MHz幅のPTO)
1st-IFは、109.35MHzのアップコンバージョンタイプ・ゼネラル・カバレッジ受信機です
そののち、10.35MHzに変換し、ここで0.5KHz幅、3KHz幅のクリスタル・フィルタ、もしくは8dbのアッテネータ(フィルタなし)を通って、再び450KHzに変換し、改めて2.7KHz幅LSB/USB、または6KHz幅のメカニカル・フィルタを通って、検波となります
基本は、トリプル・コンバージョンです
VLFコンバータをインストールすると、560KHzより低い周波数(VLF)については、9.9MHzオシレータでアップ・コンバート(9.912〜10.4599MHzに変換)されたのちに、先のTOP-MIXに接続されます
すなわちクワトロ・コンバージョンとなります
本受信機は、RFアンプを持たないトップ・ミキサー方式です(この方式採用の走りだと思います)
それぞれのフィルター処理が優秀なのでしょう、他に見たことがないくらい高いVLFにおける感度が得られています
TOPに250KHz〜というフィルタが入っているせいでしょう、感度は大幅に低下しますが、9KHzの信号も受信できます

リアの様子

中央にデカい?ファンが配置されています
ファン周囲のウレタン・スポンジは劣化してサラサラ/ボロボロです
できる範囲で削り取りました
リモート運用を可能にするI/Fが付いています
IFあるいはAF-LINE出力など、スピーカー以外に各種信号が取り出せます
シャーシ上面です

左側のシールドの下は、RF/オシレータ部です
いずれもマザーボードに差し込む構造がとられています
上から見ると、周波数表示LEDが差し込まれている様子がよくわかります

こちらが底面の写真です

マザー・ボードと電源ブロック・コンデンサが目に付くだけ
ヒューズホルダが壊れていました
30mmの標準型が採用されているのですが、ホルダーの取付穴はミゼット・ヒューズ・サイズ
このサイズのものは見たことがなかったのですが、探せばあるもの・・・形状は変わりましたが、同等なものに交換することが出来ました
フロントパネルを前面に倒して、AFボードの修理を実施

中央の電解コンデンサが今回交換したもの
以下のコンデンサが2個 並列に配されていたもので、手持ちの470μFのものに交換しました
チューブラー型があると格好がいいのですが、ここは縦型です(最近のものは小型で、収納に問題はありません)
こちらがオリジナルの電解コンデンサ

AF音量が小さい、低域が出ていないことから、出力コンデンサを疑ったところ、見事ピンポン
容量計で測ってほとんで「0」  本来200μF
気になってRegボードの同形状のコンデンサを外してチェックしましたが、こちらは大丈夫でした
こちらは、周波数表示の7セグメントLED-Assyです
ご覧のようにMT9Pソケットに合うピンで作られています
元々蛍光表示管であったものをLEDに交換、というストーリーがよくわかります
フロントパネルを取り外し、AFアンプユニットを取り外した様子

上側は、フロントパネル裏側です
型式とロゴ
フロントパネル右端のアップです
Sメータのアップ
一般的なS1〜9+overの目盛ではありません
信号強度は、μdb目盛り
0dbのところは、1μVと記されています
あとひとつはオーディオ・ラインのレベル/dbm

切替SWがフロント・パネルに配されています
分厚いマニュアル
綴じている側でも3Cmはあります
手前は4Cm以上あります
ツマミなどに使われているイモネジを回すためのヘキサレンチが、こんなところにコッソリ?セットしてありました
見つけられますか?

私にとって、新発見!!です
不調のメカフィルのひとつを分解してみました

入出力トランスの断線はありません
全く信号を通さない訳でもないし、いったい原因は???
絶縁材は、75A-4のメカフィルと同じようなゴム材だし・・・
半世紀くらい前の製品で、それなりに使われて来たもの思います
メインダイヤルやその指をひっかける部分など、固まって随分重くなっていました
これらは清掃&注油などで改善されますが、一つ解決が困難ことが・・・
AFパワーアンプのコンデンサ容量抜け以外に、フィルタ切り替えで、2.7KHz USB/LSB そのいずれもがロスが非常に大きいというトラブルを発見
メカニカル・フィルタを取り外してSSGとスぺアナでチェック・・・メカニカル・フィルタそのものに問題があることがわかりました
USの販売店のサイトを探すと、本機のIFフィルタ・ユニット(同じユニット番号のもの)が$500程度で売られているのを見つけましたが、今回はそれを手に入れるまでの元気はなく、SSBの受信においては10.35MHz 3KHzクリスタル・フィルタにのみ依存することにしました

思い切って、このIF-UNITを入手しようと決心!
ところが、倉庫移転で見つからないという連絡で、半分あきらめていたのですが、数か月経過後に見つかったという連絡が入りました
スピーカーも出てきたとのことで、ついでに購入
651S1-SPK 3” x 5”のものです
ラックマウントセットに付属しているものだと思いますが、通信用途には非常にいい音/効率が良く端切れの良い音がします
上UNITが、LSB/USB両メカフィルがNGなもので、下UNITと右スピーカーがUSより新たに購入したものです
スロット 上から2番目がこのIF-UNITです
なんとなくTAGがより白いです

これで本来の受信機能を発揮、です

懸案解決、良かった良かった!!



(2020.09)

本機ですが、使用周波数が決められているプロ局、BCL目的/AM受信には大変優れていると感じます
AMにおいては、3/6/16KHz幅を選択して受信できるし、周波数の設定も、MHz/0.1MHzの単位は、単独のダイヤル・ノブで、それ以下の周波数はメイン・ダイヤルでと、早くスムーズにできる点はとても良いと評価できると思います
またVLFの感度については、他に見たことのないくらい高感度です(安定した受信ができそうです)
特記すべくことかと思います
最初に書かせていただいたように、少なくとも9KHzから受信できます(手持ちSSGの都合で、これが最も低い周波数)
スペックでは、12KHzからとなっています

アマチュア無線的な使い方をすると・・・・すなわちメイン・ダイヤルをグルグル回して選局をしようとすると、まず100Hz単位でのクリック・ノイズのような音が気になります
ダイヤルを回しているうちは、音声をミュートさせる機能が働き、なんとも言えない受信フィーリングです
これらは、PLLのLockスピードがダイヤル変化についていかない点(要は遅い!)の改善(ごまかし?)を目指したものとも考えられますが、なんともです
プロ局のように待ち受けなど、周波数を決め打ちして使用する分には、全く問題ありません
どこかで、このミュート機能をキャンセルさせる改造記事を見たような気もしますが(Service Bulletinに、記載があったかも)、ここはオリジナル重視です

CW受信に関しては、10.35MHz 500Hzのフィルタが功を奏します(450KHzメカニカル・フィルタには、CW用の想定はありません)
またBFOも可変(デジタルVBFO/10Hz単位でチューニング可能))を選択することで好みのピッチで聞くことができ、これは重宝すると思います
この動作がCWのみに対応していますので、本機は651S-1もしくは1A、VLFコンバータ(下限12KHz)をインストールされた製品で、後から表示をLEDに交換したものではないかと思われます

最終モデルにおいては、周波数表示はLED化され、デジタルBFO/10HzステップもSSBにも対応しているようです
SSB受信において、100Hzステップで今一つ合わせられないという問題も、ここで改善されたよう思います(使用したことがないので、ここは想像!)

137KHz S/N10dbが得られる信号強度  
           AM:3KHz帯域幅 2.5μV  1KHz 30%変調 ON/OFFによる


   2019.11 

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