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6/6//2020  材料技法

鏡の松制作 その13

■ 描き込み その3 上塗り その2
 
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松葉に粒子感のある松葉緑青を塗ったことで松の葉の塊、実感が少し出てきました。続いてそれに対応できるよう幹の部分にも絵の具を加えます。
幹には前回、朱土で調子を着けた後、ベンガラ、墨を加えて調子の幅を広げ、木肌の複雑なベースを作っています。今回はこの表面に胡粉、松煙墨を使い「たらしこみ」で老松ならではの肌のベースを作ります。

 
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描き過ぎにも思われる骨描きのおりの墨線が地塗り、下塗りで大きく一度まとめられました。再び木肌表面の割れ等を描くことにより細部が強く感じられるようになりますが、これも最終段階では塊として大きくまとめる予定でいます。そのことを見越しての作業です。

 
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枝の部分にも同様にたらし込みを使って木肌表面の実感を加えていきます。
 

 
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背景となる木部と松葉の塊境界となる部分にもう一段荒い粒子の松葉緑青を片暈しで塗り、続いて松葉塊の外周に線によって松葉を加えています。

松が自然に背景に溶け込むように、固くならないようにする工夫です。また線描きによる最外周の松葉描写は部分的な仕上げ作業となるため、慎重に行います。
 

 
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ひたすら描き加える作業が続きます。
松葉外周が出来上がれば、再びより粒子の荒い松葉緑青で内部を纏め、続いてそこに松葉を線で描き加えて、重なりを出し、隈取として群青で暗いまとまりを作ったり、焼いた緑青を上に加えるなどして松葉の塊を表現していきます。

上記で用いている絵の具は、松葉緑青のN0.11を少し焼いて使っています。筆を前後に動かし、表面張力で盛り上げるように絵の具を置いています。
 

※残念なことに・・・・昨年夏から「若竹、鏡の松」制作過程を撮りためてきていた動画映像、静止画が昨日、ハードディスクの故障でほとんど全て消失してしまいました。約250GBありました。別の場所にコピーしていたものが一部残っており、それを使って本日記事をアップしました。
鏡の松を能楽堂に設置、完成してから作業工程動画を編集予定でした・・・・。つい先日新しくしたばかりのハードディスクでしたので、まさかと油断していました。(ただし救いとして、二ヶ月前までの静止画像については、別のハードディスクに残してあり、保存が確認出来たことです。静止画像を使った製作工程紹介はまとめられそうです・)