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11/21//2021  材料技法

谷口香嶠展 肉筆浮世絵の世界展

■ 笠岡私立竹喬美術館での「谷口香嶠」展、岡山県立美術館の「肉筆浮世絵の世界」展に行ってきました。谷口香嶠展については、11月28日に特別ギャラリートークを仰せつかっていることもあり、どんなお話をさせていただくかも含めてまとめてみたいと思います。また肉筆浮世絵の世界展については、コロナ禍のため延期続きでしたがやっと開催、とても良い展覧会でしたのでその感想まで。


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笠岡私立竹喬美術館 会期は12月5日(日)まで

初日と先日の日曜日、都合2回拝見させていただきました。まず第一印象として感じたのは、とてもうまい作家であるということです。
一言に「うまい」といってもどういう事?と疑問に思われるかもしれません。このあたりをどのように説明出来るかが問われますね(頑張ります^^;)。プロの絵かきですからうまいのは当たり前ということも出来ると思いますが、ここではやはり確かな技術ということを上げたいと思います。日本画の技術をどのようなものとして捉えるかも重要なポイントです。例えば筆や刷毛の使いこなしについてです。通常の絵画としての評価軸とは違う視点に注目することであえて日本画とこだわることにも焦点を当てられたらと思うのです。トークでは見どころ、技術解説を絵描きならではの視点で行おうと思います。

師匠は幸野楳嶺であり、同門に竹内栖鳳、菊池芳文、都路華香がいます。私なりのそれぞれに対するイメージは、竹内栖鳳の西洋的価値観の受容、エンターテナー。菊池芳文の桜、伝統。都路華香のチャレンジ精神、個性表出といったところでしょうか。竹喬美術館のこれまでの取り組み小野竹喬の名を冠する美術館として本人はもちろんですが、日本画・京都画壇、そして近代をどのように画家たちが受け止めたかについての研究、それをどのように企画展としてまとめ行ってきたか、谷口香嶠についての本展、没後の遺墨展からおよそ100年ぶりとか、これほど描ける人が多くの人に知られていなかった事も含め、これほどの数を集め開催できたこと、意義深い展覧会と思います。

1)写真的写実ではない世界、見えないものを描く
2)材料を使う技術における美意識のありか
3)知識と技術がプロの証
4)京都という場 東京との違い
5)工芸と呼ばれる存在との関係

どの絵も見ていると自然と空気感、風を感じさせてくれるように思います。わざとらしい表現ではない世界、絵画表現での柔らかさの実現には(描くための)時間が必要です。また伝えるための技術としての構図の考え方など、掛け軸、いわゆる長物と呼ばれる形も現在の絵画として考えると特徴的な要素になるように思います。

伝統的に見える絵の具の扱い、しかし描写の中に含まれる新しさの要素などにも触れられたらと思います。

※記事発信支援システム!使用しているCMS(作ったおよそ20年前、当時こんな言葉はありませんでした)の文字コードの扱いに問題があるようで、名前に文字化け(コード表示)があります。申し訳ない。文字設定に関する部分のソースを確認し、プログラムを修正したいところですが・・・そのままです。お詫びまで。11月23日手作業でソースをutf-8にコードを変更、表示させました。

 
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岡山県立美術館での<熊本県立美術館 今西コレクション 肉筆浮世絵の世界 アナザーワールド発見!>12月19日(日)まで。

コロナ禍のため、開催予定が幾度となく延期されました。中止にならず、こうして開催できたことがとても嬉しく思う展覧会です。

浮世絵のイメージといえば、これまで目にすることの多かった版画のことがまず頭に浮かんでしまいます。実際、私も会場に入り実際に見るまでは、まさしくそのイメージでした。それが本展には余計な先入観であること、よい意味で予想を裏切られたのです。

会場に行く前に一つアドバイス!。眼鏡の必要のない目の良い方なら大丈夫ですが、そうで無い方は出来るなら単眼鏡、オペラスコープなど持参することをお勧めします。否応なく細部の見どころ、表現の凄さを詳細に見たいと思う衝動が出てくるように思うのです。少なくとも私はそうでした。

掛け軸で壁面に特設で展示されている作品は、アクリルケース越しに作品まで15cm程度まで近づいて観ることができますが、通常の展示ケース内展示では約1メートル程度は離れて観ることになります。老眼、乱視には、大変きつい距離感なのです。

髪の毛、鬢のあたりの表現、着物の質感、柄の表現など、日本画(この場合は日本絵画と言ったほうが良さそうですね)の伝統的絵の具の扱いとして、3層から4層程度のレイヤーで仕上げた方が発色、絵の具自体の鮮度もよく美しいと聞いたのは学生時代、まさしくその実践!実証と思われるそれぞれ。髪の毛の一本一本、細い線は墨による描線、透け感、ボリュームは粒子のあるカーボン、もしくは岩絵の具を焼いたもの、絽の着物などの表現も岩絵の具の心憎い描写が光ります。

岡山県立美術館2階の展示室全てを使った企画展。観覧には1時間もあれば大丈夫と思って夕方訪問しましたが、とても時間が足りません。図録も作成されていますが、会場の印象はこんなもの(図録で見る感覚)ではありません!!!。作品数130点!凄いボリューム、これでもかと見どころのある作品が並んでいます。画家の神経の集中、密度が感じられる展示空間、作品群です。
図録ではとても伝わりません。是非会場に足を運び、実物にふれることを薦めるおすすめの展覧会です!!。私もゆっくり時間を確保して、加えて単眼鏡など持って!もう一度行きたい!!!。