ゾーニングを目的に=鳥獣害対策ロボット=
2024年7月10日より11月17日まで、130日間の記録です
実戦配備(実証実験) 
北海道上川郡下川町にある毎年エゾシカの食害が発生するという園地そば、侵入経路となっているであろう場所の一部をお借りし、実証実験をスタートしました(2024.07)
降雪の始まる11月までの稼働予定で、ソーラー・パネルを使った独立電源で稼働させます

本来の「獣害対策ロボット」(威嚇手段を持つ)の形で、実際に被害のある園地の傍に設置
森から出て、この場所を通って園地に・・・エゾシカによる食害パターンです
先に実施した、エゾシカのAI学習画像取得場所から、数百m離れた場所です

忌避具としては、使用にクレームのつかない(一般的な)以下の2種類を装着しています
・パラメトリック・スピーカーによる銃撃音
・グリーンLED投光器(やや強力な懐中電灯!)

これら忌避具は、学習による慣れにより効果の継続が難しいと言われているものなのですが、自分が狙われているということを、強く実感させる「追尾」を行うことで学習を防げるのではないか、すなわち効果継続の検証です
対象を検知・識別後、その動きを追尾し、画面中央で捕捉したら「威嚇」を行います

意外と懲りないエゾシカに対して、どれだけ効果があるか、持続するか・・・
一般に、音や光などの刺激は、象徴的な脅威とはなり得ても、その後に実質的な脅威(痛みや死)を与えない限り、慣れてしまうのではないかと考えられています
自身が「狙われている」という認識が野生動物側にどう影響を及ぼすのか、その効果を明らかにできることを期待しての実験です
「正確な追尾が、慣れを防止する、という仮説」の証明が出来れば一歩前進です

設置場所の遠景です
左端に、園地を囲う電気柵の一部が見えてます

害獣の、森の側から園地への侵入を監視・撃退です
ヒグマの目撃情報もある場所です

ここでは、独立電源を採用
ソーラーパネルが大きく見えます
300Wパネルを2枚採用
効率が悪いのを承知で、DC-ACインバータでAC100Vに昇圧して稼働させています(スリップ・リングの都合)

季節が進むにつれ日照時間が短くなってきています
同時に、お天気の良くない日が増えています
夏場に比べ深夜の出没が少なく、早い時間帯での出没が増えているので、深夜に停電するまで、ある程度見張りをしてくれそうです
予定では、11月18日ごろまでこのまま稼働させます
少なくとも初めて経験する個体には、効果はバッチリ、さて持続性は如何に!?
全て画像を使って処理する仕組みなので、忌避手段の効果検証については、威嚇後の様子を監視することで、容易に評価できます(最も評価に適した仕組みかと!)
忌避手段の良し悪し、あるいは害獣の学習能力の程度は、すぐに分かるはず!?
以下、簡単にではありますが、日ごとの様子をレポートします

24.07.10    設置初日    〜24時  検知・識別なし
    2日目深夜   1回検知・識別  威嚇行為後、検知・識別なし
    3日目夜   3回検知・識別  少なくとも前日とは異なる個体(体形が違う)
1回目 威嚇行為後には、しばらく検知・識別なし
それから約3時間後
2回目・3回目の識別・検知は、インターバル7分で同じ個体かも
3回目は、森との境、遠目で様子を見ているところを威嚇
以降、検知・識別なし
    4日目夜   2回検知・識別 7分インターバルで もちろん威嚇を実施
体形が異なるように見えますが、もしかしたら同一個体かも
このあとに、検知・識別なし
    5日目夜   1回 森から出てきたタイミングで検知・識別
この威嚇行為後は、検知・識別なし
   
YouTube上に限定公開です
探索映像から対象(害獣)を識別し、動きを追尾
画面中央に捕らえたときに忌避行為を実行します
今回の忌避行為の実証は、パラメトリック・スピーカー(超指向性スピーカー)を使った銃撃音です
追尾する目的は、自身が狙われていると意識させることで、忌避手段に慣れることのないようにするためです
この場所にあっては、設置2週間経過後以降は、当分の間出没はありません
    ここまでの映像の録画を確認したところ、親子2頭で、あるいは仲間と2頭で現れたケースがありました
忌避行為の効果ですが、気持ちがいいくらい?反応してくれる(跳ね飛んで逃げる)個体と、動ぜずにその場に立ってじっとしている個体があります
立ち止まっている個体ですが、まったく気にしていないかと言えばそうではなく、どちらかと言えばフリーズ状態で、お食事を止めじっと動かず、こちら(装置のほう)を見て様子をうかがっているように見えます
時間はかかりますが (1〜2分)、居心地は決して良くないのでしょう、結果としてその場を離れます
仲間と2頭・・・最初の威嚇でさっと逃げた個体が戻ってきた例がありましたが、再び狙いを定めて威嚇すると、最初同様に気持ちよく逃げていきました
もう1頭は、じっと動かず状態の個体で、約2分後に退場でした
忌避行為に対する反応については、個体差は大きそうです
その後、いずれの個体も、この場に戻ってきてはいません
また、この日は、風が強かったようです(葉っぱが舞っていました)
銃撃音には影響があったかもしれません
    6日目夜   この日は丸1日、検知・識別は「0」でした
もしかしたら、この場を避けて出没場所を変えたかも・・・
24.07.17   7日目夜   この日も丸1日、検知・識別は「0」でした
    8日目夜   深夜に一度、検知・識別がありました 親子1組です
威嚇後、検知・識別はありません
    9日目夜   深夜に一度、森との堺部で検知・識別がありました
その後、検知・識別はありません
    10日目   この日は丸1日、検知・識別は「0」でした
         装置はチャンと動作しています(遠隔モニタをしています)
    14日目   この日も、検知・識別は一度もありません
    15日目   現地で目撃情報がありました
日中ですが、装置に近づいて、恐る恐る様子を見ながら通り抜けたエゾシカがいたようです
近隣でヒグマの目撃情報はないそうで、ヒグマが原因で出てこないという仮説は外れです(以前の映像撮影場所では、ヒグマが近隣で目撃されたというときには出てこなかったという経験したことがあります)
本装置では、通過したエゾシカの捕捉はできておりません
常に旋回して対象を探しているので(高速ではありません・・・検知チェックをして次の方向へ、の繰り返し)見落とした・・・ようです
この点は、固定カメラに優位性があります(が、追尾は難しい)
もしかしたらですが、自分が狙われないタイミングを計って通過したのかも!?(じっと観察して学習したかも)
この日も、検知・識別は一度もありませんでした
少なくとも、この監視場所での草食はない、です
    16日目   検知・識別は一度もありません
     
    18日目   検知・識別は一度もありません
    19日目   1頭の検知・識別、撃退 その後検知なし(02時30分頃)
    20日目   検知・識別は一度もありません
24.07.31   21日目   1頭の検知・識別、撃退 その後検知なし(02時30分頃)
       
    23日目   検知・識別は一度もありません
    24日目   1頭の検知・識別、撃退 その後検知なし(02時30分頃)
       
    26日目   検知・識別は一度もありません
    27日目   いずれも森との境に、0時から3時の間に3組4頭の出没あり
1.約5分滞在
2.短時間滞在
3.約10分滞在
    28日目   検知・識別は一度もありません
    29日目   朝6時 白い斑点のある子ども1頭が出現、威嚇後すぐ退散
24.08.30   30日目   検知・識別は一度もありません
       
24.09.10   62日目   検知・識別は一度もありません、装置はちゃんと稼働してます  9.10
    63日目  
久々の検知です  9.11
どうやら、この場所を通過した模様
体が半分隠れるくらい、雑草が大きくなっています
検知威嚇後に、再登場はありません
    64日目   検知・識別は一度もありません   9.12
    65日目   森と境に1頭出没    9.13
装置の様子(稼働しているかどうか?)を確認に来た?
検知威嚇後に、再登場はありません
    66日目   検知識別は一度もありません  9.14
     
    71日目   検知識別は一度もありません  9.19
    72日目   早朝、明るくなって電気柵の近くで、若そうな1頭を検知・威嚇  9.20
    73日目   検知識別は一度もありません  9.21
       
    75日目   検知識別は一度もありません  9.23
    76日目   夜中に1頭を検知、威嚇  体の半分以上が、植物に隠れる状態でした  9.24
    77日目   夜中に1頭を検知、威嚇  体の半分以上が、植物に隠れる状態でした  9.25
    78日目   検知識別は一度もありません  9.26
     
    81日目   検知識別は一度もありません  9.29
    82日目   夜中に2回・・・30分間隔で2回の検知識別あり、その後はなし  9.30
    83日目   夜中に1頭を検知、威嚇 1回のみです  10.01
    84日目   検知識別は一度もありません  10.02
       
    86日目   検知識別は一度もありません  10.04
    87日目  
10.05
深夜、1.5時間くらいあけて2頭と3頭を検知 
この場所は、今でも緑の葉っぱが茂っていますから、彼らに魅力があるのかも

左下には、本ロボットの影が見えています
10.06早朝の現地映像
    88日目   検知識別は一度もありません  10.06
    89日目   夜中に1頭を検知、威嚇 1回のみです  10.07
    90日目   夜中に1頭を検知、威嚇 1回のみです 体が半分隠れるくらいの植物の中に  10.08
    91日目   検知識別は一度もありません  10.09
24.10.10   92日目   夜中に1頭を検知、威嚇 1回のみです 体が半分隠れるくらいの植物の中に  10.10
    93日目   深夜に2時間程度時間を空けて3回、それも2回ずつ検知、うち1回は2頭です
在所時間は10分程度と思われ、2頭の内の1頭は一度の威嚇でいなくなっています
餌場として、この場所の魅力が向上してきたのかな? 青々してます   10.11
    94日目   この日も、時間を空けて3回出没 内2頭の時が1回  10.12
    95日目   時間を空けて3回出没 いずれも1頭のみで、威嚇で退散  10.13
    96日目   検知識別は一度もありません  10.14
    97日目   夜中に1回、1頭出没、威嚇で退散  10.15
    98日目   夜中に3回、内1回は2頭出没、威嚇で短時間で退散  10.16
    98日目   夜中に1回、1頭出没、威嚇で退散  10.17
    99日目  
今回、初めてオスジカがメスジカ2頭を連れてきた様子が確認できました
この数時間前にメスジカだけ15分程度在所、その間威嚇をしています
オスジカは、やはり警戒心がより強いようで一発で退散です
その後、検知はありません
    10.18
    100日目   夜中に3回(2回は同じ固体に見えます)最大15分程度在所、いずれもメスジカ
赤外線投光器の届く先を移動している様子がなんとなく分かります(様子を学習しているように見受けられます))
また一発で退散する個体と15分くらい滞在する個体に分かれているように見えます 10.19
24.10.20   101日目   検知識別は一度もありません
現地は、そろそろ雪の季節で、装置撤収の段取りを進めます  10.20
    102日目   夜中に2回出没、いずれもメスジカ 威嚇で退散  10.21
    103日目   深夜にメスジカが1頭、1回の威嚇で退散
現時点では、ガードしている畑の食害は出ていないそうですが、この先周囲の植物が無くなるとどうなる?例年は11月の食害がひどいそうです   10.22
    104日目   夜間に3回出没あり いずれも赤外線投光器の届くぎりぎりに近い場所
銃撃音による威嚇も、音量は小さいと思われる場所・・・最大でも10数分の滞在
日照時間が短くなり、発電が追い付かなくなる時期の到来です
11月中旬をめどに、積雪の前に撤去・回収です   10.23
    105日目   日照時間が短くなったようで(お天気も終日雨模様)、本格的な電断が生じだしました
夜間、現地の状況が得られなくなりました
翌午前中には電源回復しましたが、夜間の監視は困難な状況にも    10.24
    106日目   午前中、停電状態でしたが、午後から回復しました
多分、夜は停止です
電源事情の悪い運用にあっては、稼働時間が制限できる仕組みもあって良さそうです 10.25
    107日目   お天気が回復したようで、お昼12時ごろから稼働開始
翌朝まで停電することなく稼働、この間、出没はありません
今日も、お天気は良さそうで、夜間停電の心配はなさそうです   10.26
    108日目   電源は切れることなく稼働しています
2頭現れました、この2頭はどうも常連?に見えます(威嚇に、たいして驚かない個体)
が、電気柵の中(圃場)までの侵入はありません(滞在20分くらい)
赤外線投光器の光の届く先の外から、警戒してカメラ目線をしているエゾシカもいます(同じ固体かもしれません)
オスジカは、一度きりでその後は現れません、警戒心が強いと考えられます  10.27
    109日目   深夜に電源が切れました
翌日は、昼前から復旧です
昨晩の稼働時間中には、検知・識別はありませんでした  10.28
     
24.10.31   112日目   深夜から朝のうち電源が切れました、翌日昼前から復旧です
ここにきて出没の多い夕刻の監視はできています
昨晩の稼働時間中には、検知・識別はありませんでした  10.31
    113日目   夕刻と深夜に2回出没あり
滞在は、夕刻5分程度 深夜は1回の威嚇で退散
現れるのはすべてメスのエゾシカで、子どもを守るという一番の行動がDNAに書かれているのか、威嚇してもすぐにその場を離れない個体がそこそこいるようです
すぐにその場を逃げ去るのは、子どもかもしれません(やや小柄な感じを受ける)
深夜遅くから翌午前中にかけては停電   11.01
    114日目   日没後早々に停電
その後も雨が続いているようで、翌日はお昼になっても復旧しません
従って、夜間の監視はできていません 電気無ければ、ただの○○状態
天候の回復が待たれます  11.02
    115日目   天候が回復したようで、午前10時ごろから稼働開始
悪天候により電源が確保できず、前夜の監視はできませんでした
今回用意した独立電源では10月いっぱいの稼働が精一杯かと、当初想定した通りの結果になっています
天候が回復すれば、18〜20時(今の時期、この時間帯の出没が多そう)にかけて出没する相手に対しては監視が可能と思われます
このまま、11月18日まで稼働させる予定です   11.03
    116日目  
2回目のオスジカ検出
1回の威嚇により、この場から退散しています
この日、装置は24時間稼働できたようです 
17〜04時までの間に4回検出 20時ごろ現れたのがオスジカです
いずれのケースも、威嚇により短時間でこの場から退散しています
この時期、緑が貴重になっていそうです(この場所は、まだ青々としているところが多く残っている)
例年、根雪になる前の11月末にかけて、畑の被害がひどくなるというお話でしたが、今のところ被害はないそうです 
またお天気が崩れそうです  11.04
    117日目   天候不順にて、まったく装置が起動せず
監視を丸1日、行うことができませんでした  11.05
    118日目   一昨日からずっと停電・・・お昼を過ぎてやっと起動 この間は監視できていません
午後を過ぎてから監視スタート 18時過ぎに一度検知 威嚇で退散
21時を過ぎても監視/稼働しています(半日で、ある程度充電ができた)   11.06
    119日目   深夜に2回検知、威嚇 数分の間に同じ固体のようです
2回目の検知時は、赤外線投光器の光の届く少し先からカメラ目線です
朝は、起動していません お天気があまりよくないようです  11.07
    120日目   お天気が回復していないようで、1日稼働していません   11.08
    121日目   お天気が回復したようで、午後からは装置が稼働しています
この場所には、まだ緑が残っています
今日は、少なくとも早い時間帯の夜の監視はできそうです  11.09
    122日目   夜早い時間帯は稼働 深夜停電 翌朝10時前か稼働開始
この稼働時間中には、検知・識別はありません  11.10
    123日目   昨日からお天気が回復したようで、継続して監視が続いています
この間には、野生の検知・識別はありません  11.11
    124日目   継続して稼働中で、夜間一度検知 赤外線投光ギリ先の森のはずれから、カメラ目線
監視エリアへの侵入はなかったようです   11.12
    125日目   天候の悪化により停電しました
通電中の検知・識別通報はありませんでした   11.13
    126日目   積もった雪が残っていますが、お昼前から稼働しています
夕方4時は、もう薄暗いです
稼働中に検知・識別通報はありません  11.14
    127日目   稼働が継続していますが、検知・識別通報はありません
これからお天気が崩れそうです
来週撤去です  11.15
    128日目   まだ緑が残っています
昨夕から早朝までは停電状態 その後朝から稼働を開始しています
稼働時間中の検知・識別通報はありません
現地稼働、残り数日です  11.16
    129日目   昨晩から午前中まで稼働していました
昨晩、1頭の出没・・・森の出口で検知・識別威嚇を行っています
1回の威嚇で退散のようです
午後からは、動作が停止しています  11.17
    130日目   降雪が続いているようです
システムは停止したまま、通電していないようです
あす撤去予定です  11.18
24.11.20       撤収
    実証実験=終了=                  まとめ 2024.11.20

1. 「正確な追尾による忌避手段の実行が、慣れを防止する」という仮説の実証
2. 本ロボットによる忌避手段の実施は、2週間で事足りる
今回の実証実験で、以上2つの実証ができたように思われます
2.については、その場にどれだけ対象の野生動物の執着があるかにもよりそうで、あくまでも今回選択した場所でエゾシカを対象にした、という条件が付くかもしれません(毎年食害が発生している場所)
採用にクレームの入らない一般に使用される威嚇手段の範囲で、継続した忌避効果が期待できそうです
複数の獣道を移設しながら運用する、エリアを守るという、本ロボットの効率の良い運用の道も開けそうです  

棲み分け
威嚇に反応して、すぐにその場から逃げ去る警戒心の強い個体と、じっとして動かない個体がいます
被害からすれば、じっとしている警戒心の弱い、あるいは時間をかけて様子を見ている個体が主な犯人になるかと想像されます(捕食もせずじっとしているので、食害には通じないかも?)
じっとして動かない・・・銃を向けるには好都合です
個体を減らす方策としては、猟友会の方と一緒に対応するのも、ひとつの策かと思われます
人の営みに平気で近づく個体を駆除、です
こうすることで、ゾーニングがより早く確立されるものと考えます

結論   一般に効果が継続しないといわれる忌避手段であっても、一定の成果が得られた(毎年発生する食害から守ろうと、今回設定した圃場では、食害は発生しなかった)

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