TRIO 9R-4 受信機
こちらは、1954年、昭和29年に発売された通信型受信機です
ダイヤルデザインは、ハリクラフターズ S-38のコピーでしょう
ほぼ同時期に、9R-42というモデルも発売になったようですが、違いは採用されたVCだけのようです
9R-4では、430pF 3連VC
9R-42では、250pFと180pFの2セクションに分割された 3連VC の採用です
最終的な違いは、周波数のカバー範囲にあります
こちらの9R-4は、BC帯から30MHzを4バンドで連続カバーします
具体的には、
A:BC帯
B:1.6〜4.8MHz
C:4.8MHz〜14.5MHz
D:11MHz〜30MHz

9R-42は同じ4バンドですが、
A:BC帯
B:3.5MHz〜7.5MHz、
C:7MHz〜15MHz、
D:14MHz〜30MHz 
と、一見してアマチュア無線利用に都合の良さそうなバンド設定になっていますが、1.6MHz〜3.5MHzの間は受信不可能です
使用目的で選ぶ必要があったようです
余談ですが、当時は、1.9MHz帯の使用は、アマチュア無線用に許可されていません(許可されたのは1966年/昭和41年だったと思います)

このあたりの詳しい情報がありません・・・
これらは、春日無線工業・・・このトリオ前身の会社からの発売で、手元にある会社がトリオになってからの資料に掲載がありません
Sメーターは、純正ではありません
苦労というか努力の結果です

余談ですが、使ってみればメータ「0」調整VRがフロントパネルに用意されている理由が分かります

ダイヤル照明は、メインダイヤルとサブダイヤルの間にひとつパイロットランプの用意があるだけで、Sメーターには照明はありません
リアパネルの様子

ANT端子は、陸式ターミナル

ACコードの取り出し部には、安全確保のためオリジナル通り、きちんとゴムブッシングを取り付けました
シャーシ上面です
ご覧のように、GT管、MT管の混在です
漁船への搭載など、耐震という観点から実績のある?GT管を使用することも想定してあったようです
AFトランスの内臓はありません
スピーカー側に持たせる設計です

後継の9R-4J(1958年発売)になると、真空管は整流管を除き、残りは全てMT菅に、そしてAF出力トランスも内蔵されました(いわゆる8Ω出力に)
スピーカー対応
手元にあったφ120のスピーカーを内蔵したスピーカーボックスに、これまた手元にあったAFトランスを内蔵させ、UY 5Pのプラグを取り付けることで本機対応としました(あるもの総動員です!)
これで本機の外部スピーカーとしての接続は、OKのはずです

余談ですが、このUY 5Pのプラグを差し込まないとAC電源が通電されないようになっています
入手した時点でメーターは純正ではない別のものが取り付いていました(配線はしてありませんでした)
調べると5mAスケールです(+分流器で50mA)
最近のメーターではデザイン上の問題がありますので、この旧型メータに右上のメータ(1mA)の中身を、苦労して(頑張って!)移設、2個1としました
写真中央が、その完成品です
スケールはどうしようもありませんが、機能としてのメーター表示はこれでOKです
シャーシ上面
電源トランス側から
その上に見えるトランスは、平滑用チョークトランスです
その右隣りは、BFOです
IFからは随分離れた位置に組み込まれています

赤いビニルテープが巻かれているのは照明用PLです
この後、オリジナルのように、ちゃんとゴムブッシングを使って取り付けました
ダイヤル照明ランプ点灯は、こんな感じ
シャーシ上面 入手時の様子です
RF-IF-検波-AF側から

RF-OSC-Mix が、MT管です
IF-検波-AF、整流についてはGT菅です

糸掛けダイヤルは、入手したままできちんと駆動できます
VCは、ひとつで2軸をもつ特殊な構造です
リアパネルにSWがあります
何の切替かと思って配線をみたら、電源トランス一次入力側の100Vと85Vの切替スイッチです
当時の商用電源事情が伺い知れます

US 5Pソケットは、スピーカー接続用に用意されたもの
B電圧が出力されますので、扱には要注意です
ACケーブの引き出し部も、ちゃんとゴムブッシングを用意しました(左写真は、入手時点での撮影)
シャーシ下の様子
これは修復後のものです
セラミックコンデンサの利用はありません
抵抗器は、L型
時代を感じます
平滑用ブロックコンデンサは、完全に容量抜け
通電したらハム音しか聞こえない状態でした
元のコンデンサは残して47μFのコンデンサを2個追加しました

その前に整流管5Y3が、NG
50V位しか整流出力がありません
手持ちのものに交換することで、200数十Vを得ることが出来ました
 0.047μFのオイルコンデンサ3個が全滅
うち一つは白煙をあげて・・・熱くなっています
いずれも絶縁不良です
630Vマイラ・コンデンサに交換しました
455KHz部分でのバイパスコンですから、これで良いでしょう
電源と、バイパスコンデンサの対応後、取り敢えずなにがしかの受信はするようになりました
が、感度が悪い・・・RF増幅6BA6(回路図では6BD6)のプレートに50V程度しかかかっていません
本来2KΩのところに、15KΩの抵抗が取り付いていました
前オーナーのミスかな・・・これで200Vかかるようになりました
MT管には大きな性能低下(劣化)はありません
GT管については、手持ちば無いのでなんとも・・・です

調整を進めた結果で、感度を測ると、そこそこ優秀でした
Cバンド:7.000MHz  
AM 30%変調 ON/OFF S/N10db が得られる入力は 1.5μV
ビートをかけて受信 RF信号のON/OFFで、S/N10db が得られる入力は 0.5μV
IFゲインを絞ることで(AFゲインを上げて、IFゲインで音量調整するイメージ)、7MHz帯SSBも復調できます

Dバンド:14.000MHz  
AM 30%変調 ON/OFF S/N10db が得られる入力は 2.2μV
ビートをかけて受信 RF信号のON/OFFで、S/N10db が得られる入力は 0.8μV

BC帯はガンガン入感します

IFセットノイズ(IFノイズ)が低い・・・IF以降の真空管(GT管)に劣化があるのかも・・・
2023.09  JA4FUQ

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