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1/10//2010  レポート

日本画実習法 第七編 風景画 二、風景画実技

■ 川合玉堂の著した「日本画實習法」はたして「日本画」の何が変わって、何が変わっていないのか。気になる部分を備忘録がてら感想など。その17
  

<三景の取り方>
近景、中景、遠景。あるいは前景、中景、後景。
風景を三つに分けて考える意味は作画の上で便利だからだ。景色には、それぞれ、遠近中、どこにポイントをおいて描くかによって出来る絵があるのだ。絵によってそのどの部分を主役としてまとめあげるかをあらかじめ見極めて制作を行うことが重要なのだ。それが出来ずにポイントを外した描き方をすれば不自然であることはもちろんのこと絵を壊してしまうことになる。

広い景色、すなわち奥行きの深い景色は、遠景がなければまとまらない。
遠景がなければ、絵の奥行きが見えてこないのは当然で、ある場合などは近景の次に直ぐに(中景を抜いて)遠景を持ってきた絵もある。

<中景のこと>
例えば直に(中景を抜いて)描く例としては、霞や霧で中景を覆って描く場合がある。

<遠景の描法>
遠景を描くポイントは、対象を大きく捉えて、なるべく細かいところを描かないようにすることだ。なぜなら距離が遠くなれば空気の厚みのために色や形がぼんやりするからだ。遠い山の皺(しわ)などがたとえ見えたとしても、あえて描かないようにし、形を一本の線で描いたり、淡墨、淡藍で刷くように描く。

空気遠近法の実際を見てもわかるように洋画は特に遠近の描き方が厳密である。

そうした絵も(発表されている日本画にも)あるにはあるが、今後の日本画においては、こうしたことにより注意をはらう必要がある。

前景にふさわしい遠景の表現が大切で、漠然と描いてはならない。
中景はもっとも力を注ぐべき箇所である。風景を描くとき、まず中景から始め、全体の調子を見ながら全体をまとめていくということが重要だ。

<近景の描法>
近景を描くときのポイントは、すべてを力強く精密に描くということである。
だからといって、ただ均一に描いてしまうようではそのあとに続く中景、遠景をまとめあげることにはならない。だからこそ難しさがある。

一方、近景を省略する描き方もある。
長手の軸ものを描くようなとき、近景を全体の三分の二程度にして。描き消しにしておくような場合である。
<描き消し>とは、段々に筆を粗くし、遂には何も描かないような素地のまま残すような描き方である。

<下部の描法>
絵の最下部を描くポイント。横長の画面では、最も近いものを描くのが常である。しかし、だからといって草の先ばかり描いてはいけない。そうすると絵の完成を控えてすでに(草の先の下に)描いてあったなにかをトリミングしたのではないかと思われるからだ。
ただ草を描くといった場合では、やはりその下にはもともとなにも無かった(もともとの構図の意図であった)ということを明らかにする意味でも画面の外に向かうに従ってぼかしておくのも一つの方法である。

これとは反対に最下部に岩の頭などを描いたのもあるが、この場合は絵を引き締めるものであるから問題ない。その存在感によって絵全体をまとめあげる力となる。



※ここで113ページ
風景画を描く場合の心得について具体的に説明している。
最下部の処理についての紹介などそのあまりに具体的なことに驚くほどだ。

次回はその三、樹木の描法から