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7/30//2013  材料技法

遊びのハンコ作り

■ 作品の完成とともに押され、自作であることの証となっている落款の印は、後世において、作品の真贋、また制作年代を問う場合の貴重な手がかりとなっていますが、一方で作品の景色、画面のアクセントとしても十分に効果を出しているように感じます。実際、落款の位置まで計画してから作画している画家もいるのです。
 さてワークショップ等での水墨表現実験など、余白を残した制作では、ポイントとなる赤い印章があるだけでグッと作品自体の完成度が上がったように見えたりもします。印を作る、篆刻をするというと敷居が高い感じもしますが、身近な材料を使った一工夫、ハンコ作りの方法を紹介します。(夏休み特別企画?)
 
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画像左側の馬の形、その下にある三角形は、陶印と呼ばれる作りになっています。作成方法は焼物を作るのと同様で、粘土を使って印の凸凹を作り上げ、最後は窯で固く焼きあげて完成です。

昔の作家の方が使われていた印を美術館等で見てその姿形、造形に惹かれたのです。
確かに出来上がった焼物としての姿もよいのですが、窯で焼き上げるという行程があり、制作には何日もの日数を必要とします。

その後、使用する粘土の選択を考え、七宝用の電気窯を使うことで短時間で実現可能なことも分かりました。

こうした試みをしているうちに、印面を作る手法として簡単で力を必要とせずに細い繊細な朱印の作り方を思いついたのです。

美術館のワークショップなど、限られた時間での印づくりの一工夫。
画像、右、下に写っているグリーンやピンク、黄色のゴムのようなモノ、今回使うのはいわゆる温度変化で硬度の変わる樹脂粘土です。

 
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白いモノは、「彩玉ボード」という商品名で売られているソフトセラミックス材料です。葉書サイズで約600円、ちょっと高いですね。個人で楽しむなら、裏表、脇など、箱状の6面全て使って掘ることができますから、かなりの試行錯誤、印章が作れると思います。

鉄筆、釘で引っ掻いて凹みを作ります。見たまま、描いたままが赤い線となるハンコが作れます。

ちなみに緑色のちょっと厚いガム状のものは、商品名「おゆまる」樹脂粘土です。(対象年齢・6歳以上)画材屋さん・おもちゃ屋さんで売っています。

 
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この樹脂粘土、80℃以上のお湯にしばらくつけると柔らかくなり、自由に形を作ることができます。もちろん冷えればそれなりに硬い・ハンコには調度良い・プラスティック状となります。水を入れ沸騰した鍋にそのまま入れしばらく(2〜3分)したら割り箸でタオルのようなものの上に取り出し、水を拭き取ったら、指で自由にこねたり整形できます。
お湯から出してすぐは、かなり熱いのでは?と、当初思っていましたが、タオルで水分を拭き取ったらすぐに触る事ができる温度でした。しばらくは自由にこねたり伸ばしたり出来ます。

※ただし、漬け込むお湯は熱湯です、こちらは火傷に十分注意してください。

グッと押し付けてしばらく冷やせば完成です。
(※逸る気持ち、すぐに取り外したいのは人情ですが、柔らかい時に動かすと、歪んでしまいます。冷えて固まるのを待ちましょう。)
 
冷えて硬くなったら型から取り外し、余分な部分をハサミで切り取り整形します(簡単に切り取ることができます。場合によってはカッターも使用可能でしょう)。余分が多いとその部分に印肉がついて画面を汚す可能性があるのです。

ポイント  
1:石膏板を使っても制作可能です。     
2:「おゆまる」1パッケージ7枚(ダイソーでは2枚入りを売っていました。他に24枚入りもあるようです)入っています。一枚で、最大印面2cm×3cm程度の大きさが作成可能です。何枚かをまとめた大きな塊状の素材にすればより大きなもの、持ち手も含んだものを作ることが可能です。また、薄いスタンプシート状に作り、あとから持つ部分を貼り付けても良いでしょう。
3:1cm角程度印面の大きさなら1枚で持つところも含めて作れます
4:型取り前に彫った時出る石膏の粉を綺麗に取り除くこと。練りゴムなどが利用可能です。

 
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小さいハンコでは持つ所まで作ることができます。
ちなみに、この材料は、先に使ったピンクとグリーンを整形して切り取った屑を温めて一つにまとめ作りました。7mm角程度の印を作っています。



短時間で作る手法の中には、消しゴムをカッターナイフ、彫刻刀で彫って作る手法もありますが、細い線、形、動物なども描き出すことが出来る手法としてこの型取り手法もお手軽に試せる手法だと思います。

薄く平らに作った場合は上部に持ち手となるものをあえて貼り付けるなど工夫すると使い勝手が良くなります。ちなみに樹脂粘土は何度でも温めて柔らかく出来ますので、試行錯誤も可能です。

制作物にワンポイント・オリジナル印の作り方でした。

 
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8月8日追記

今回の試み、水墨をテーマにしたワークショップなどで、作成物に印があるだけでずいぶんとそれらしい雰囲気、気分が出るということから、簡単な、また時間のかからない作り方を探すうちに見つけた素材とその使いかたです。
印面を彫る石膏板作成についても、補足として作り方を追記しておきます。

左画像は、石膏、水、コップ、型枠用の画用紙、セローテープ、スプーン、割り箸など、必要となる材料です。

 
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水を入れたコップに少しづつなるべくバラバラになるように石膏を沈めていきます。沈んだ石膏が積み重なって水面辺りまで来たら、今度はよく混ぜます。ダマが感じられなくなったらOKです。

混ぜたばっかりはサラサラの状態ですが、30秒〜1分程度そのままおくとクリーム状に粘度が感じられるようになります。使用方法によって、このあたりの時間を調節してください。
 

 
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画用紙で輪を作り、手近にコーティングしたベニヤ板があったのでその上に置いて流し込みました。
緩いと、そこからどんどん外に溢れて行きます。

静かに放置(30分以上)で、とりあえず型からはずせる程度、持てる程度の硬さになります。


※注!当初コップに入れた水を思い出してください。コップになみなみと入れた水が全て乾燥してなくなるのにはかなりの時間が必要ですね。石膏が乾いて強度がでるまでにもやはり時間が必要です。同日に作業計画をするよりも、石膏板作りはやはり前もって作業をしておいたほうが良いと思います。


8月4日、岡山県立美術館での「水と遊ぶ」ワークショップ、たらし込み技法を使った葉書を作りました。もちろん、このハンコ作りも行い、参加者皆さんなかなかの出来上がり具合でした。