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 <第5回海外探鳥ツアー 2003年>
カリフォルニア探鳥旅行日記
北川宣子


 2003・5・27(火) サンフランシスコ → カーメル
 8:40 SF国際空港着。サマータイムなので時差は16時間。ということは、ただいま体内時計は夜中の0時40分。長い1日の始まり。
 ガイドのブライアン・シャーリーと出会う。アメリカ人にしては小柄。目線が近くて話しやすい。早速バートで、レンタカーのところまで移動。荷物を積み込んで、海岸線に沿って、R1号を南下する。
 都市近郊では花卉栽培農家が多く見られたが、南下するに従い、苺、アーティチョーク、西瓜やメロン等の畑が広がっていく。メキシコ系らしい労働者の姿が目に付く。
 San Gregorio Statebeach及びScottクリークで水鳥の観察。アカオタテガモ、カワアイサ、アメリカソリハシセイタカシギ、カッショクペリカン等。
 
(アメリカソリハシセイタカシギ)

  車中より、牧草地でハイイロチュウヒの雄、雌がコヨーテを追うのを見る。営巣している模様。
 Carmel River Innにチェックイン。カーメル市入口、近くにはシヨッピングセンターがあり便利。広い森のような敷地内には、花が咲き乱れる庭付きのコテージが散在。皆違う庭、作りになっていて、おとぎ話の世界にいるようだ。私たちが泊まったのは、クローク、プールの付いた2階建のメイン館。こちらも、ハンギングの花でいっぱい。ベランダから椅子にかけたままで、アンナハチドリが見ることができる。
 早速敷地内で探鳥。ナゲキバトのもの悲しい声、ウタスズメの楽しげな囀り。ミドリツバメ、スミレミドリツバメの鮮やかな蛍光色の緑や紫には目を奪われる。カンムリウズラもトコトコ歩いている。とにかく、いるわいるわでどちらを向いても鳥が目に入る。双眼鏡で十分なくらい身近で、全員が確認できる。鳥が逃げないので、あきれる程観察できる。こんな経験は初めてだ。あっという間に、20種確認という状態。
(カンムリウズラ)

 夕刻迫り、市街地へ夕食をとりに出かける。ブランチを早めにとっていたので6時頃レストランで食事。7時頃宿に帰ると、上空を大型の鳥が3羽通過。双眼鏡を覗くと、なんとメンフクロウではないか。日没の遅いこの季節、と気を取り直し、再度一巡り。8時鳥合わせ、初日51種の大成果。


 2003・5・28(水) カーメル
 6時起床。レストランの開く7時までが早朝探鳥。宿の森の散策。アンナハチドリは早朝から活動開始。鳥の声に樹上ばかり見上げていると、足元に突然水がかかってびっくりする。美しい庭を維持するために、あちこちにスブリンクラーが、埋設されていたのだ。
 スーパーでミネラルwaterやsoft drinkを仕入れ、Point Lobosへ。ゲートを抜け、林道をしばらく走ると突然目の前が開ける。そこは太平洋。地球が丸いのが実感できる。今日は穏やかな表情だが、激しく波が打ち寄せる日も多いのだろう。沖合には奇岩の島が点在する。その岩の大地では、アオノドヒメウ、アメリカオオセグロカモメが抱卵している様が見えた。波打ち際ではゴマフアザラシがのんびりと授乳しながら、まどろんでいる。ジャイアントケルプの林を目をこらしてみるとラッコの姿も確認できる。この深い群青の海は、遠い北極から冷たい海流が注ぎこんでいるのだ。
(ポイント・ロボスの風景)

 断崖に沿って、トレイルが続く。道沿いには、野の花が途切れることなく咲いている。ナスタチューム、カリフォルニアポピー、ルピナス、ジキタリス、ゴテチヤ等日本では園芸種の花々が、ここでは野生の花として力強く、色濃く咲き誇っている。花好きにはたまらない。ベンチに腰をおろすと、リスやジリス、アメリカカケスが近寄ってくる。クッキーのカケラをねらっているようだ。いけないこととは思いつつ、せんべいを投げると、ジリスが上手に両手で持ってカリカリと食べていた。野生のberryの茂みには、鳥が群れをなしていた。終日過ごしたい場所だ。時間が限られる旅が悲しい。
 昼はピザで済ます。両腕で抱えるほどの大きさ。8人で2枚のピザに大苦戦。半分でgive up。
  午後はカーメルバレーのJack Peakへ。トレイルの途中で森林パトロールの若い女性に出会う。ハーイと声をかけてくれた彼女の腰には、銃身の長い拳銃。ここはアメリカと急に意識した瞬間だった。ここでは昨日見かけなかったキツツキ類を一気に4種みる。美しい冠羽を持つ深青色のステラーカケスにもやっと会えた。
(ステラーカケス)

 16時から2時間、カーメルの街で思い思いの時間を過ごす。おしゃれなギャラリーやお店が多い。かのクリント・イーストウッドが市長を務めたことでも有名な街だ。建造物は3階までと規制があるので、低い建物が多く街全体から受ける圧迫感がない。緑や花が多い街でもある。家々にはかならず前庭を設けている。年中温暖なせいか、春の桜と夏のアガパンサスが同時に咲いている庭もあった。
 夜は夕日をカーメルビーチで眺める予定だったが、曇ってきたので夕食を先にしつつ様子をうかがうことにした。ステーキハウスで本場のステーキを賞味。山田さんが醤油を頼んでくれ、一層食がすすむ。結局雲は晴れず、宿に帰り鳥合わせ。今日の成果は53種。


 2003・5・29(木) カーメル → サンフランシスコ 
 6時起床。カーメルリバー河口に出かける予定。部屋を一歩出ると、まるで小雨のような霧。昨日までの抜けるような青空が嘘のよう。雨の少ない地域だが、この霧が深い森を育み、緑を養っているのだろう。高い木々は苔や,海草のような植物を幹に纏っている。霧の水分を逃さない工夫のように思った。深い霧に邪魔をされ、鳥はカナダガン程度。
 Innをチェックアウト。今度は来た道を逆に、北上する。途中Elkhorn Slough National Estuarine Research Reserveで探鳥。海水が内陸に小さな湖を形成している。湖岸はトレイルになっている。ラッコが悠々と背泳している。レンジャーの話だと、去年は2匹の子育てをしたそうだ。
 園内には農家の納屋が再現され、その中の巣箱ではメンフクロウが抱卵中らしい。周辺を探すが、姿が見られず残念。が、ドングリキツツキはせっせっとドングリを穴に詰めたり、移し替えたりの作業をみせてくれた。
(ドングリキツツキ)

アメリカヤマセミの姿も観察。ビジターセンター前の芝生で、朝買ってきたサンドイッチや果物で、ピクニックランチ。早速、ミヤマシトド、アメリカカケスがおこぼれを狙ってウロウロ。なんとも賛沢な気分のランチとなった。

 Point Lobosと同様にここでも子供たちの野外学習が行われていた。子供たちはノートを手に、ボランティアのレンジャーの後を楽しそうに付いていく。授業の一環にこうした自然観察が根付いているようだ。
  さらにR1号を北上。SF Bay National Wildlife Refugeで、オニアジサシ、メリケンアジサシ、アメリカソリハシセイタカシギ等を観察。
  夕刻、Cow Hollow Motor Inn到着。着替えてバスでチャイナタウンに繰り出す。海鮮中華に舌鼓。ユタ州在住のブライアンは久々の海の幸だそうだ。皆満足。そして安い。これも嬉しい。夜、鳥合わせ。60種。


 2003・5・30(金) サンフランシスコ
 6時起床。マリーナまで散策。家並は素晴らしい。各戸に個性があるのに、通りを見渡すと、ちゃんと均整のとれた統一感がある。家々には花があふれ、窓辺には道行く人を楽しませる工夫がこらしてある。
 今日訪れた、Muir Wood National Monumentは高さ150mにも成長するというred woodの森。湿った苔や羊歯が地表を覆い、風格すら感じる巨木で構成される静寂の森だ。だが1歩足を踏み入れると、そこは生物を育む母の森でもあった。1000年前の森林火災の後、焼け落ちた木のヒコバエが育ったというfamily treesを見る。まるで亡くなった母を悼むように何本かのred woodがサークル状に聳えている。
(レッド・ウッドの巨木 撮影:三木国弘さん)

 早々に切り上げ、Point Reyesへ。Point ReyesNational Seashoreは、広大な台地に広がる牧草地の中を道路が走り、海岸線沿いの崖にいくつかのview pointがある。pointからスコープで海上を見つめる。アラナミキンクロ、ウミガラス、ウミバト等。
 道沿いの森にアメリカワシミミズクをブライアンが発見。急停車、車から降りて、ミミズクは飛び去ったかと皆躍起になって双眼鏡で探す。やっと見つける。近くの木にとまっていた。が、すぐに大きく羽ばたき森の奥へ。スコープで合わせると手前の枝が邪魔をするものの、悠々と羽づくろいをする様が観察できた。丁寧に右、左と羽を広げ、嘴で梳いていた。牧草地が広がっているので、カタグロトビ、ハイイロチュウヒ、アカオノスリ、ヒメコンドル等、数多く確認。カンムリウズラも再度お目見え。間近で観察できた。
 
(ヒメコンドル)

 夜、SausalitoでSeafood Restaurant コマスヘ行く。最後の夜、カリフォルニアワインのロゼで、今回の探鳥旅行の成功を祝って乾杯。
 7人と参加者は少なかったが、ブライアンという優秀なガイドの助けもあって、成果は著しいものがあった。夜、鳥合わせ。48種。全行程で93種。ほとんどの鳥の姿を全員が確認できた。鳴き声だけというのは、今回は1種もない。また鳥の数の多さにも注目すべき探鳥地だ。夢の様な4日問だった。
 しかし、である。ユタ州在住のブライアシは、ユタならもっと鳥の種類も数も期待できると言う。アメリカソリハシセイタカシギなど、3000羽の群だというのだ。皆、頭を抱えてしまった。本当だろうか?彼は誠実で、嘘を言うわけがない。となると、来年はユタ州まで彼についていって、鳥の楽園の確認にいくしかないかな? 


(Elkhorn Slough のビジター センター前にて)

(鳥の写真は山田泰照さん撮影でした。)
(野鳥おかやま 2003年7月号から転載)

参考資料編


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