日本画実習法 第六編 花卉鳥獣の描法 下 一、動物の描法
<動物の形>動物の写生は花卉のそれより動くので難しい。刻々と変化する姿形を観察することと、描き止める事を、ほぼ同時に素早く行うことが求められるからだ。解剖学的な理解というものももちろん必要なことではあるが、実地に応用のきくことを解説する。勉強するのに適した題材としては、まず「牛」があげられる。<形の描写>描きやすい形というものがある。それを選ぶ事がまず最初である。(真正面が難しいのはあたりまえである)<距離>描こうとする対象からの距離も全体のバランスを見る上で大切な事だ。<着色>1、大まかな形をとって下書きする2、学んだ有線描法、没骨法、附立法、隈取法などを用いて色を着けてみる。墨一色で墨絵にしても良い。動物画の勘所は、動いているものをいかに描くかだから、速写(クロッキー)の勉強等が大切である。大きな構成さえ誤っていなければ、耳とか角等はどうとでもなるものだ。<鉛筆描き>※動物の写生では日本画でも鉛筆を使う場合が多い。そしてそれは大変便利なものである。本来日本画は物の形を写し取るのが目的ではないから、毛筆を用いて彩色の練習も同時に行うと良い。<見る方面>いろいろな方向から見る事は行うべきで、どのような方向からでも描けるようにする。<先ずよく見よ>昔の画家は古画の粉本を多く所有するだけで十分に良い作品が出来た。これは粉本によって自分の絵を作るからであり、ある意味で自然よりも手本が必要だったのだ。しかし、現在では誰かのマネをするといったことは、初心者でも無い限り認めてくれない。真似るということは排斥されている。実物を良く見て多く写生をし、確実な技量を持った者が勝つのだ。だからこそ模写よりも、写生を一生懸命することをすすめる。人まねではなく、そのようにして自分なりのものを描けるようになったほうが画家として認められやすい。<絵のこなし>しかし!そうかといって日本画は洋画のように写生一辺倒では描けない。そうして出来た写生を日本画らしく美化する必要があるのだ。実物の写生を「こなし上げ」、絵にするのだ。※ここまで93ページ。ポイントは写生の重要性を説いている事と、同時に描く毛筆との関係、また日本画とするためには「こなし上げ」もしくは「美化」が必要とあえて書いてあるところだろう。次回は「二、獣類写生の実技」から
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