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5/29//2016  材料技法

表具美術展 後楽園 鶴鳴館

■ 岡山県表具内装協会が後楽園内、鶴鳴館で毎年開いている「表具美術展」。描いた絵を掛け軸に表具していただいたり、屏風を作っていただいたり、額装にしていただくことも有りますね。またあるときは絵の補強、裏打ち、そしてパネル張りなどを行なってもらうことも有ります。掛け軸や屏風、巻物、襖、障子の張替え・・・・。生活が西欧化したことによって、住まう家から床の間が無くなったり、襖が無くなったり、伝統文化と呼ばれるような存在の一部であったはずのものが大きな変化の時を迎えています。
 
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後楽園内 鶴鳴館

第48回表具美術展

平成28年5月28日(土)〜30日(月)まで
午前9時〜午後4時まで
(※開催時間については、日によって違いがあるそうです確認の上お出かけください)

 
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書、絵画をどんな表具にするか?表具に用いる布の取り合わせ、しつらえ意匠、参加された表具師の方々の創意の成果がならびます。

書家の方、画家、それぞれの方、作品とのコラボレーション。作者が物故の場合もありますから、この場合は所蔵家の思いを汲み取るといったこともあるかもわかりません。

 
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昔見たことがあるようなオーソドックスな屏風だけではなく、骨組みをあえて見せたり、ベースに立体的なモデリングの創作屏風も有りました。重量を増やさないよう、発泡スチロールを構造体に利用していたり、今流行のマスキングテープを素材に使っているなどと聞くと、まさしく現代と伝統技術のコラボレーションです。

現代美術には、無垢に見えるアマチュア的な表現を尊ぶ流れも有りますが、一方でプロフェッショナルならでは、伝統的・工芸的と呼ばれるような習得に時間のかかる技術と今をいかに結ぶ事ができるかを考えることは、今日的なテーマになるに違いありません。アートを使った地域興し、地域に存在する人、その技術も素晴らしい要素になるはずです。もちろん地域で漉かれる和紙といった素材ももちろんそうなることは当然のことです。

 
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岡山県内はもちろん、京都、大阪、兵庫、鳥取、島根、愛媛の方々の出品も有りました。県、地域による傾向の違いといったこともなんとなく思ってみたり。

現在、奈義町現代美術館個展に出品中の私の模写「黒犬賛」の表具違いも展示されています。両方をご覧になった方ははたしてどんな感想をお持ちになったことでしょう。
 

 
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表具に用いられる技術、素材の扱い。
実演コーナーでの様子に熱心に見入る観客の姿。

糊の技術、糸の扱い、結び一つ一つにに蓄積された価値観技術の姿が有ります。

 
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サツキ咲く、後楽園。大勢の観光客の姿がありました。

今回の表具展、訪れる観客の数は多いのだとか、あまりに日常生活からなくなり、特別な存在となった結果、仕事自体は減ったもののこうしたイベントへの来客は増えたという話が印象的でした。また岡山の表具屋の現状、高齢化、減少傾向は止まらず、こちらも存続に危機的な状況とか・・・・。先日の和紙製造の現場、そしてこの表具の現状、当たり前と思っていたものが、存続にぎりぎりの状況であることをあらためて再確認することになりました。