hallicrafters S-53

少なくともバンド切替ツマミは、社外品です

本機は、1948年から49年にかけて発売された民生用通信型受信機です
当時は、S-38が有名ですが、ひとつ上位の位置づけと思われます
BC帯から54.5MHzまで、5バンドでカバーします
  A:540KHz〜1650KHz  B:2.5MHz〜6.3MHz  C:6.3MHz〜16MHz
  D:14MHz〜31MHz    E:48MHz〜54.5MHz
構成は、中間周波増幅2段のハイフレIF(2075KHz)シングル・コンバージョン・スーパーヘテロダイン方式で、BFO回路が内蔵されたMT管4球+GT管4球の8球構成です 
  6BA6 ― 6C4 ― 6BA6 ― 6BA6― 6H6― 6SC7 ―6K6GT―5Y3GT
本機では、オシレータに専用管を配し、ミキサーとは別に構成してあります
電源は、トランス式 筐体サイズは、S-38と同じですが、重量は約3Kg重くなっています
  178H x 327W x 184D   約8Kg
見たイメージもS-38とは違いますね
このシリーズですが、発売3年後には、後継機 S-53A が発売されました
こちらは、IFが、455KHzとなっています
どう考えても、イメージ混信には不安があります・・・50MHz帯もカバーする受信機とすれば特に!
2MHz帯が受信できないということの改善策? でも仕様を見る限り受信範囲の差はありません
webで情報を探す限り、S-53といえば、S-53Aのような雰囲気が感じられます(S-53の存在イメージが薄い!)

S-53の特徴というか、本機を確認できる機構部品
このでかい2075KHzのIFT群
ミキサーのプレートには、集中IF
これこそS-53です
S-53Aでは、小型のIFT(455KHz)に変更されています
集中IFもありません
ブロック型電解コンデンサは、劣化のためチューブラ型のものに交換されています
上蓋がこのように開く構造になっています
IFT下側の調整以外、すべてこの状態で調整できます
実際、ケースに収めないと周囲のノイズを拾ってS/Nが悪化します
S-38も同様ですし、通信用受信機 FRDX400でも同じでした
シビアな調整をするには、ケースに収めた状態で調整できることは、大きなメリットです
リアパネルです
向かって右から左へ
ANT端子
Phone出力
Phone ― スピーカー 切替スイッチ
Phone入力 レコードを聞くことができます
ACケーブル
リアパネル側からシャーシ上面を写したもの
RF段はMT管、検波以降はGT管の組み合わせです
RF段には、当時最新のMT管を採用、です
50MHz帯までカバーの必要性から、ミキサー管(6BA6)とは別に、発振管(6C4)を採用したものと想像されます
このように簡単に上蓋が開きます
スピーカーが天板に取り付けられています
シャーシ―との接触不良問題を生じさせないよう、ケースの左右にシャーシとの接触を確実にするアースベロが用意されています
そのためケースの組付けには手がかかります(アースベロがシャーシに引っかかることを避ける作業が必要になる)
が、静かな受信フィーリングに貢献しているものと思います
本機のダイヤル・スケールです

黄カーソル:メインVC  
赤カーソル:スプレッドVC
横行ダイヤルが流行りだした頃の製品です
今の状態は、52MHz付近を受信中です
50MHz帯の受信は、メインVCは抜ききった位置で、スプレッドダイヤルで選局するというナイスなアイディアというか、現実的な扱いです
50MHz帯とスプレッドダイヤルのスケールが上下の位置関係にある理由が分かります
メインダイヤルカーソルは、Dバンドまで(黄カーソル) この時、スプレッドダイヤルは100の位置にセットし、0の方向に選局です(赤カーソル)
Eバンドは、メインVCは抜ききった位置で、スプレッドVCが直接カバーします
トランス右のチューブラ型電解コンデンサ群は、ブロック型電解コンデンサ代替のものです(3個で対応)
シャーシ下の様子
トランスの右下のLは、BFO発振コイル
中央のトリマ群、オシレータ用
右端のトリマ群は、アンテナ入力用

本機のIFは、2075KHzです
アンテナ入力にはトラップフィルタが挿入されているなど、IF周波数近辺のすっぽ抜け対策が取られています
が、発売3年後には、IFを455KHzに下げたS-53Aという次期モデルを発売しています
よほど2MHz台のすっぽ抜けが問題になったのか、IF帯域(選択度)が問題になったのか、あるいはコストの問題なのか定かではありません
イメージ混信を考えれば、一発で455KHzへの変換はどう?って思いますね 
それ以上にメリットがあるとすれば、選択度の向上かな、です(後述)

特記すべきは、IFゲイン調整がついたこともあって、SSBの受信も可能なことです
またセットノイズは、ずいぶん低い・・・S-38等と比べて、感度は大差はないものの随分静かに感じられます
IF増幅管を軽く使ってあります(現状で、SG電圧50V位)
7MHz帯と50MHz帯で感度を測ってみました
電源は、115Vでの稼働です

1KHz30%AM変調のON/OFFによるRF信号で、S/N10dbが得られる信号強度
  7MHz帯  10μV       50MHz帯  14μV
BFO-ONで、ビートをかけてRF信号を受信し、RF信号のON/OFFにより、S/N10dbが得られる信号強度
  7MHz帯  1.6μV     50MHz帯  2.0μV
さすがに50MHz帯では、ビート音は濁るし、周波数安定度も今一つではありますが、聞こえるかどうかということだけで語れば、意外にも良く聞こえます

選択度
BC帯でですが、1494KHzのAM放送と、1500KHzのSG信号が同時というか同じダイヤル位置で一番良く聞こえます
7MHz帯SSBにおいては、BFO周波数が固定であるため、ダイヤルを回して(微調して)選局しますが、選択度はあまり気になりません、最初から耳での選別です
2021.08  JA4FUQ

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