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9/23//2015  材料技法

絹本描画

■ 先人の方々がどのように絹で制作したのか?実際に試して描き、学ぼうというシリーズ企画。つい先日まで行っていた江戸時代の水墨絵画、そして現在進めている明治から大正の京都画壇を代表するような描法について。
 
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 左の画像は、先日の姫路市立美術館での鑑賞、拝見会の様子です。ひと月に一度、講師として姫路市立生涯学習大学校に伺っているのですが、せっかくならご当地先人の絵を題材に学ぼうという企画に光栄にも姫路市立美術館さんに協力いただくことが出来、生徒それぞれが倣い描き上げた実作をもって今回集まりました。

 描く前に本物を一度拝見し、そして完成後にもう一度見せていただく。絵を学ぶ者にとって、大変ありがたく貴重な機会となりました。

 
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 画像を参考に絹の伸び縮みを考慮した下図をそれぞれが作りました。絹枠張りにドーサ、そして敷写しで線描きを行い、極薄く具引きをした後、墨と水を使って描きます。大きな面積に綺麗なグラデーションを作る難しさ。墨の性質、水の使い方を知っての片暈し、もちろん筆の使いこなしも大切です。
 
最後は絹枠から外して、裏打ちパネル張りを行いました。

 
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墨の色の違い、暈し具合、筆勢、はたしてオリジナルに近づく「気分」が出ているかどうか?

文化財保存のための模写とは違います。作者と同じように、同じ時間で筆を動かすことを試みるのです。水を使って暈す以上、全く同じには出来ません。いかに作者の筆意をくむことができるかが問われます。

終了後、参加者から様々な感想を聞くことが出来ました。
こうした学びを行うようになって、美術館での鑑賞がまったく変わったとのことです。

 
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京都画壇の象徴的な描法の流れを学ぶ試み。

輪郭線の無いところもあります。線も一様ではありません。

 
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下塗りの様子

線描き > 地塗り > 下塗り(1色目)
前足の部分、太い墨線を残して胡粉を塗ります

 
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下塗りの工程 その2(2色目+墨)です


今回は単色ではなく、斑を加えています。同時に出来ない場合は、あとで水を引いて行います。

 
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これまでの下塗りと異なる今回初の試みは、

下塗りに濃度差、暈しがあること、そして斑を加えることです

特徴的な日本画の作業、「二本の筆」、一本に絵の具、もしくは墨、そしてもう一本には水をつけて使います。

 

紹介している画像では、すでに墨の斑も墨書きの時に行っているように見受けられますが、本来なら現在の下塗りの工程で初めてこの作業を行う方が一般的なように思われます。描こうとしている存在のボディーとなるものを作るのが「下塗り」です・今回、先に墨で前もって形を塗り分けているのは、あくまでモデルの柄と似せるため、位置合わせのためのガイドとしての意味合いが強いものなのです。

このあと、背景を塗ります。このとき気をつけるのは、すべて同じ濃度で塗るのではないこと、また塗らない部分もあるということ。塗る絵の具自体は胡粉で、特別な絵の具ではありませんが、このあと行う作業を見越して進めます。

次に、細部の描き込み、明暗のトーン着け、背景との調整と進みます。
そしてそれが終わったら、上塗り、そして仕上げとなります。
基本的に「無いから始める日本画講座」で紹介している作業、工程となんら変わらないことがわかっていただけると思います。