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12/22//2016  材料技法

表具(表装)という伝統

■ この国の美術品、主に絵画において、長い年月を超えてそのオリジナルな要素を多く残しつつ現在まで伝えられてきたことの裏側には、「表具(表装)」という技術、考え方があったからこそにほかなりません。
今日、情報の記録・伝達において電子メディアがその中心となる中、古よりの物質としての「絵画」に今日どのような意味を見出すことが出来るのか。その一つの手がかりとして、所蔵家も含めて何かを「大切にする」「愛する」といった具体的な表現としての「表具」に注目しています。
 
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 夢二郷土美術館で、夢二作品と表具の関係についての調査を若い現代美術作家とともに行わせていただきました。


 この美術館を訪れ、作品を鑑賞するたびに私が気になっていたのは、これまでに見てきたのとはちょっと違った表具の有り様でした。
 掛け軸の表具といっても様々です。絵・内容によって、厳格な様式の感じられるものもありますが、何故かここで拝見する夢二の掛け軸には、それらとは異なった一括りに判断できない何かを感じていたのです。

 古の日本美術の展覧会において、掛け軸の締める割合は大きく、その展覧会場で感じた何かと、展覧会図録で見るそれとの大きな違いの中にこの表具の有り様ということもあるように思います。また後世の表具のやり替えで大きく印象の変わった作品もあるように思うのです。
 

 
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参考 絵の中にある印象的パターンを、表具の布選びに反映させた例、一文字、中縁、画面の余白との同調など細やか設えが見て取れます。

※表具部分のみ

 
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表具の布を次ぐことにより作った縦の線、画面中のポイントへ視線を誘導する働きを担っていたり、画中の詩に詠まれた、もしくは絵の題材に合わせたモチーフを描表具として加えたり。

※描き加えられた<こうもり>

 
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作家、そして表具師、またある場合はコレクターが主導しての一つのコラボレーション。作品を愛する形も様々です。

宗教に関するものなど、長い年月を大切に伝え続けるための修復、延命のための表具の在り方。また大切であるという具体的表現としての設え(布選び、使用、様式)。

愛の形、飾り付け、内容の強調。より輝きを増す衣服を着せるがごとくの表具。


作品が時を越えて残っていく、伝え続けられる裏側には、その作品に魅力があるのは当たり前のことですが、作家が作った作品がそれだけで完結するのではなく、所蔵家をはじめ、関わる方々それぞれがそれを大切にしようとすることが不可欠です。表具という技術・考え方が実現する長い時間を越える延命。また愛おしく思う気持の表現としての表具。美意識の発露としての表具。

作品が社会や流れる時と関係を持つ一つの接点としての表具の在り方。この国の美意識の発露・表現の一部として、また作家が何かを作り出すおりの歴史的時間を取り込む方法としての出会いとなればと思うのです。

来年には、企画に参加されている若い作家の方々、そして表具に関わられている方々それぞれの取り組み成果の発表展が予定されています。
 
※画像は夢二郷土美術館で行われた2016年12月10日に行われた研究・拝見会の様子です。