Heathkit  HW-8
1976年から1983年にかけて販売された、3.5〜21MHz帯 CW QRPトランシーバです
もちろんキットとして発売されたものです
235mm x 108mm x 216mm 約1.8Kgと、非常にコンパクトなマシンです
電源は内蔵せず、外部DC12Vで使用します
受信機の構成に大きな特徴があります
いわばダイレクトコンバージョン・・・いきなり検波・・・最近のSDR方式と同じような考え・・・こちらは、アナログ版です
8MHz台のVFOとクリスタル・ローカル・オシレータのプリミックスで、いきなり目的の周波数を用意して、BFOとして目的受信信号をプロダクト検波します
アンテナとの間には、RFアンプが1段入っているだけです
検波してオーディオ信号になった信号は、AFのアクティブ・フィルターを通します
ここで、2段の選択度・・・WIDE:750HzとNARROW:375Hzの切替を行うことができます
あとはAFアンプが控えるだけです
AGC回路はありません、感度調整はプロダクト検波回路の入力に単純なボリュームが用意されているだけです(RF−GAIN)
本機は、スピーカー使用を目的とせずハイ・インピーダンスのヘッドホンの使用を標準としてあります
実際の運用スタイルと、消費電力の点からこのような設計になっているものと推察されます
送信は、入力が3.5(3.5MHz帯)W〜2.5W(21MHz帯)となっています
送受同一周波数ではビートとして聞くことができませんから、送信時にシフトするように設計してあります

メインダイヤル、メーター部のアップです
メーター動作は、表示にある通り、送信時のRF出力のみ
ローディング調整のためのもの

メインダイヤルは、1回転おおよそ100KHzです

PLは、青のLEDに交換しています
周波数表示部は、裏に丸穴が開いたシャーシの向こうからの照明です
極めてシンプルなリアパネル
電源コネクタ
本来は6Pですが、手持ちの2Pに交換
下段のコネクタは、右から
・アンテナ接続用RCA
・電鍵(キー)接続用φ6
・ヘッドホン接続用φ6 
上ケースを外して写したもの
フロントパネル右のVCは、送信ロード調整用
同左のVCは、受信RF部の同調用(プリセレクタ)
中央のVCが、250KHzをカバーするVFO用です
フロントパネル裏のアップです
VC周り、PL周りの様子が分かります 
タイト・トリマは、各バンド同調用です
右は、送信ファイナル
左は、受信プリセレクタ
中央のシールドされているコイルは、VFO発振コイルです
PLの取り付けは、φ1くらいのワイヤで直接つかむ、極めてシンプルな構造がとられています
リアパネル側のアップ
クリスタルは、バンド変換用
その右はOSCコイル
下の4つのコイルは、プリミックス出力同調
右端の小基板は、低周波AMP部
上に、元々取り付いていたPLが写っています
低周波AMP基板です
メイン基板とは、別に用意されています
下ケースを外して写したもの
メイン基板は、1枚です

しばらく使用されていないもののようで、調整点は送受ともズレがありました

受信に関しては、S/N重視で調整しました
得られたスペックです (実測)   3.5MHz帯  7MHz帯  14MHz帯  21MHz帯 
受信感度  SSG 出力ON/OFFで
S/N10dbが得られる信号強度
 WIDE
 NARROW
 0.6μV
 0.4μV
0.7μV
0.4μV
 0.8μV
 0.4μV
 1.0μV
 0.6μV
送信出力  50Ω負荷 DC12.0V    1.8W  1.7W  1.3W  1.1W
             
消費電力 受信時約80mA  PLをLEDに交換して約20mA低減
送信時 0.45〜0.5A最大

100%アナログ設計のトランシーバです
使用目的に合わせて、よくできた製品だと思います。
Sメータ回路の追加(オリジナルは、送信調整/ロード調整目的に振れるだけ)、スピーカーを鳴らすアンプの追加、マーカー発振器の追加ほか、改造記事もたくさん出回っていて、自分好みにカスタマイズできるなど極めてアマチュアライクなトランシーバだと改めて思います

WB8VGEによる The HW-8 Handbook という修理・改造をまとめた106ページにもなる「本」も出されています(webにpdfがあります)

基本的に、本機と同様の方式を採用したトランシーバーとして、上位というか固定局向けにも通用するものとして、TenTec Century Model 579 があります
興味のある方は、こちらもお目通し下さい

2024.09.29 
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