日本画研究会
4月に第一回を開催し、この五月開催が第二回となります。月に一度、2時間と限られた時間のため、なかなか慌ただしい研究会ではあるのですが、参加者それぞれがその筋!の方々故、何かしら新しい発見、出会いの機会ともなるのではと、個人的には楽しみな集まりです。第一回は、現代のなんでもあり?の日本画になる前に使われていたであろう基本的な絵の具や、道具、描き方などを確認しました。
そして次回、この五月の研究会に向けて素材の準備をしています。今回は、基底材、日本画に使われてきたそれぞれの紙素材を実際に触って、描いて検証してみようと言う企画で、手持ちの画仙紙、黄唐紙(2種類)、赤麻紙、薄美濃紙、雁皮と楮のブレンドされた紙など、ドーサの効いている、効いていないの違いや水との親和性などを実際に墨、油煙墨と松煙墨を使ってそれぞれで試してもらう予定です。ドーサも実際に引いていただく時間を作れればよいのですが、今回は、限られた時間故、私が事前に準備しているのです。
左画像手前に刷毛が写っていますが、昔、ドーサ刷毛として私が買い求めたものです。絵の具を塗る塗刷毛とほとんど変わらない姿をしています。上質な羊毛素材がたっぷりと使われており、適度な腰もあって薄美濃紙や黄唐紙など薄かったり、水にもろい要素を持った紙でも安心してドーサを引く事が出来ます。すでに購入してから25年程度は使っていますが、ドーサ引きという作業が、基本的に紙とか絹、実際に絵を描く前に基底材に塗る作業だけという事もあって、使い込んでいる割に変わらぬ姿、使い心地でいてくれているように思います。
何故、上記の様なことをあえて書いたかというと、昨年度、関わった倉敷市立美術館の日本画講座で買っていただいたドーサ刷毛が私の知っているとそれとまったく異なったもので驚いたことを思い出したからです。表具の作業、和紙を均等に湿らせるために使う水刷毛のような性質、短い毛、その着き方、そして頑丈な柄の部分。繊細な作業を行う道具の様には思えませんでした。実際、講座で用いた薄美濃紙にドーサを引くのはなかなか難しい作業となりました。(比較するものを知らなければこれはこれでいいのかも解りませんが、、、)
いわゆる雲肌麻紙のような頑丈な紙にたっぷりとドーサを引くならきっとこれでもよいのでしょうが、私にとっては違和感の大きなものでした。さて、何故このようになったのか?未だに昔ながらのドーサ刷毛を販売している所があるのを私は知っていますが、一般の方(それが美術館であっても)が初めて求める時、普通に購入できる画材屋の品揃えではこうしたものを購入してしまい、そういったものだと思ってしまうことになると思うとやっぱりちょっと寂しい気持ちになるのです。ドーサを引く基底材の多様性、薄い紙、脆い紙もあるのです。話が脱線しました。ドーサを引く事によって、滲む滲まないの違いのみならず、紙の性質が変化します。またドーサによって描く事も可能です。次回の研究会では、ある種の材料、基底材との出会いが技術の発見につながっていることなどを体験してもらう予定です。
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