Ten-Tec Century21 Model570
3.5〜28MHz帯(5バンド)  CW 最大入力70Wの電源内蔵型トランシーバ
H:15.6cm × W:31.8cm × D:30.5cm  重量:約7Kg
こちらは、AC電源を内蔵 1977年の発売? US製ではお馴染み?の左右対称デザイン
バンド切替ノブは、純正ではありません
非常にシンプルなフロント・パネルです
メインノブ/バンドSWの共通ツマミほか、
送信:パワー(DRIVE)
受信:通過帯域 RFゲイン AFゲイン
ボタンは、受信:ゼロビートを取るためのものと、送信:ドライブレベルを設定するための連続送信ボタン
ジャックは、ヘッドフォンのみ、KEY接続は、背面に
電源SWは、RFゲインボリュームに連動(押してON、引いてOFF)  
メインダイヤル1回転で約17KHzです
リアパネルです
左上は、外部マーカー接続端子
その下は、安定化電源部のパワートランジスタ
RCAジャックは、+12V出力(2口)とKEY接続端子
本機の構成
5.0−5.5MHzのダイレクト・コンバージョン方式の受信機の頭にトップミキサーのコンバータを用意した、非常にシンプルかつ高性能な受信機に仕上がっています
Ten-Tecでは、ダブル・ダイレクト・コンバージョン方式と呼んでいるようです
RF-MIXとプロダクト検波には、DBMが採用され、高いダイナミックレンジを得ています
本機では、AGC回路の組込はなく、RFゲインコントロールは、MIX出力に単純な形でボリュームが入っているだけです
また受信S表示もありません
後継機のCentury22では、基本的なところはそのまま引き継がれていますが、RFゲインコントロールについては、ANT入力のところ(DBM入力側)にアッテネータ方式で可変ができるようにVerUpしていますし、AGC回路やSメータ表示が採用されています

送信
5.0−5.5MHzのVFOにコンバータ・クリスタルを使用し、目的の周波数に変換したものを増幅した形です
フル・ブレークインに対応します

コンバータ用クリスタル
3.5/14MHz帯については差し引き逆の使い方で、クリスタルを節約してあります

メーター表示
全体に流れる電流を測って表示しているもので、おおよそ70Wの送信入力電力(当時のノービス級に向けたもの)が分かるようにマークされています

25トランジスタ、26ダイオード、5ICで構成

デザイン的にも同じ流れ(基本同じ)の製品には見えませんね こちらは後継機Century22との新旧比較
Century22は、電源を内臓せず、そのためサイズの違いが大きいうえ、受信機能の向上が大きく、UpGrade感いっぱいです
KEY接続端子もフロントパネルに用意されました
まず、トラブル対応から
メイン・ダイヤルが固着して動きません
VFOユニットの取り外しからスタートです
清掃・グリスの塗布など行いましたが、時にノブ空転が生じます
使い込めば馴染みそうです

左写真は、フロントパネルを外した様子
サイズの違いは、カメラとの距離の違い

ダイヤル目盛は、5KHz毎・・・読出精度5KHzです
VFO部(Ten-Tecでは、PTOと称しています)の取り外しには、シャーシ底面のAUDIO PRE-AMP基板を写真のように取り外さないといけません
VFOのシャーシ取付のネジが、この基板の下にあります

VFO/PTOは、アルミ・ダイキャストのケースの中に上手く組付けられています
Collins、DRAKE同様のμ同調方式・・・発振コイルのダストコアを前後に出し入れする方式の採用です(Ten-Tecでは、この方式がスタンダードです)
左写真は、 FINAL AMP部、基板、トランジスタです

機械的な問題はクリアできたとして、通電してみたところ、電流保護回路が働くような動きをします
一度、正常通電した後、DC電圧が落ちます
ファイナル部の+B接続を外して様子を見ると正常です
ファイナル部への接続に電流計を入れると3Aを振り切ります
ファイナル・トランジスタが飛んでいました
要交換です
交換用ファイナルトランジスタが入手できるまで、受信関係のチェックです
ファイナル・トランジスタ
壊れていたものは、2SC1696(上写真のパワートランジスタ左2個)、右2個はMRF475です
Century22 こちらの予備としてMRF475を買っていることをすっかり失念していました
互換があると思われる、この2SC1696を手配していましたが、本来使っていたであろうMRF475に交換しました
改めて、シャーシ底面の様子
左下から、AUDIO PRE-AMP基板
その上が、AUDIO POWER AMP(左)、
CONTROL BOARD(右)、
右の大きな基板はMIXER BOARDです

一番上、真鍮色の部分は、FINAL AMP部です
シャーシ下 リアパネル裏です
真鍮製シールド部は、送信終段部
ここでは、0.5W〜1Wを、20〜35Wに増力します
ヒートシンクと一体で、リアパネル側に取り外すことが出来ます
結線は、+12Vとスタンバイ用電圧の2本だけ
RFの入出力には、RCAコネクタが採用されています
シャーシ上面の様子
大きな電解コンデンサと電源トランス
トランスの下に縦に取り付いているのが電源回路
中央下のVFO/PTOの左は、FRONT END BOARD
その上が、LOW LEVEL DRIVER基板です
この出力は、おおよそ最大1Wでした
一番上、真鍮色の部分は、FINAL AMP部です
その左に、LOWPASS FILTER基板が、縦に取り付けられています
シャーシ上面をリアパネル側から写したもの
照明は、もちろん電球
凝っていると思われるのは、メーター照明
メイン・ダイヤルと明るさが異ならないよう、薄い白の板がメーターの裏側に張られています
こんなアナログ処置(気配り)が好きです
スピーカーは、底面に用意されています
今回必要だったメンテナンスをまとめると
1.機械的には、VFO/メインダイヤル機構の固着対応
  押しボタンSWの固着対応
2.電気的には、ファイナル・トランジスタのショートによる不良交換
後は、お決まりのトラッキング調整です
電源を内蔵、あるいはメイン・ダイヤル表示機構については、後継機Century22より本機のほうがコストがかかっています
が、電気的な設計あるいは使い勝手に関しては、Century22にずいぶん進化を感じます
【仕様】
3.5〜28Mhz帯 5バンド(各バンド帯域幅:500KHz)
受信感度:1μV S/N10db以上
選択度:帯域幅 2.5/1.0/0.5KHzの3段階切替  4ポール・オーディオ・フィルタ
RIT(オフセット):±5KHz
低周波出力:1W LM-380
送信出力:20W以上  入力:最大70W MRF-475プッシュプル
電源:DC12〜14V 最大5A

このシリーズの特徴は、なんと言っても受信回路にあると思います
詳しくはCentury22のページに記しています


実測 & 実稼働
仕様を満足していることを確認しました
14MHz帯での実測ですが、帯域幅1.0KHzで、0.7μV入力時にS/N10db
帯域を0.5KHzに狭めると、0.4μV入力でS/N10dbが得られました
その他のバンドについても帯域幅1.0KHzで、0.7ー0.8μV入力時にS/N10dbが得られました
7MHz帯でSSB受信をすると、さすがにRFゲインを使って入力信号を絞ることをしないと、音が割れるケースが多々あります
AGC回路を持たないので、ここは手動で・・・です

送信パワーは、21MHz帯が一番少なく20W強
3.5〜14MHz帯にあっては35W以上出ています
パワーが出すぎる状況が生じると(DRIVEボリュームを上げすぎると)、定電圧電源回路の過電流保護が働き、電源が落ちます
復活には、電源SWのOFF/ONが必要です
これはこれで正しいパワー出力制限かと思います
DRIVE という調整ボリュームは重要ですHi
3.5〜14MHz帯で、最大出力状態で送信する(SET DRIVEボタンを押す)と、いきなり電源が落ちます!
2023.11  JA4FUQ


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