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6/22//2014  材料技法

児玉希望作「一鷺栄華」模写研究会

■ 児玉希望さんの展覧会開催準備として、その制作について検証してみようという華鴒大塚美術館さんの企画に私がかかわらせていただいたことから始まった「一鷺栄華」制作研究。その関連企画として、児玉希望さんの描かれた「一鷺栄華」(華鴒大塚美術館所蔵)をお手本に、日本画を学んでいる方々も一緒に描いてみて希望さんのされた工夫、技術について学ばせてもらおうという企画のまとめ。昨日は、参加したそれぞれが制作した研究結果を持ち寄っての<本物と見比べさせてもらう>という現地研究会が開かれました。
 
”何時もながら特別なはからいをいただいた華鴒大塚美術館さんに感謝です。”

 これまでにも笠岡市立竹喬美術館で行った小野竹喬作「波切村」屏風部分の制作や、入江波光作「葡萄に栗鼠」制作もありました。はたして今回はどのような感想を参加した皆さんがお持ちになったことでしょう。その様子を紹介します。
 
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まずは、本物!をじっくり拝見。隣に並べていただいているのは私が制作した希望さんがこのような絵の具、技術、順序で描かれたのではないだろうかとう言う制作工程サンプルです。本画の前にあるアクリル一枚でも色が変わって見えること、トーンが落ちることなど説明している様子です。(※作品調査 昨年この企画がスタートするおり、作品の新たな写真撮影に合わせて額縁から外された状態を見学する段階から参加した参加者も大勢います。)

 実際に自分自身が真似て描こうとすると、画家の工夫、技術、その難しさを実際に知ることになります。どんな絵の具を使うのか、それぞれの工程は教えられても、絵の具の実際の扱い、刷毛、筆の使いこなしがなければ似た姿にはなりません。おりしも今展覧会テーマは、「筆さばき」です。絵の具の濃度と水の加減、乾燥との時間関係、実際に描いてみたからこそわかることがたくさんあったことと思います。

文化財保護・保存のための模写ではありません。絵を描いていくものとして先人の技術・技法を実際に同じように描いて学ぶということは、いわゆる<絵描きの模写>、作者の筆、刷毛を動かす動作、時間までを真似ようとすることになります。そのおり手がかりとなるのは、水を使って描く絵だからこその水の性質です。同じ絵の具を使えばその絵の具の比重はお手本とする絵が描かれた時と同じ、使用する絵の具の粒子・その水の中での挙動を知ることが大切になるのです(水の性質は、江戸時代であろうと、平成の現在であろうと変わりません。このあたりについては、尾形光琳の紅白梅図模写、たらし込みを実際に行ったことが大変有用な示唆となっています)
 

 
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あろうことか!華鴒大塚美術館さんの本当に特別なはからい、現物の間近にチャレンジした制作を並べて見る機会を設けてくださいました。

「たらし込み」の絵の具の濃度のこと、松煙墨、油煙墨の機能の違い、金泥、青金泥の比重の違いによる表現結果の違いなど、実際に制作したからこそわかることがたくさん実感となったことと思います。

本物とは違いますが、絹本に制作した方々もいらっしゃいました。
絹本と紙本の違い。その性質をどのように捉えるか?については、午後からあった筆についての講演会の話にもつながったことと思います。
 

 
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ご覧いただければ分かる通り、大勢の方々が制作をじっさいに持ち寄って参加されました。美術館関係者の英断、アマチュアの方々にとって、このような機会を設けてもらえることは大変稀有なことです。

今回の絵だけにかかわらず、実際に描いてみることで美術館での鑑賞により具体的な視点を持つことが出来ます。また「日本画」、「伝統」、といった言葉にそれぞれのイメージ、具体性を与える貴重な機会となったことと思います。

大切だと思うことを守り、伝えるためには、その理解者、ファンを増やす必要があります。このような試みが美術館に保存収蔵されている素晴らしい作品たち、その作者へ至る深い理解への助けになっていれば幸いです。


※参考 児玉希望作「一鷺栄華」の描法 10/22//2013  材料技法
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2013/102201/index.html
※参考 日本画の再定義 2/13//2013  材料技法
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2013/021302/index.html
(葡萄に栗鼠・華鴒大塚美術館での特別鑑賞会の紹介があります)
※参考 小野竹喬 日本画の技法と素材 2/7//2011  材料技法
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2011/020701/index.html

 
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※参考 小野竹喬作 「波切村」部分の体験制作画像