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5/3//2010  レポート

日本画実習法 第七編 人物画法 七、補遺

■ 川合玉堂の著した「日本画實習法」はたして「日本画」の何が変わって、何が変わっていないのか。気になる部分を備忘録がてら感想など。その29
 

日本画の画面の形状、及びその表装、落款、その他の参考、実用上の知識等
 

<壁画>
およそ壁面に描かれたものは全て壁画で、エジプト、インド、手近では朝鮮、大和法隆寺に遺されている。最初は宗教的な目的から、そして現在では広大な建築物にも描かれる様になった。
ただし、我が国においてはまだ(昭和2年頃)壁画は民間では用いられず、劇場、学校の講堂、あるいは知名の士の書斎等に見られる。これらは壁土の上に水絵具で描かれたものや、フレスコ画のように砂と石灰を混ぜたモルタルの上に描かれたものがあるが、今ではそれらの描法は行われていない。今では大抵カンバスの上に油絵具で描き、壁間に張っている。

<屏風>
屏風は古くから用いられ、天平時代のものまで現存する。現代行われているのは足利時代以後の様式で、六枚折、二枚折が一般的だ。他に4枚折、8枚折があるが希である。
高さは六尺のものを本間といい、五尺以上、五尺二三寸までは風除といい、茶道に用いられる風呂先屏風は、幅三尺、高さ一尺七八寸から幅三尺一寸高さ二尺四寸まである。ほかに障子屏風、袖屏風などあるが全て絵を描く材料となる。

<掛軸>
掛字、掛絵とも呼ばれる。大軸、小軸、堅絵、横絵、柱絵、柱隠など形や用途によって名前も異なる。
二幅対もしくは対幅、双幅、三幅対とがあり、三幅対の左右を脇絵をいい、中央を中尊という。日本画を描くとき、四幅対もある。
表具には大和表具、明朝風、眞の表具、袋表具、唐表具、神聖表具の六種ある。
軸面の中縁を略して中といい、地題を天地といい、中の広いものを燈補、狭いものを輪補という。
掛け軸の長さと広さは決っていない。もっともよい比例は、幅一に対してたて三倍の割合である。
明朝風のものは、天地中の区別が無く、一文字をつけ、左右に明朝縁という縁をつける。眞の表具は、大和表具と大差なく、絵の外園に金紙の縁を付けて一文字無く、袋表具は地題、中の区別無く、一文字を付け、唐表具は、同質の錦を使って仕立て、中の上下と風帯との両側に細い縁をとり、神聖表具は仏画に用いられるので、金襴の華文ある錦を用いる。軸は象牙、紫檀、鉄刀木、角、骨、蝋石、陶磁器などで作る。

<色紙>
古くは縦六寸四分、幅五寸六分のものを大色紙、縦六寸幅五寸三分のものを小色紙といった。はじめはこれらを繋ぎ合わせて文字を書いたが後世では歌を書いて襖や屏風に貼付ける方形の厚紙を色紙というようになった。

短冊は単籍もしくは短尺ともいい、歌を書くための縦一尺二寸(或は一尺一寸五分)幅二尺(或は一尺八分)の紙で、表面には彩色、絵模様、金銀箔等をおいてある。今ではこれに極彩色の絵さえ描く。

<落款>
落款とは書画に名を著して印を押すのをいう。この巧拙はその絵の全体に大影響を及ぼすから余程の注意をして捺さないと全て台無しにしてしまう。

この落款の場所には昔からほとんど一定の法則があった。

例えば、二幅なら上(かみ)になる幅には向かって右に。
        下(しも)になるのは向かって左に。
        中のには中央に捺すのはそれである。
    一幅の場合は別に方式は無い
    絵の邪魔にならない所に捺すことはもちろんのことである。

    場合によっては絵の中に落款する事もある。
    絵が黒色の濃いものであれば金泥を用いたり、
    上部の空間が空いて寂びしいようならそこに捺してもよい。

    落款は絵全部を引き締めるものである。



※ここで175ページ。実習法本編はここで終わり、このあとは付録として芥子園画伝要訣が続く。壁画の説明の部分などに洋画、当時の油彩画の隆盛を感じ取る事が出来る。

落款の詳しい説明など、絵の一部として強調しているところなども注目される。