hallicrafters FPM-300

1960年代の同社製品イメージとは、全く異なるデザインのトランシーバです
操作に最低必要なツマミ類しかありません
ダイヤル校正は、CALツマミに連動した小型のVCで行います

本機は、1972年から1974年にかけて発売された、ハリクラフターズ最後のアマチュア無線用トランシーバです
ハリクラフターズと言えば、第二次世界大戦前の1932年創業の老舗の無線機メーカーでした
創業者の名前からとった社名、(William J) Halligan (hand) crafters => Hallicrafters だそうです

3.5MHz帯から29.7MHzまで、HF5バンドをカバーする(28MHz帯は4分割、もちろんWARC対応なし)SSB/CWに対応した100Wトランシーバで、AC電源に加え、DC電源(DC−DC)も内臓、移動用あるいは2ndシャック運用を意識したニューカマー向けのギアかと思われます
324 x 140 x 273mm とコンパクト 電源内蔵で、重量11.3Kg です
本機の発売より数年前に発売になった SWAN270、GALAXY GT-550 このクラスの製品の半導体化を進めた製品と考えられます
1972年と言えば、八重洲無線からはFT-101B(リンクは、FT-101)が発売になった時期であり、$595と安価な価格設定ではあるものの、正直なところ性能的には比較にならない・・・・結果、最後のトランシーバになってしまいました(FPM-300MKIIというのが本当の最後)

構成
中間周波数 ハイフレ9MHzの、プリミックスタイプのシングル・コンバージョン方式です
国内製品では、FT-200 のイメージです(こちらは時代が古い管球式)
フィルターは、2.1KHz巾のひとつのみ、ダイヤル読み取り精度も5KHz、RITもありません
真空管は、ファイナルとドライバのみ、その他は半導体で構成され、MosFET、DBM、DBM-ICが多用されています(最新技術の採用ではあります)
増幅型AGC/ALCの採用など、真空管時代の技術を半導体化して活かしています
ファイナルは、シングル・・・6KD6 1本に700Vをかけて250WPEP入力を得ています
マーカーは、25KHz単位のものを内臓
シャーシ上面です
終段部のシールドケースは取り外して写しています
シャーシ裏面です
左上のファイナル部の下に、ドライバーがレイアウトされています
珍しい?レイアウトのドライバ 12BY7Aです
放熱フィンを巻いたうえでシールドがかぶせてあります
ファイナル部
6KD6 シングル  横向きです
プレート給電のパラ止めがいわば、上から終段管を支えています!
冷却ファンはオプション設定です
右ソケットは、6KD6
手前のVCは、RF同調、ドライブ調整
2連+シングル
シングル側は、送信ドライバプレート同調用
ステーター側は、ちゃんとアースから浮かせてあります
終段の中和バランスが狂う原因にならないよう、きちんと対応されています
ローコスト化 & 小型化
フィルタの乗っているジェネレータ部、VFO/Pri-Mix/Audio部、Pre-Selector部と3枚の基板で構成されています(都合、基板は3枚)
ご覧のように、VFOもその1枚の基板(VFO/Pri-Mix/Audio部)の中の一部です
シールドもなく、安定度には問題あり!です
ダイヤルメカも、バーニア機構併用でメインダイヤル1回転でおおよそ25KHzとなっていますが、バックラッシュが気になります
ダイヤルスピンナー部の位置によっては、勝手に?ダイヤルが動きます(修正を試みました!)
さすが老舗の無線機屋さんと思えるシールドへの配慮
終段カバーや、ケースのビス部はきっちり相手に接触するよう処置されています(シールド対策)
ドライバー管の放熱フィンの採用、絶縁シャフトの採用、中和への配慮、増幅型ALCの採用など、高周波屋さんのノウハウは活かされています
このように筐体が開けられるようになっているのですが、支点となる部分が壊れているというか、部品が取り付いていなかったので、有り合わせのもので応急処置しました
とりあえず機能します!
一般的?なバンド情報が逆・・・右から左に周波数帯が上がっていく、ちょっと面喰います
ここに内臓スピーカーが取り付いています
マイクロホン、ヘッドホンの接続もこの左サイドパネル
本体を、左ハンドル車助手席側のアンダーコンソールに取り付けるとすれば、こういうレイアウトになりますね
きわめてシンプルなリアパネル
DC−DCのパワートランジスタが目につきます
右から、ヒューズホルダ、冷却ファン接続ジャック、アース端子、電鍵(キー)端子、リニアアンプ・スタンバイ端子、アンテナ接続端子
抑えるところは抑えてあるように思いますが、ローコスト化を一番に目指した製品に見受けられます
シンプルで安価なことは良いことですが、それだけでは趣味の世界にあっては、多くのニーズは掴めない、そんなギアに見えます

受信に関しては、全バンド スペックをクリアします
0.2〜0.3μV 信号ON/OFFで、S/N10db以上が得られます
聴感上のS/Nも悪くありません(周波数ドリフトは気になる)
一方、送信は、現状でわずか数W程度しか得られません(TUNE、CW)
本機は、1750Hzのオーディオ信号を使う方式で、先に記したように、キャリア周波数が1KHz低くなっており、このことに起因した結果と想像します
受信も、LSBは聞くに堪えません
キャリヤ発振回路を工夫するか、新たにクリスタルを入手するか、宿題が残りました

その後
キャリア用クリスタルについては、部品取り用に置いていた、FT-200があることを思い出し、クリスタルを抜き取り入れ替え(交換)したところ、正常な周波数に調整できました
これで受信はOKとなりましたが、送信については確かに得られるパワーは増えはしたのですが、10〜20W程度しか出ません
SSBにあっては、MIC入力ではVOXも働きませんしパワーも出ません
調べるとMIC入力ヘッドアンプFETがNGでしたので、手持ちのものと交換することで、VOX動作はOKとなり、少ないながらも送信パワーは出るようになりましたが、やはりパワーの不足は解決しません
SSGで、9MHz 0dbの信号を発生させてIF出力の代わりに入力・・・20W位の出力ということは、ここから先のRF部にパワーが出ない原因が・・・単純に終段管がNGかも・・・

未点検のFTDX401があることを思い出して、6KD6を拝借してテストすると、むしろこのDX401に入っていたほうが劣化が著しいことが分かりました(それにしても重たい!)
再度点検を開始
プリMix出力も問題はなさそうです
よく調べるとバンド切替SW、それもリレーが取り付いていて陰になっている部分に不具合を発見
リレー取付金具はリベット止めのため、ソケット部分の取り外しができず、修正作業のやりずらいこと
この後、慎重にRF周りの調整を行ったところ
28MHz帯で60W前後
3.5〜21MHz帯で70W以上・・・7MHz帯は、ほぼ100W
という結果に落ち着いたので、本機の取り組みを終了としました
2024.05  JA4FUQ

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