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11/8//2015  材料技法

継続と教育

■ この季節になると「芸術の秋」といった言葉を一時よく聞いたように思いますが、最近はそれほどでも無く感じます。過ごしやすい季節は、芸術のみにかかわらず多様な催し、イベントがいたるところで開催され、それはそれで素晴らしいことには違い無いのですが、だからこそ目の前のものを単に消費するだけではなく、より「継続性」といったことが問われるのではないか、そんなことを思うのです。

慌ただしかった一週間、昨日までを振り返って

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学校と美術館の連携を考える試み、京都国立博物館へ調査に伺ったのはちょうど一週間前でした。

文化財と呼ばれる古物、絵画、彫刻、そのレプリカや素材などを用いて来館者により身近に感じてもらう試み「ミュージアム・カート」を拝見、また「京博ナビゲーター」と名付けられたボランティア活動についても拝聴しました。150名の募集に400名集まったとのこと、凄い!。

また、昨年完成した「平成知新館」でちょうど行われていた琳派400年、「琳派 京を彩る」を拝見。並ぶ人の多さ、展示の素晴らしさを感じました。

続いて「綴TSUZURI 文化財未来継承プロジェクト」を行っている京都文化協会に伺い、文化財を未来に最新のテクノロジを用いて継承する試みの一部を拝見・拝聴しました。

京都文化協会訪問では、ごく近くで綴プロジェクトによって作成された尾形光琳作「八橋図屏風」(メトロポリタン美術館蔵)を拝見、その本物の金箔を貼られた効果に驚きました。
この辺りの詳細については、以下記事をどうぞ
文化財の教育利用 11/2//2015  材料技法
http://plus.harenet.ne.jp/~tomoki/newcon/news/2015/110201/index.html
 
京都文化協会をあとにして向かったのは、四条の「何必館 魯山人と遊ぶ 展」今回訪問の多くを歩きで廻ったせいか、それなりに・・・・肉体的に疲れた一日でした。
 

 
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紹介している画像(左・上の画像)は、私がワークショップ等で古典的な日本画の制作の流れや、用いる材料、道具などを紹介するにあたって実物に触れてもらうために作っている日本画紹介キット(2009年頃から使用、一部最近拡充したものもあります)です。上画像・手前の専用段ボール箱にすべて入っています。
この他、水墨・運筆・扇面画キットなどというものも作っています。折に触れ、その時々のテーマにそって組み換え、運び、紹介しています。

 
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昨日土曜日午前中は、倉敷市立短期大学の授業で学生と一緒に夢二郷土美術館へ伺いました。

子川学芸員の解説を拝聴している様子です。子川学芸員は、午後に岡山大学で予定されている第1回竹久夢二学会での講演を控えたお忙しい中対応いただきました。感謝です!!。

 
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午後まずは天神山文化プラザで行われている「アートの今・岡山2015 dialogues:対話」展の様子を見に立ち寄り、そのまま歩きで市内のギャラリー、「エスプリ・ヌーボー」で行われている個展を拝見、その足で、こんどはI氏賞受賞作家展、硯制作ワークショップの行われている岡山県立美術館へ

 
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硯をつくろう!ワークショップ
山口県の赤間硯を実際に作る作業を体験して伝統工芸に対する理解や、硯、またその廻りに展開する文化(書とか、水墨とか)を考えてみようという試みです。

興味はあったのですが、全参加、制作は出来ず、少しだけ会場を覗くことが出来ました。

 
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荒削りした材料に仕上げ彫り、荒磨き、仕上げ磨きを行います

画像は砥石を使った荒磨きの様子
この作業に使用している砥石も確保がだんだん難しくなって来たという話も印象的でした。包丁などこれまで日常生活で砥石を使ってきたものが、それを必要としなくなってきたことによる影響だとか。

 
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仕上げ彫り工程に用いたノミです。

こうした体験会用に制作、準備されたものだそうです。立派でした。
原材料となる赤間石の確保も指導に当たられている日枝さん方々が行われるそうで、ワークショップ等の開催も含め忙しく、その確保(山にはまだまだ原材料はあるそうです)、「石採り」がなかなか出来ないのだとか・・・。

 
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メンテナンス用の硯砥石

私も墨講座、墨のワークショップ等で、硯を研ぐことを紹介していますが、その硯砥石も様々、先に紹介したように工業的に作られる砥石も社会のニーズが変わってきたことで確保が難しくなったのだそうです。そういえば、私も工業的に作られていたものを再び求めようとして手に入れることができませんでした。

となると、昔から作られてきた自然石のほうが確保が優しい・・・・(最終的には自分で確保!)。なんと、赤間石に合う硯砥石は、その近くの地層から確保できるのだとか。相性の良いものをこうして硯づくり専門の方々だからこそ見つけ出せるのかもわかりません。興味深いお話でした。

 
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県立美術館研修室を出てすぐの地下ホアイエでは、作家による公開制作が行われていました。I氏賞受賞記念作家展 加藤竜さんのパフォーマンスです。


 
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駆け足で天神山文化プラザに戻り、「アートの今・岡山2015 dialogues:対話」展の付帯イベント<対談1 蛭田二郎×上田久利 >に

お二方ともに大学で教育に関わられた(関わられている)方です。彫塑を切り口に美術教育の現場の変貌の話や、美術教育を通じた社会貢献の話、自然とテーマは教育のありかたの話に。

 
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倉敷芸術科学大で以前講義を聞いてくれた生徒が、現在研究していることを紹介に先週の講座日・教室を訪れてくれました。

絵の具を身近な場所から作る試み、手法「水簸」を以前紹介したのですが、そのプロセスをより科学的に行う指導を科学の先生からしていただいて継続・実践しているとのこと、自ら興味を深めている様子、何よりの報告でした。

絵を描くことも研究も、そして教育も、加えて展覧会、普及活動、地道な継続が大切とあらためて思うのでした。