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5/21//2022  材料技法

屏風制作について

■ 天神山文化プラザで「表装」という展覧会が2017年に開催されました。日本画制作に関わり、その材料となる和紙や膠の現状を調べる中、表具といった工程を支える方々、仕事にも注目することになったのです。岡山県表具内装協会メンバーで企画する展覧会もそろそろ閉じようかという話を聞いたのもこの調査の折でした。少しでも多くの方々に仕事を知ってもらう。新しい可能性を見つけられたらという企画でした。この企画展を通じて縁をいただいた表具師方々の協力で、大学生が屏風づくりに取り組むようになったのは2018年。地域の祭りに出来ることで参加する。減少した観光客を呼び戻すこと、倉敷屏風祭参加に向けて作り始めたのです。
 
 
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画像は「表装」展に付帯するイベント、天神山文化プラザでの掛け軸作成デモンストレーションの様子です。数多くの工程、日数を必要とする作業ですが、テレビの料理番組のように段階ごとのサンプルを用意し、一日ですべての工程を実演して見せるという野心的な試みでした。この他、調査の過程では、屏風作成のプロセスも見せていただきました。

 
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学生自らが屏風を作り、それに絵を描いて倉敷屏風祭に参加する。
2018年に始まった試みです。この試みは2019年も継続し、5名程度でチームを作り、屏風を完成させる。それに各自絵を加え合作の形で完成しました。完成作は、阿智神社や町家、商店にも飾っていただき、観光客、町の方々との交流を深めました。
阿智神社への屏風奉納も、2年にわたって実施することが出来ました。
このほか、日本画ゼミ生による屏風制作も行いました。こちらは一人一つの制作を行いました。一人で責任を持って制作を行う、作品自体のクオリティーアップを行うことになりました。
 

 

2019年暮れからの新型コロナウイルス禍、2020年、2021年、屏風制作こそ日本画ゼミで各自継続したものの、二年続けて屏風祭は開催されず、結局発表も行われませんでした。
幸いにも2021年度卒業制作展、修了制作展を開催することが出来、卒業生、修了生の作成した屏風を展示することが出来ました。

 
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今年も頑張って各自制作しています。日本画を学ぶ学生は、2021年度学部3年から各自屏風を作りそれを支持体として絵を描くこととしました。こちらの屏風も完成しています。そして今年、2022年度も屏風制作を継続中です。
出来上がったたくさんの屏風。日本全国を見渡しても日本画絵の具を使った新作屏風がこんなに出来ているのは、稀有なことに違いありません。
展示の一つの機会にと、児島にある旧野崎家住宅での展示を現在計画中です。建築と屏風の組み合わせ、ポイントは若い感性による作品です。

 
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どんな展示が可能か?。本当に展示させていただけるかどうか?、ご相談も含めて現地見学をさせていただきました。

改めて、本当に立派な建築であることを認識することになりました。
また旧野崎家住宅の前にあるジーンズ・ストリート、こちらと何かつなぐ展示は出来ないか?そんな新企画にも取り組めたらということになったのです。

 
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展示場所を捜すと同時に、制作している屏風についても調査を進めています。屏風の骨を制作している工場を見学させていただけることになったのです。

襖、屏風の骨を制作している植田木工さんの工場です。

 
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その工場は、真庭市月田にありました。建具工場ということで、それほど規模が大きいとは想像していなかったのですが、たいへん大きな工場でびっくりしました。聞けばカバーするエリアは中国地方全体、ものによっては関東まで製品を出荷とのこと。
ハウスメーカーの建具の大きさ、昔ながらだけではない姿を拝見することが出来ました。

 
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襖の骨と屏風の骨の構造の違い、また用いる材料、杉の木について、その特性や木組みについてなどたくさんのことを教えていただきました。

 
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丸太から大きな柱や板へといった製材時に出てくる細い端材から、その特性を読み取り、適したものを抽出加工して襖骨、屏風骨に加工しているということにも驚きました。

巨大な乾燥機や糊をつける機械、紙や板を貼った折に圧着する機械や、ホゾをコンピュターコントロールで作る機械など、機械化についても驚かされました。
こういったことが対応できているから、この工場が生き残ってきたのでしょう。同業者は減少の一途だそうです。
 

 
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旧野崎家住宅での展示を目指して新作屏風の制作を始めます。今までにない表現を可能にする。製材所の方々にも知恵、加工をいただきました。発表をご期待ください。