第8回海外探鳥旅行
マレーシア探鳥記
北川 温之
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支部恒例の平成18年度海外探鳥旅行は泊6日でマレー半島の西マレーシア。目的地は山間部のフレイザーヒルと最古の熱帯雨林が残るタマンネガラ国立公園の2カ所だった。
参加者は総勢11名(うち岡山から10名、神奈川から1名)。
1月22日 岡山→関空→クアラルンプール(以下KL)→フレイザーヒル

早朝6:30岡山駅集合。
まだ夜の明けきらぬ真冬の寒さを感じるよりも、旅への期待に胸が躍る。

関空発11:30am マレーシア航空53便にて一路KLへ。
所要時間は約7時間、KL着は17:25
日本との時差は一時間だ。

空港で今回の野鳥ガイドMr. Chin Hockさんの出迎えを受け、フレーザーヒルに向け出発。
KL空港からは約150km、車で3時間半といったところ。

KL市外は3車線ずつの高速道路。
両側の道沿いは建築ラッシュ。経済発展の勢いを感じる。
1時間半ほどで、ラワンの町に到着。ここで、南国らしく、戸外のテーブルで夕食をとる。
夕食を待つ (渡辺裕幸) Fraser Hill の案内板 (渡辺裕幸)
郊外に出、山道に差し掛かると九十九折の急カーブの連続だ。
車に弱い人には酔い止めがいるかもしれない。
行き交う車も1時間半の間に3台のみ。
人工物のない、自然へと分け入る。
フレーザーヒルは海抜1,524m。
通年1418度と過ごし易い。
KLからは日帰りのリゾートとして人気が高い。
270種の野鳥が観察されており、毎年、3人一組で24時間に何種類確認出来るかを競争するバードレースが行われる。ちなみに、2005年は6月11, 12日に実施され、約100種類が確認されたそうだ。
ホテルに到着したのは、午後11時も回った頃。
今夜のホテルは、Shahzan Inn Frasers Hill
前日来の大雪で、濱さんは成田空港発が遅れ、KL空港よりタクシーをとばし、深夜にやっと合流した。

1月23日 フレーザーヒル
朝7時集合なので6時半にモーニングコールを頼んでいた。しかし、6時に礼拝時間を告げるアザーンの大音響に目が覚める。
マレーシアはイスラム教国であることが実感できた。
熱帯の国とはいえここは高地なので皆長袖シャツにジャケットやベスト姿で身支度をした。
7時より探鳥開始。外はまだ暗く、霧が立ち込めている。予定変更、先に朝食。
鳥を求めてホテルの裏山を歩くうちに霧が晴れてきた。晴れてきたら見渡す限りの緑の波だ。
人工物は何も見えない、空気が美味しい。
ホテル前で、ムナグロタイヨウチョウが盛んに花の蜜を吸っている。肩の鮮やかな赤が印象的な南国の鳥だ。
タテジマクモカリドリも長いクチバシで蜜を吸っていた。
ムナグロタイヨウチョウ(香西宏明) タテジマクモカリドリ(香西宏明)
歩みを進めると英国風の別荘らしき建物が見られる。
植民地時代の名残だろうか。

高い梢にヒメフクロウが止まっていた。 
小さいし、遠い。ホックさんが見つけなければ出会えなかったろう。
ガイドのホックさんは、鳥を見つけてプロミナーに入れるのが速いとは聞いていたが、想像以上の早業に唖然とする。

昼まで、各自、ホテル周辺で探鳥、
写真撮影など思い思いに過ごす。

ヒメフクロウ(香西宏明)
12時、時計台前にあるレストランにて昼食。
この町は石積みの時計台を中心にまわりにコロニアル風の古い建物が数軒あるのみだ。
フレイザーヒルの町(山田泰照) ホテル前の景色(香西宏明)
1時〜3時は午睡。こうした時間の過ごし方ができるのもパックツアーと違い、仲間との気ままツアーの良い点だろう。
3時から今度はホテル前方斜面を下って探鳥を試みる。
木の葉陰に何かがいる。眼を凝らすとアカハラコノハドリだ。
背は緑で葉の色なのだが、艶やかで美しい。全員夢中で見たり、撮影したり。
アカハラコノハドリ(香西宏明) ヒイロサンショウクイ(香西宏明)
さらに下って、ベニサンショウクイを見る。
小さな鳥だが、鮮やかな腹の赤が、緑の中で一際眼につく。

1945分鳥合わせ、41種。

20時夕食、バイキング。シーズンオフだろうか、ホテルの客は私たち以外は韓国人の4人のみ。


1月24日 フレーザーヒル→クアラテンペリング→タマンネガラ
8時フレーザーヒル出発。途中ラウブ渓谷で探鳥。カンムリワシ、ゴシキドリ、ノドアカゴシキドリ、アオミミゴシキドリ、キホオゴシキドリ、チャムネバンケンモドキなど多数。ゴシキドリの仲間は如何にも熱帯の鳥らしく、緑、赤、黄、青といった派手な色の化粧を頭部に施している。
カンムリワシ(香西宏明) キホオゴシキドリ(香西宏明)
チャムネバンケンモドキ(香西宏明) ガイド中のホックさん (渡辺裕幸)

ここで一番印象に残ったのは、クビワヒロハシだ。ピンクの腹、黄色の背に真っ白の首輪の17cmの鳥。カラフルで可愛い。

それにしても30m以上はあろうかという樹高の中間あたりに止まっている、こんな小さな鳥を見つけるものだと、ホックさんの鳥眼には畏れ入る。

車は山から降り、人家がチラホラあるやや広い道に出る。道路わきの露店でドリアンを試食。果物の王様と言われているが、ホックさん以外はさほど美味とは感じなかった模様。
これもよい体験だ。

クアラテンベリンに午後1時頃到着。
やっと昼食。

ドリアン

ここのトイレは有料だった。30セン(約10円)払う。

船着場から、2時発のボートに乗り、テンベリン川を遡ること約60km(所用時間3時間弱)で公園本部のあるクアラタハンに到着。

テンべリングの波止場(香西宏明) テンベリング川の航行(山田泰照)
今夜の宿はMutiara Taman Negara Resort
このホテルはコテージ形式でレストランは別棟にある。
部屋は木材を豊富に使ってあり、天井は高く扇風機がいかにも南国風だ。
クーラーも設置してあるし、バスタブはないもののシャワーも水洗トイレも完備している。
この地も、思ったほど暑くなく、クーラーを使用することもなく、虫除けの準備もしていったが、蚊もほとんどいなかった。
宿泊したコテージ外観(山田泰照) コテージ内部(山田泰照)
部屋に落ち着くなり、早速夕方の探鳥開始。
シキチョウが我々を歓迎するかのように美声を聞かせてくれた。
シキチョウ(香西宏明) 猿(名前不明)(山田泰照)

19時過ぎ、バイキング形式の夕食。メニューも豊富で美味しい。
客は欧米人が大半で、アジア系は我々以外見かけなかった。

20時半より鳥合わせ、33種。


1月25日 タマンネガラ
タマンネガラ国立公園はKLから見て東北に位置し、総面積は4,340平方km(ちなみに東京都は2,187平方km)という広大な先史以来の熱帯雨林である。
トレッキング、フィッシング、動物ウォッチング、もちろんバードウォッチングなど楽しむことが出来る。
朝7時〜9時ロッジ周辺で探鳥。
最初に見たのは、植え込みの陰から出てきた大きなコシアカキジの雄。
黒い体に真っ白な尾羽が映える。
続いて地味な茶色の雌も出て来た。
コシアカキジ(山田泰照) ルリコノハドリ(山田泰照)

樹上には、背が青く真っ赤な眼をしたルリコノハドリ、全身黄色のコウライウグイスなどを観察。

圧巻だったのはサイチョウだ。木の実を採餌しており十分に楽しませてくれた。
なにしろ122cmの巨体だ。かのオオワシでも88102cmなのだから如何に大きいか想像できよう。
尾羽が長い分、体はズングリしている。大きな嘴、それを支える大きな頭、迫力満点だった。
地上では、小さな瓜坊を7,8匹連れたイノシシがウロウロしていた。人を恐れる風もない。

コウライウグイス(香西宏明) サイチョウ(香西宏明)
9時、朝食。
11時より昨日乗ってきたのと同じような12人乗りボートで、テンべリン川を約20分遡り、キャノピー・ウォークウエイに挑戦する。
これは、熱帯雨林の樹冠を観察するために森の大木を吊り橋で結んだもので、全長は約400m、地上30mの世界を体験できる。
観察の余裕は・・・高所恐怖症の人にはお勧めできないが、今回の参加者は勇気ある人ばかりで落伍者はなく、十分楽しんだ模様(?)
吊り橋の途中、ミドリヒロハシを見る。一面の緑の森の中でも、この鳥は一際鮮やかな緑で目を楽しませてくれた。
キャノピーウォーク(北川温之) タマンネガラの熱帯雨林(香西宏明)
再びボートに乗り込み、さらに上流へ。

流れは速く、浅瀬にボートの腹をこすりながら、スリル満点の船旅だ。
船辺からは、今にも水が入ってきそうで、手を差し出すと川面に触れるほどだ。
両脇はジャングル、まるでインディ・ジョーンズの映画の世界だった。

再び上陸、高級リゾートの廃墟を探検(?)、
ここで渡って来たばかりのチゴモズと遭遇。疲れた体を休めるようにじぃーとしていた。

チゴモズ(山田泰照) 激 流(香西宏明)
ホテルに帰って昼食。
3時より、今度は小さなボート3隻に分乗してタハン川を遡った。今までの泥河と違い水が澄んでいる。
この川沿いでは、アオショウビン、ヤマショウビン、コウオクイワシなどを見る。
上陸後、モモグロヒメハヤブサ(16cm)、クロアカヒロハシを見る。
コウオクイワシ(香西宏明) モモグロヒメハヤブサ(山田泰照)

帰路は船のエンジンを止め、水の流れまかせに下る。
熱帯雨林に囲まれ、静かな中に水音、鳥とセミの声を聞くとまるで別世界。
コウハシショウビンが一瞬姿を見せ静けさが破れた。

ホテル着後、夕食。
後鳥合わせ、52種。

コウハシショウビン(山田泰照)

1月26日 タマンネガラ→KL→関空
7時から8時までホテル周辺で探鳥。
ヤイロチョウを見る予定だったが、残念。
尾羽がラケット状に長いカザリオウチョウ、大きな体のヤマミカドバト(47cm)を見る。
カザリオウチュウ(香西宏明) ヤマミカドバト(香西宏明)

9時ホテル発。
11時クアラテンベリン船着場。

バスにて、KLへ。途中KARAKで昼食。
中国人の旧正月の前日(日本でいうと大晦日?)ということで賑わっていた。

KLへの道すがら名残を惜しんで、2箇所で探鳥をする。
キミミクモカリドリなど数種類を新確認。
キミミクモカリドリ(香西宏明) 暮れなずむKLの街(香西宏明)

KLに入るとラッシュアワーに遭遇、人里に帰ってきた実感がわく。
恒例のさよならディナーは中華料理。

KLセントラル駅で帰国組5人と延泊組6人に分かれる。
帰国組はこの駅で出国手続きを済ませ、空港へ。

2355分発 マレーシア航空052便にて無事に帰国。(277:00AM着)

マレーシアは治安も良く、日本から比較的近い国なのに熱帯というまったく違う自然を見せてくれる魅力がある。
まだまだ、見所はいっぱいありそうだ。
再度訪問したい国である。

今回の旅では125種の鳥たちと出会えた。

旅行費用 136,730 (旅費、宿泊費、食事代、ガイド料を含む)、 一人部屋追加料金\17,000
タマン・ネガラでの記念撮影

参加者から寄せられた感想
マレーシア探鳥旅行 【食事編】 関 修枝
「私の好きな鳥・・・・・
熱帯地方にはカラフルで奇抜なデザインの鳥が多い。それはそれで美しいが上品さに欠ける。コノハドリの仲間はけばけばしい美しさは無いが小鳥らしいシルエットでシックな美しさがある。数も多い為簡単に観察できるのも良い。」
遠藤 裕久
「今回の旅は、現実から非現実へ、まるでインディ・ジョーンズの世界へ紛れ込んだようでした。フレーザー・ヒルからタマンネガラの旅は、高原から熱帯雨林へと変化に富んでいました。細長いボートでの船旅も心躍りました。
サイチョウ、ショウビン類、ゴシキドリ、ヒロハシ類、コノハドリ、サンショウクイ、等々。
色、形とも様々な熱帯の鳥たちに会えて感激でした。
願わくば、キツツキ類をもう少し見たかったです。
鳥仲間と旅が出来て大変幸せです。
次回を楽しみに現実の世界へ帰ります。
有難うございました。」
北川 温之
 「出発前に風邪をひき、準備しながらキャンセルまで考えました。
帰るまで咳が止まらず、苦しい海外探鳥会でした。
参加の皆さんにご迷惑おかけしました。
 しかし久しぶりの海外探鳥会で、楽しく思いで深いものになりました。
また、たくさんの鳥に出会うことができ満足です。」
香西 宏明
     
「最初から大きなアクシデントがあり、飛行場からフレーザーヒルまで車で行く事になった。道路は完備されていたが、すれ違う車もない夜間の山道を虫や鳥の鳴く声を聞きながら現地時間の0時頃に到着、約3時間のドライブを経験した。
フレーザーヒルは高度があるため、しのぎやすい温度である。翌日、日本時間より1時間程夜明けが遅いため、暗いうちからの探鳥となった。
  ガイドのホックさんの鳥を見つける速さとプロミナーを合わせる速さにはびっくりした。
フレーザーヒルとタマンネガラを今回の訪問地にしていたが、出てくる野鳥が色とりどりで綺麗な鳥が多くどっと出て来るため、手持ち撮影でゴミ箱行きの写真が増えたが、プロミナーで見たクビワヒロハシはなんともいえない綺麗な鳥で特に印象に残った。
  日本は現在冬であるが、タマンネガラでは花が咲き、蝶が舞いセミが特大の声で鳴いていた。宿舎付近をイノシシが歩き回っていたのにはびっくりした。
  タマンネガラへの往復は、川船での長時間座りで尻が痛くなったのもいい経験で、期間中雨期にもかかわらず雨にもあわず良い天気が続き、問題もなく無事帰国できたのは山田団長,参加者の日頃の行いがいい証拠かもしれない。」
濱 伸二郎
     
「はじめての探鳥旅行、美しい熱帯の鳥たちを、こんなに沢山見ることができ大感激です。キャノピーウォークの木の上で見たミドリヒロハシの真緑の羽色、忘れられません。お世話になりました。ありがとうございます。」
原田芙佐子
「同じアジアの国という事も有り、特に人々の笑顔の良いのには親しみを感じさせられました。コスタリカ同様熱帯の鳥のカラフルなことには感嘆するのみでした。
新大陸の熱帯雨林とは着生植物に違いが見られて興味深いものがありました。
延泊したシンガポールは思った以上に清潔で緑に囲まれた美しい都市でした。」
村上 義徳
     
 「Frasers Hillの朝は、近くのモスクから聞こえるコーランで目が覚めた。
7時半、明けきらぬ屋外では、すでに鳥の鳴き声が聞こえていた。
朝食後、ガイドMr.Hockの案内でホテルを後にした。マレーシャでの探鳥の始まりです。
あさもやの中、周囲は切り立った山岳の熱帯雨林でした。鳥が。蝶が、蜘蛛が、花が・・・・
 Taman Negara国立公園では、水量豊富なテンべリング川に沿い船で移動の探鳥だった。皆さんに励まされ、トライしたキョノピーウォークはよい思い出です。
 
山も川も、数多くの鳥たちが現れ、姿・形・色彩・鳴き声で楽しませてくれた。
天候に恵まれて美味しい食事とすばらしい仲間たちに心からお礼を申し上げます。
守分 敏郎
「いつものことながら全員無事で帰国というのが企画者としては最大の喜びです。参加者の平均年齢も次第に上がって来ているので、(今回はそうでもないが)不慮の事故というのが一番気がかり。
もうすでに8回目で幸いなことに一度も事故というのはありませんでした。
これからも探鳥旅行を全員で作り、楽しんでいきたいものです。
 今回の企画は野鳥ガイドのホックさんがいたから出来たようなものです。

彼の鳥を見つける早さとプロミナーに入れるスピードを見ていただきたかったのです。」
山田 泰照
     
「赤道直下のジャングルの暑さを心配したが、冬場の乾期で気温2530度と快適な旅だった。ランカウイ島探鳥ツアーに比べて、期待していたよりも野鳥との距離が比較的遠く、個体数も少いように感じた。16世紀以降欧州列強の植民化により全土が開発し尽くされ、更に急激な経済優先による国土開発が進んだため自然林が少なくなった結果ではないかと感じられた。
 ツアー後、マレーシア鉄道の夜行寝台列車に乗り、KLからシンガポールまでジョホール水道の国境越えを体験した。先進国シンガポールでは花と緑に囲まれた快適な都市空間を楽しんだ。」
渡辺 裕幸
     

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