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10/27//2020  材料技法

吉備胡粉 岡山発の絵の具 その4

■ 岡山県工業技術センター
素材開発部 機能材料科 専門研究員
藤井 英司 さんから再び!!情報をいただきました。

胡粉を使うおりにこれまで感じていたこと、考えていたことが果たして科学的に見てどんなことを示唆しているのか?
胡粉の溶き方は、日本画を描く上で重要な存在であるからこそいろいろと考えさせてくれます。
 
bin102701.jpg

 

まず上記最初の画像は、胡粉を水に溶かして沈殿について調べた画像とのことです。

「沈殿」をどのように捉え、また美意識の発露としてそれを用いることができるか?
 

 
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上記2つのグラフから読み取れることとは?。
専門的すぎて、私では何を読みとれるのか見当がつきません。藤井さんのコメント参考に考察してみたいと思います。

1.ホタテ粉末のほうが、凝集力が弱い >> 沈みにくい
            凝集力が弱い >> 分散性がよい
         透過率が上がらない >> 白濁液のまま

      粒径が大きいので、凝集力は小さい!。
      凝集しないので、分散安定性が高い!。

まさしく!。日本画家が絵の具に望む要素をホタテが満たしているようです。

ただし、
>> 粒径がが大きいと凝集しにくい
上記はすごく重要な指摘かと思います。

>> 凝集しないので、分散安定性が高い
凝集しない理由が粒径の大きさ、それも大きいことにあるというのは目からウロコの指摘です。

大きいと、早く沈むとずっと思っていました。
だから乳鉢でよく擦り小さな粒径にするのだと・・・・・。
分散性を上げるために(親水コロイド)ニカワを使った胡粉「団子作り」があります。

この当たりをスッキリ出来ると、より沈みにくく安定な胡粉の溶き方といったものを普遍化できるかもしれません。

以下、藤井さんよりの追加説明・解説です。
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大きい方が早く沈みやすいのは当然ですが、それ以外の要因として、粒子表面の静電反発力が効く場合が多いです。あとは、形状等。
たとえば、負の電荷−100mVを帯電している粒子と、−1mVを帯電している粒子があるとしたら、−100mVを帯電している粒子は、反発しあうことになり、沈みにくい粒子になります。

なので、粒子の種類とニカワの種類の組み合わせで、出来る絵の具の性質は変わってくるはずです。我々の分野では、分散剤として界面活性剤(せっけん)を入れて、分散凝集を制御します。

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日本画絵の具の根幹を成す胡粉(少なくとも私はそう思っています)の扱い。ニカワを加え団子にし、叩きつけるのも全ては沈みにくい胡粉、発色の良い胡粉を作るためと思っていました。この意味で、私が普段使用しているホタテを原料とした胡粉は、私の期待通りです。しかし、私がサンプルとして藤井さんに送ったホタテ粉(2種類)は、乳鉢で擦り潰していましたが、思いの外大きい粒度でした。

No.1:4.74m^2/g
No.2:4.50m^2/g

そしてメジアン径で比較すると、私が送ったホタテサンプルは、かなり大きい(吉備胡粉サンプル3種のどれよりも)。
なのに、沈みにくい・・・・。

大きい=重い 早く沈むだろう!とはならないケースがあることを知りました。ニカワの力と思っていた分散性確保もホタテ自体が持っている?もしくは粒度の分布といったものが働いている気もします。

言ってみれば、工業製品であるからこそ?吉備胡粉は精度が良すぎる!。

吉備胡粉、ブレンドしてなだらかな分布を作ってやると・・・・もしかしたら?なんてことを思っています。

ニカワの働きに分散性を助ける機能があると思っています。ニカワを加えた状態でどうなるのか?このあたりも探ると何かしら結論らしきものに結びついていくのかもしれません。
松煙墨と油煙墨の違いで語られるカーボンの粒度、分布のあり方、中国のニカワと日本のニカワの違いなど・・・・

きっちり調べれば、もしかしたら日本画絵の具の使いこなしに関する論文が書けそうです^^;誰かやりますか???。