1/28//2008 展覧会案内・感想  
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倉敷市立美術館 こどものための池田遙邨展

倉敷市立美術館で「こどものための池田遙邨展」展が開かれています。
2008年1月5日(土)〜2月24日(日)
午前9時〜午後5時15分 休館日:月曜日(祝日の時は次の日の火曜日)・2月7日(木)

ふと立ち寄ると館蔵品を中心にした展示が行われていました。先日紹介した笠岡竹喬美術館の25周年記念展:小野竹喬さん、今回の池田遙邨さんとも岡山県出身の日本画家として有名な方々です。どちらも京都を中心に活躍されました。
それぞれ晩年の絵を比べるとどちらも具象的な表現とはいえ、かなり異なった印象を受けます。自分の絵を描く上で何を大切にするかの違いといってしまえばそれまでですが、単純に絵の具の使い方一つをとっても大きく違います。もともと遙邨さんは油絵、西洋的な描写からスタートしていると聞いています。京都国立近代美術館で見た水彩画の描写など、とても手慣れて巧いと思わせるものでした。
 さて今回、会場に入ってすぐの場所に「山村図」という絵が展示されています。いかにも描いている途中といった雰囲気の残る絵ですが、今回笠岡で展示されていた竹喬さんの若い頃の絵に類似する表現を見つけることが出来ます。どちらも描く対象として、日本の自然、人の暮らしぶりを薄塗りで素直に描いており、また使っている絵の具、使い方も日本画の代表的なものと大変近い肌合いを持っているのです。
 しかし、それでも二つの絵を並べて見れば多くの方々が画面全体から受ける印象が何か異なることに気づくでしょう。難しい言い方をすれば空間の捉え方ということになるのですが、奥行きの表現方法が違うのです。また、筆を進める速度が違うこともわかります。・・・・だから?と言われても困るのですが、個人的には、こんなところにも『日本画』という言葉を今日的に捉え直すヒントがあるように思っているのです。

「颱風来」という屏風が出品されています。ある時期の京都画壇を感じさせてくれる絵だと思います。今の時代、絵描きに失われたエネルギーを感じることが出来るような気がして個人的に好きな絵の一つです。薄塗りの表現にも注目です。
 

チラシなど紹介物が見あたりませんでした。手持ちの古いカタログより。遙邨の紹介と「颱風来」
■ チラシなど紹介物が見あたりませんでした。手持ちの古いカタログより。遙邨の紹介と「颱風来」
 

■ 「こどものための」と銘打たれているように、会場では鑑賞者が積極的に絵を見ようとするゲーム仕立ての工夫もされていました。個人的には、いろいろな社会の問題解決の為に美術教育がなすべき役割は必ずあると思っています。それぞれの場所でそれぞれの取り組みが求められる時代ということを感じます。

館を訪れたおり、他の会場では倉敷芸術科学大の卒業制作展が行われていました。皆さん一生懸命制作されていることが伝わります。卒業大学は違えど、一緒に訪問したのがかっての美術大学生ということもあって、それぞれの作品を見ながら、話しは大学という場の変化、今の社会で生きていくことなどといったテーマの話しとなりました。それぞれの問題意識も含め、私自身も考えさせられたような気がします。(卒展はすでに終わっています。ただし、美観地区内の加計美術館では修士課程・博士課程の展示がいましばらくあるようです。)

 


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