基底材の準備 その1・絹枠を張る
1.絹枠の準備について絹を張る絹枠の大きさについて:昔は完成時、絵に応じた表具を絵それぞれに合わせて行うことが当然だったため、織物としての絹幅を基準とした大きさで作っていたようです。現在では額装が一般的となり、F,P,Mといったキャンバス型に合わせた制作を行うようになったことから、絹枠もキャンバス型を基本にしますが、絹が織物である特性から、縦方向(縦糸のテンション)に完成後縮むことを考慮した余分を縮む方向にプラスした内径の枠を用意する必要があります。2.絹の使用方向上記画像を見ていただいてわかるとおり、絹は巻かれて売られています。画像のように置いた状態を上下、基本として使います。これは掛け軸を作るとき、縦方向に巻かれるということからこのように使うのです。縦糸が縮むと言う話しを先に書きました。もし、これを横方向に使ったとすると、軸装時に両側が中央に曲がるような癖となって現れてしまうからです。(;cf絵巻)現在のように、額装が一般的になっても縮みによる変形についてを予想する意味で、このことを知っていたほうが良いでしょう。
絹を木で出来た枠に張る場合、昔から、生麩糊が使われてきました。適度な強度があること、水をつけてはがしやすいなど、使い勝手のよさからかと思います。表具材料店ではパックされた商品を売っています。約一袋100円程度です。なお、薬局で粉の状態(小麦粉のでんぷん質から作ったもの、障子の張り替えなどで使われます。)でかっては売っていましたが、現在は購入が難しいかもわかりません。絹枠に張る時は糊はやや強め(水分量が多すぎないもの)を使います。そうしないと、糊の水分を絹が吸って暴れ、張るのに時間がかかってしまうのです。
糊刷毛を使って絹枠に糊をつけます。この作業をする前に、木を良く絞った雑巾で拭くなど、汚れ落しと適度な水分を枠に与えることが後の作業をしやすくします。始めて使う枠の場合、付きをよくするために捨て糊をする場合もあります。糊の付きが悪かったり、水分を必要以上に絹枠にとられると、やはり、絹を張ることが困難になります。ただし、それほど神経質になることもありません。張る事ができればよいのです。なお、別に手で塗ってもかまいませんが、大きな絹枠になると、手で塗る事をあきらめたくなります。塗り終わる事には、最初に塗ったところが乾きかけていたりするのです。
糊を付けた絹枠に絹を置くとき、巻いた状態を伸ばすようにして張ります。この時、幅が広い絹枠では絹の自重で中央付近がたわむことがあります。心棒を用意して行うとしわを作らず伸びた状態で張ることが出来ます。ただし、6号程度であれば、心棒はなくとも大丈夫です。
絹枠上に絹の始まりを合わせ、徐々に広げながら両脇に接地させます。このとき、縦糸が真っ直ぐになるように、横糸も上辺と平行になるように注意して広げます。この段階では、まだ絹枠と絹はただ広げられただけで密着はしていません。
絹のたわみなど、あまり神経質に引っ張る必要ありません。なるべく、たわみ、しわ、つれが出来ないように縦糸、横糸が枠のそれぞれに添うように調整しながら糊を付けた部分に絹を押しつけ、こすることで密着させます。絹目から糊がはみ出しますが、それをまた伸ばすようにします。少々の皺、たわみなどは、後に引くドーサによって伸ばされます。あまりこの時引っ張りすぎることもある意味では必要以上のテンションを絹にかけることになるのです。
手では力が足りなく感じることもあるでしょう。竹、柘植など柔らかいへらで押さえつけることも出来ます。
はじめて絹を張ったときなど、四隅にツレが出来たり、たわみが気になることがあります。このたわみ、ツレを必要以上に気にされるかたがいらっしゃいますが、通常はドーサを引くことによりピンと張ります。大切なのは、しっかりと絹枠に絹を張り付けることです。絹の張力は以外と強く、この付きが甘いと、絵の具を塗り作業を進めるうちに剥がれてしまうことがあるのです。描く途中で剥がれた絹はなかなか元のように張り付けることは出来ません。糊が完全に乾くまで一日はおきましょう。完全に糊が乾いたら、制作中に水塗れによって枠から剥がれてしまうことを防ぐ意味で、マスキングテープを糊の部分にはります。絹枠の内側ぎりぎりに張らず、数ミリ木枠部分にセットバックしてはります。これは絵の具の平塗り時の返しによるシミ防止のための配慮です。参考:絵絹について(注意:販売されている絹など情報が古い場合があります。)http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/image/2001/062401/index.html
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基底材としての絹自体がもともと美しく輝きをもっており、また墨、染料などに染まりやすく、また水を使った暈かしなどの表現に向いているなど、個人的には現在でも十分魅力ある素材だと思っています。枠に張って描きます。
基底材で分け、絹本、紙本と呼ぶことがあります。