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4/12//2013  材料技法

2013年猪膠制作実験のその後について

■ 2月・ここ吉備高原で猪の生皮を処理して膠を作るワークショップを行いました。2日かけ、ゼリー状態にするところまでを行い、その後は吉備国際大学、倉敷芸術科学大学それぞれの大学に持ち帰り、乾燥を行って完成したという報告まで行っています。完成品の様子と、その後について。
 
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一煎目抽出の膠です。抽出温度を一度上げたことによって色、抽出量が変わりました。二番目の画像は、低温のまま抽出した一煎目の膠です。

※ 倉敷芸術科学大学へ持ち帰られ、作成されたサンプルです。出口くんが責任をもって取り組んでくれました。^^!

 
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低温のまま抽出した1煎目の膠です。上記のものと比べ、色は薄く、透明度も高いものとなっています。

 
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温度を一度上げた原料から抽出した2煎目のものです。

 
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こちらは温度を上げなかった原料皮よりの2煎目抽出です。やはり透明度が違うことがわかります。

 
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温度を上げたもの、低温のままだったものから抽出した3煎目の膠を混合した画像です。

途中、温度を上げたことが、最後まで膠の透明度の違いとして現れたように思います。


※それぞれの画像はクリックすると少しだけ大きく表示できます。

 
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吉備国際大学の方々が持ち帰り乾燥を行ったサンプルです。乾燥時、湿度、温度管理を行える部屋で、サーキュレーターによる送風を行なって作成したそうです。
画像は1煎目のおり、温度を上げた原料皮よりのものです。(1煎目、2煎目)両方です。

 
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同様に、吉備国際大学で作成されたサンプルです。こちらは温度を上げず、1煎目も2煎目も低温のまま抽出したものです。

 

それぞれの大学で今後、使用実験、検証が行われることになっています。

倉敷芸術科学大学の日本画専攻の皆さんによる、通常の制作で使用している膠との違い、使用感などのレポートが楽しみです。

さて、今回のワークショップで制作した膠の一部を昨年のセミナー聴講のご縁もあって、奈良、株式会社墨運堂さんにお送りしました。サンプルの試験成績書(サンプル量が少なく、一部のみのテストしか行えなかったそうですが、面白い性格をもったモノであることが確認できたそうです)も送っていただき、また松井会長からこの「猪膠で墨を作りませんか?」というありがたい提案をしていただきました。

・・・・とはいっても、墨制作に必要な膠の確保はどうするか?、2つの大学にワークショップ製作分は全て行ってしまいました。春になり、気温も高く、新たな制作には固まらない、乾燥時における腐敗の危険など困難が予想されました。しかし、折角の機会と川上さんの協力があり、追加制作を行っていただいたものがついに先日完成したのです。
 

 
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これまでの実験もあり、なかなかの出来になった1煎目の膠です。
ちなみに、今回の原料は、体重40kg程度の雌の生皮、片側半分より制作を行いました。
また、墨運堂松井会長からの温度管理に関する新たなアドバイスも参考に作っています。

 
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2煎目、3煎目の抽出液をまとめてから乾燥したものです。
気温が高くなったことから、ゼラチン状にするのも苦労しました。(談 川上さん)

 
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4煎目抽出のものです。
松井会長から提示を受けた墨を作るのに必要とされる最低限の量を満たすためにもと抽出を試みました。

抽出時の温度を幾分上げたことによるためか色がかなり変わりました。

 
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これまでの実験で作り、サンプルとして私の手元に残していたものも加えました。

ちなみに薄いシート状のものは、煮るときに備長炭を入れて作ったものだったりします。

 
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最後は参考までに、毛、脂肪層もそのままでの抽出実験で作られた膠です。

 
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さて、どんな結果、成果となりますことやら。

楽しみです!!。

 
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※参考画像
最後に制作した膠の原料皮の様子です。約1.5kgあることが確認できます。

 
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※参考画像 抽出中の画像です。臭い取りとして備長炭が入っています。

 
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※参考画像 抽出後、ゲル状態になったところ、乾燥中です。

 
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※参考画像 網状の支持材の上で乾燥させている様子です。

 
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※参考画像 風を当てての強制乾燥の様子。

 
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※参考画像 最終的な形態に処理し乾燥させているところ。