SWAN ASTRO-150A
3.5〜28MHz帯をカバーするオール・ソリッド・ステート・トランシーバです
ぱっと見では気づかないことですが、メイン・ダイヤルは100HzステップのUp/Down方式です
フロントパネルは、極めてシンプル(お馴染みの左右対称デザイン)です
MIC端子には、周波数のUP/DOWNほか、CWの電鍵接続ピンの用意があります
本機は、1979年の発売のようです
SWAN社は、1967年にCUBIC社の子会社になったようで、本機のフロントパネルには、CUBICの表記が採用されています
その後1974年に、SWAN社の元オーナーが立ち上げたのがATLAS社のようです
SWAN−CUBIC−ATLAS 少なくともアマチュア無線機器については、同じDNAのように見受けられます
本機は、PLLシンセサイザ方式の局発(VFO)を持つシングル・コンバージョン方式です
IFは、9.00MHz AGCは、オーディオ出力を利用したもの NBは、標準で装備されています
CWにおいては、セミブレークインのみならず、フルブレークインにも対応、300Hz巾のナローフィルタを内蔵します
本来の仕様
9.53H x 24.8W x 30.2D (cm)  重量は、5.9Kg と、コンパクトです
受信感度は0.35μV入力時、S/N10db
選択度は、8ポールフィルタにより、帯域幅2.7KHz シェープファクタは、1.6とハイスペックです
CW時には、800Hzオフセットされ、フル・セミブレークインの両方に対応
送信出力は、100Wです
SSTV/RTTYの送信については、クーリングファンの用意・取付を推奨してあります
ノイズブランカを内蔵し、CW-Narrowを選択した場合、帯域幅300Hzのクリスタル2枚によるフィルタが追加・機能します
メインダイヤルが100Hzステップのため、RITとは別にFINEツマミ(T/R共に働く)が用意されています

まずは、トラブルシューティングから
■受信感度が低下(20db程度低い)   
こちらは上カバーを開けた中にあるIF-AF基板です
クリスタルフィルタの左斜め上に見える2つのIFT風なコイルの間にNBのゲート回路(FET)があります
このFETの不良により感度が低下していました
使ってあったのは、MPF971だったのですが、手持ちのJ310に交換しました
受信に関しては、この解決だけで0.5μV 入力時S/N10db以上の感度が得られました
IF残留ノイズがやや多いようで、IFゲインを少し絞ってやると、スペックの0.35μV入力S/N10dbをクリアします
■送信パワーが出ない   
ファイナルユニットです
13V供給ラインの100μF電解コンデンサが破裂していました(ケース裏に痕跡が残っています)
またバイアス制御のTIP42 というトランジスタも飛んでいました
下段にも記しているように、このボード上の半導体は全てNGという結果でした
原因は、過電圧?
本体の電源SWがOFFであっても、給電すればその電圧はそのままこのファイナルユニットに供給されます
消費電流の大きい半導体式のマシンにおいては、良く見受けられるパターン(設計)です
プリドライバ 2N3866 このベースに入っている抵抗が焼けています
Trを取り外してチェックすると、やはりNG
こちらはすぐに入手が出来て、既に交換済です
その後、ドライバ MRF433、ファイナル SRF2978 をチェックするも全てNG
全くパワーが出ない原因は、このファイナルユニットが全く機能していないことにありました
当初より、プリドライバの入力までは送信信号が出力されていることは確認できていました
パワートランジスタの取付ビスを外し、ヒートシンクから基板を取るとこんな格好に
プリドライバ2N3866は、チェックのため取り外しています
ヒートシンク側でTO-220を掴む、そんな面白い?取付&クーリングです
MRF433 eBayから購入済(中華ルート)
本機に採用されているSRF2978ですが、MRF458同等のようです
MRF458 直接の中華ルートで手配中
修理のためのパーツ代が馬鹿になりませんね(ちゃんと動作するものが届くかも、やや心配! => 現実問題に?)
上に見える取り外したものは、パンクした電解コンデンサとトランジスタ一式です
基板は、やっと手掛けた修理の結果です
ファイナルのMRF458は、商談が怪しかったのでPass
簡単に入手できません
代わりに中華から入手した、MFR-454は大ハズレ!
テスターチェックでNGが分かるもの
別途入手した、MRF455はテスターチェックOKでしたので、取り敢えず取り付けて様子を見ることにしました
中華にしか頼れない=ハズレを覚悟、です
入手できたMRF455をファイナル素子に採用
定数の変更など行わず、一切元のままです
この場合でのツートーン信号の波形です
まずまず、でしょうか(オーバードライブ気味?)
得られるパワーは、Max50W程度
この時、終段に10A位流れます
ただし入手できたデバイスでの結果であって、これが正常にスペックを満足したものかどうか等は???です
もしMRF458(同等)が入手出来たら交換して試してみましょう

本体上側のケースを開いた状態です
左の大きな基板は、AF−IF(エキサイター)部
中央の基板は、プリセレクタ/バンドユニット
右奥は、送信LPFユニット
右手前はノイズブランカ基板
内蔵スピーカーは、こんなところに組付けられています
本体下(底)側です
左は、バンド切替スイッチです
中央は、VCO バンドフィルタ ユニット
スピーカーの奥は、PLLチューニング部
特徴的なダイヤルチューニング機構について
メインノブは、センター位置を中心に左右に170度程度回ります
くるくる回る一般的なチューニングダイヤルの動きではありません、Up/Downです
最低100Hzステップで、角度をつけるほど(大きく回すほど)ステップの移動が早くなります
100Hz以下は、左上のFINEツマミで可変できます
このツマミは送受同様に可変できます
受信時だけの微調については、RITツマミで行うことが出来ます
使用には慣れが必要ですが、軍用機にあるようなサムホイールスイッチやトグルスイッチで行う周波数の移動に比べればはるかに楽というか実用的です
最後に、リアパネルの様子です
ANT
MOD-IN
EXT-SP
LINEAR-STBY
CW-KEY
ヒューズはファイナル部以外に供給するラインの2A
電源接続に関係して、ファイナル部を保護する要素はありません
しばらくぶりに通電
以前には確認できていないノイズ・・・IF以降でバリバリと結構なノイズが発生します
色々チェックしましたが、決定的な原因を見つけることが出来ません
こういう時の最後の手・・・24時間通電しっぱなしに
ノイズの発生は無くなっていました(デバイスが落ち着いた!?)
古い無線機、当分通電していなかった無線機などにあっては、この手の現象は、少なからず経験します

取り敢えず現状です
受信感度  0.5μV信号 ON/OFF で、S/N10db 残留ノイズ・レベルがやや高い感じがします
        なにかデバイスに起因することかもしれません(不要ノイズの件と合わせ)
  実際の運用にあっては、そのノイズ・レベルはもっと高いので、実用上は問題ないかと
  内蔵スピーカーでもって、意外と聞きやすい音色と音量です
送信出力  おおよそ50W
  送信音も、通信向けの好感の持てる音色です(付属マイク使用)

本機は、モバイル運用に特化したトランシーバのように見受けられます
コンパクトで実用・・・受信も大音量の良い音が得られます
CWナローフィルタ(クリスタル2枚を追加)の搭載や、フル・ブレーク・インの対応など押さえるところはきちんと押さえてあり、メインダイヤルのスタイルもいわゆる軍用機のスイッチ操作(例 ITT Mackay MSR 8000)に似ているところがあり、船などハードな環境での移動運用を意識したものかな?と思ったりもするトランシーバで、興味深いものがあります
2023.10   JA4FUQ

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