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2/4//2013  材料技法

岡山の膠・墨・和紙漉き体験ワークショップ記録1

■ お陰様で「岡山の膠・墨・和紙漉き体験ワークショップ」を無事終了することが出来ました。実施までの準備、材料の提供なども含め、いただいたアドバイスの数々、ご協力・ご参加くださった皆様に感謝しております。
地域の先輩、川上一郎さんの研究、実験によってニカワ制作、ニカワに対する理解が多くの参加者にわかりやすい形で提供、共有出来たと思います。
以下はその記録です。
 
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2月3日(日曜日)実施当日
冬期の開催、また標高も約320mある場所です。雪、道路の凍結によって参加者が集まらないかも?という心配を消してくれた朝日です。暖かな一日のスタートとなりました。
 

 
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開始時、ワークショップ会場に集った方々の様子です。川上一郎さんの作業説明・バックは風、寒さよけとして仮設したブルーシートです。
地元岡山、倉敷はもちろん、東京、京都、広島、大変大勢の参加をいただきました。
※開始から終了までの長時間終日参加の方も大変多かったのですが、出たり入ったり、部分参加・関係者も含め、トータルで述べ約87名の参加がありました。

 
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2月3日、一日参加で膠作りの行程全てが確認できるように、事前に用意してあった煮こごり状態となった膠をバットから切り出す行程を行いました。(実進行とは異なりますが、初日午前に完成の様子を見学出来るようにしました。)

 
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煮込んだ鍋から不純物を濾してバットに移され凝固したニカワの様子。

液体だった膠は、外気温(18度以下、零下にならない状態)で1時間程度で凝固します。三千本のような棒状、もしくはシート状に切り出し、乾燥工程(冷蔵庫などでもOK)に入り、一週間程度で常温保存可能(乾燥した)な膠になります。

切り出し、乾燥工程に入ったところまでをまず行いました
  
  ★本来の時間軸にそった製作工程はココから始まります★

 
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イノシシの皮、一頭分を水から引き上げたところです。

あまりの迫力!最初、遠巻きに見ていた参加者も次第に好奇心に負けたのか、近づいて来ました。

銘々、画像に収めたり、触ったり。

 
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縦に2つに分けました。

半身づつ、倉敷芸術科学大学の生徒、吉備国際大学の生徒に分けました。

※お腹、おしり、背中、部位により脂肪の付き方が変わります。このあたりも含め条件を同じにした実験とするためです。

 
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参加者多くが作業に参加しやすいように、適度な大きさに切り分けました。

 
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切った皮の厚み・断面です。
一番下のピンク色の部分は、残存した肉片、次の白い部分が脂肪、グレーの部分が皮です。そしてそこに体毛が付いているのが見えますね。

いかにこのグレーの部分だけにするかが良い膠を作れるかどうかにかかってくるのです。

 
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より小さな単位に切り分けています。

体のどの部分の皮であるかによって、脂肪の付き方、毛の長さ、硬さも変わってきます。

特にオスの猪の場合、皮は大変硬く、皮の中にとどまった散弾を発見しました。
鎧のような体です。

捕獲時期、季節によって雄は匂いを強くすることが知られています。

 
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体の表皮、いかに体毛を手際よく処理するかは、当初から問題でした。

野生であるため、土に転がったり、どんな細菌、汚れをつけているかわかりません。
1:火で炙る
2:熱湯をかける
3:川に漬けバクテリア、菌の働きで毛を抜けやすくする
4:ひたすら毛を刈り、後にカミソリ等で剃り落とす



実験ではいろいろと試しました。
特に流れ・水に漬け込む手法、前回の実験の時は、まったく抜くことが出来ず、諦めたのですが、今回は手で抜ける場所もありました。実験が功を奏したようです。数日前の暖かさ、バクテリアが機能したのかも分かりません。

 
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人海戦術

大勢の参加者が手にハサミ、刃物をもって毛の処理、脂肪の削除を行なっています。

大勢の参加によって大変な作業がどんどん進行しています。

 
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参加者がいたるところで協力し合い、作業が進みます。

脂肪を取るのにカンナなども使用され効果を上げました。

 
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細く細かい体毛の部分など、バーナーを使って焼く処理も行なってみました。

 
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かなり作業が進み、裏表が処理されてきた様子です。

手前側が表、向かいが裏面です。

 
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一頭分の皮が処理され、ニカワの抽出がうまくいくように小さく切り分けられた状態です。

 
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切り分けたものを作業の中でついたゴミなどを落とすため、水洗いしている様子です

このあと、2つに分けられ、2つの鍋に煮出す準備を行いました。

午後の作業はここまで。参加者の多くが家路に付きました。

 
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水を加えて煮出しました。
水温70度程度で煮ています。

 
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7時間程度経過した状態です。

 
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低温で煮出し頃合いを見て濾します。

濾された液体を湯煎によってより煮詰め水分を蒸発させる作業に入りました。

 
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湯煎により水分をどんどん飛ばして固形化しやすい状態に近づけます

 
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表面にはった膜のようなものを割り箸につけてみました。
かなりの粘着力が出てきているようです。

 
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固形化しやすい状態になったのを見計らって濾しながらバットに移し、冷却します。

 
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バットに抽出液が移され、冷却に入った状態です。

零下にならないように、また18度以下、静かに冷却・乾燥します。

 
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冷却が終わり切り分けられるようになった状態

切り出しをはじめます。
かなりのボリューム・しっかりとしたニカワが出来ました。

 
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これまでの実験で一番の厚み、ボリュームで出来ました。

 
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乾燥状態に入った今回の膠です。

全く同じ量で始まった膠ですが、2つの鍋で一つ異なった点が出来たことにより違った結果が生まれました。これも今回初の経験となりました。

このあと、乾燥したら完成です。
素晴らしい迫力の仕上がりとなりました。

これらは参加した各大学に持ち帰られ、化学分析など調査が行われる予定です。
結果等出ましたら、また紹介したいと思います。
また、1煎目抽出の終わった原材料は、このまま大学に持ち帰られ同時に2煎目、3煎目の抽出が行われる予定です。

今回のワークショップは、地域で害獣として処理されている猪の存在を聞いたことと、普段制作に使用している膠との結びつけからスタートしました。また、日本画への理解、素材への理解を深めたいという日本画研究会参加の美術館関係者の方々、私の関わっている日本画を学ばれている方々の賛同もあってスタートしたのです。(もともとは私の好奇心ですが、、、原材料確保も含め私の相談にのってくださり、たゆまぬ製作工程の試行錯誤、開催準備・実施場所の提供、段取り、実施に至るまで協力してくださった川上一郎さんの存在がなければ絶対に実現出来ない今回のワークショップでした。本当に感謝です!!)

膠を使った製品である墨にも同時に関心は向き、これまでと違った見方にもつながりました。

ワークショップ実施への過程では、もし安定供給を考えようとするならば、いくつもの法的な課題があることも教えていただきました。今後の自然環境・原材料の確保における変化、また猟師さんたちの高齢化といった話などもあります。もちろん絵描き、その他の膠ユーザー、目的はさまざまですが、文化財保存なども含めてそれらの社会的なこれからも気になります。

いろいろなことを私自身が教えてもらうワークショップとなりました。
ご協力いただいた皆様にあらためて感謝しております。特に川上一郎さん、吉備高原都市、地域の皆様に感謝です。!!。

 
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※2月5日追記
倉敷芸術科学大学チームが持ち帰ったニカワシート(上記最後の写真)は、その後、角柱状に切り分けられ、左画像のような状態で冷蔵庫での乾燥に入っているそうです。かなり厚みもあり、はたして常温保存可能な乾燥状態になるのはいつになるか。
楽しみです。
(倉敷芸術科学大学 出口くん撮影)

 
※2月6日追記
吉備国際大学に持ち帰られた膠は、サイコロ状、板状に切り分けられ乾燥行程に入っているそうです。

ワークショップ参加者で処理された原材料は、1煎目の抽出(上記画像)後、全てを2つに分け、同量を各大学に持ち帰りました。これまでの実験から2煎目、3煎目の抽出が可能なことがわかっています。これまで1煎目で作られた膠の使用実験では水でかなり薄めないと(通常の約3倍以上)、使いづらいほど強力ということがわかっており、2煎目、3煎目の抽出でも幾分弱くなったり、煮る度に取れる量がすくなくなったり、濁りが出たりしますが、相応の強さのものが抽出できます。

今後、両大学とも2煎目、3煎目の抽出を時期(冷凍保存)を見て行うそうです。これらが行われれば、それなりの量の確保が可能になるはずですが、残念ながらこのワークショップ中に抽出された膠は、いまのところどちらも研究用の性格が強い存在となっています。
両大学関係者ではなく、参加者の方で、少しは使ってみたいとお望みの方、これまでの実験で作ったサンプルが極少量ですがあります。もしご要望の方は、森山までご相談ください。