Ten−Tec Paragon Model 585
1987〜90年代初頭にかけて発売された製品です
当時の国内メーカーの主力マシンと言えば、KENWOOD/TS−940  ICOM/IC−760PRO など
送信は、SSB、CW、RTTY WARCバンドを含む、160mから10mバンドをカバー(オプションでFM)
CWは、フル・ブレークイン、セミ・ブレークインに対応
受信は、100KHzから30MHzまで連続カバー もちろん標準でAM受信OKです(6KHzフィルタ内蔵)
後継で発売されたParagonU(Model586) では、標準でAM、FMとも送受出来ます
周波数 受信 送信
160mから10mバンド
 WARCバンドを含む
SSB/CW/RTTY/AM(FMオプション)
ParagonUは、FMも標準対応
SSB/CW/RTTY(FMオプション)
ParagonUは、AM/FMも対応
100KHzから30MHz SSB・CW・RTTY・AM(FMオプション)
ParagonUは、FMも標準対応
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以下、公表スペック
モード 0.1〜1.6MHz 1.6〜29.999MHz
SSB/CW/RTTY 0.5μV 0.15μV 10db S/N @2.4KHz
AM 3.5μV 1.0μV 10db S/N @6.0KHz
(FM) 1.0μV 0.3μV 12db SINAD @15KHz

フィルタ選択度 −6db −60db
標準 2.4KHz 3.36KHz
AM 6.0KHz 11.25KHz
オプション 1.8KHz 2.9KHz
オプション 0.5KHz 1.4KHz
オプション 0.25KHz 0.85KHz
(FM) 15KHz 30KHz

 
1stIF=75MHz  2ndIF=9MHz 3rdIF=6.3MHz(FM 3rd=455KHz)  アップ・コンバージョン方式のトリプル・スーパーヘテロダインを採用

イメージ妨害比 80db以上  中間周波妨害比 70db以上 
ダイナミックレンジ 100db 三次インターセプトポイント(IP3) +18dbm 
パスバンド・チューニング ±1.2KHz  
オーディオノッチ/250〜2.2KHz 50db
4ポール・オーディオ・バンドパス 220Hz〜1.7KHz 可変 35%帯域幅 −6db
トーン・コントロール 5KHzで可変15dbロールオフ

ダイヤル/表示共10Hz台まで
Normal Normal Shifted
CW/SSB/RTTY 10Hz 20Hz
AM/FM 50Hz 100Hz
Fast Fast Shifted
CW/SSB/RTTY 20Hz 50Hz
AM/FM 100Hz 500Hz
ダイヤル・チューニングについては、上記4つの選択が出来ます
バンド切替SWはありません、テンキー入力です
VFOはA/Bのデュアルで、SPLIT操作もできます
また送受のオフセットは、それぞれ±99.9KHzまで可能で、これは便利・・・普通±9.9KHzというのが多そうです

メモリも62メモリと充実・・・周波数、モード、VFOセクション、IF帯域幅、タグが記憶可能となっています
タグ・・・例えばコールサインなどのメモとして使用できます(なかなか配慮があって面白い!)

送信100Wのユニットを内蔵し、これで約7.25Kgですから、とても軽く感じます(総アルミも大いに関係するでしょう)
余談ながら、100Wの連続送信には、別途強制空冷の考慮が必要でしょう

リアパネルの様子
VOX、CW関係の調整ツマミが並びます
また、信号の取り出しや入力の端子も充実しています
232c I/Fは、オプション設定となっています
パッと見、ParagonもCorsairも、Omniも同じように見えます!

ボタンSWにチャタリングが気になるところがあったので交換することにしました
フロントパネルを開けて、SWボード(Assy)を取り外しました
フロント面と、SWボードがこのように組み合わされています
緩衝材としてスポンジ(ウレタン風)が使われています
このものが無いと、ちょっとしたことでSWボタンがボロボロ脱落してしまいます
余談ながらこのスポンジの素材によって状況が大きく変わります
ボロボロになったりベトベトになったりすると、その本来の機能を失います
国産の無線機においては、特に車載機では良く問題になります
下に見えている黒い物体は、メイン・ダイヤルで回しているロータリー・エンコーダです
メイン・ノブは、アルミの無垢で重量感があります
交換したボタンSWは、43個
アルプス製品が使われていましたので、同じものを容易に入手することが出来ました
ひとつ交換するもの複数交換するも手間は一緒・・・と言うことで、43個全て新品と交換しました
左写真は、SWを全て取り去った基板と、取り去った43個のSW
本体中身、正面です
下がフロントパネル面です
シャーシは全てアルミで、軽量かつ錆に強く、US製品の良いところです
メーター照明
LEDが使用してありました
あまりに暗い・・・他の写真などではここまで暗くはないと電流制限抵抗を見ると300Ω・・・6VからLED2個直列ですので、これはあまりに大きな抵抗値と言うことで、20Ωに変更しました(この部分の回路が入手できず、オリジナルは???)
上写真の一部をアップしたもの
CPUボードです
バックアップ電池・・・劣化していた006P/9Vの二次電池を交換しました
これで電源を完全にOFFにしても、カレンダーがリセットされることはありません
拡張ユニットが刺さるコネクタが右下に2つ見えています
ひとつは、FMオプション、あとひとつは232cI/Fオプションの取付場所です
ParagonUにおいては、ここには標準でボードが刺さっていることでしょう
こちらは、本体下部分(シールド板を外して撮影)
Ten−Tecお得意の自社製フィルタ
これを見るとTen−Tec製品だと!
AM:6ポール
SSB:8ポール 2段
パスバンドチューニングで16ポールとのカタログ表記も
フィルタは、いずれもシェープ・ファクタ2未満という優秀なものです
オプションとして、狭帯域フィルタ(6.3MHz)3本のスペースが用意されています
セクション毎に用意されたユニットが、整然と配置されています
この上に全体を覆おうシールド板が取り付きますので、ユニット毎にきちんとシールドされることになります
フロント・パネルは、ご覧のように簡単に前に倒すことが出来ます(電源SW、MIC、ヘッドフォンジャックの配線には要注意)
高周波的には、きちんとした設計・・・アルミ板でユニット毎にきちんとシールド・・・市販商品の中にあって、ここまで徹底できている製品ばかりではありません
電源はシビア・・・当たり前と言えば当たり前なのですが、一瞬の電圧低下であってもCPU動作がNGとなります(Lockしてしまう)
きちんとした電源を用意、これが必須です

Ten-Tecらしいというか、独特の使用感、受信が楽しめます
個人的にですが、この使用感は好きです

ほとんんど同じ格好で、OmniX−OmniVi シリーズがあります
こちらは、水晶発振子によるローカル・オシレータにプラスPLL(500KHz巾)VFOという構成で、アマチュア・バンド専用となっています
Paragonは、マイクロプロセッシング・シンセサイザ方式です
ゼネカバ受信対応/全体の周波数安定度と、より高性能(低位相雑音性能)なアマチュア・バンド専用、これがトレード・オフとなっています(マイクロプロセッサを採用すると、何かとノイズ発生!?)
同じTen-TecにCorsairU(Model561)というトランシーバがあります
こちらはPTO/アナログVFOを採用したモデルですが、Omniシリーズが言わばこのデジタル(PLL)版ということになるのでしょう
2019.03   JA4FUQ

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