Heath-Kit SB-102
1970年代前半、USで販売されていた本格的SSB/CWトランシーバ(Kit)です
IF:3395KHzは、TRIO TS-510以降、模して採用されたHeathのオリジナル
SB-100/101/102と、3世代続き、そののちオール・ソリッド・ステートのSB-104
真空管モデルの最後となったマシンです
弟分にHWシリーズがあり、HW-100/101と製品がありました
いずれも電源部は別で、AC用DC用それぞれに用意がありました
当時標準の、SSB/CWで80m〜10mバンドを500KHz巾単位でカバーし、送信ファイナルは、6146Bパラと、きわめて標準的なHFトランシーバです
メイン・ダイヤルは、コリンズ同様のフリクション・ドライブ方式が採用されています(1回転25KHz)
KWM-2が$1100以上していた時の$400(約1/3)ですから、とてもリーズナブルというか無線家に手を出しやすい、それも自作を楽しめるという位置づけの商品だったと思います
当時の記憶ですが、DXをやっている中で、SB/HWシリーズは、随分多くのユーザーがいたように思います 
 
日本では、SONYトレーディングが代理店をしていて、当時そこから購入して組み立てて実用していました
外部受信機として、FRDX400とか、75A-4を使っていたように思います
二十歳代前半のころです(道楽をさせてもらっていました!))
当時、USでは$400くらいだったと思いますが、国内では20数万していました(1$=¥360の時代 マニュアルの翻訳/日本語バージョンの用意もコストアップの要因でしょう)
LMO(Linear Master Osscillatorの略/VFO)以外、すべて部品からの組み立てで、今改めて見ても組み立ては大変そう!と思いますHi
このLMO、この102だけが全て半導体化されたものが採用されており、100/101は発振はFET、バッファは真空管によるものです(下段SB-101情報を参照)
安定度とリニアリティは、非常に良いものです
弟分の一番の違いは、VFO&メインダイヤルで、こちらはリード・アウト5KHzイメージです(兄貴のSBシリーズは1KHz直読)
また、HWシリーズでは、VFOそのものもキットの対象です
ということは、もしかしたら完成品として用意されているLMOは、Heathとしては仕入れ製品かもしれません
 

純正電源HP-23Aとのツーショットです
SB-600という外部スピーカーがあれば、その筐体に内蔵できます
HP-23Aには、バイアス調整VRが付いていますが、SBシリーズでは使用しません(本体内蔵VRで調整)
中圧切替(250V/300V)があるところはユニークです
SBシリーズは、300Vを使用します
HP-23Bも持っていますが、こちらはバイアス調整VRは付いていません

シャーシ上面です
ファイナル部のシールド板を取り外しています
写真は、シャーシ底面です
配線について、ワイヤー・ハーネスの採用で、とてもすっきりしています
RF部のシールド板を取り外して写しました
高周波部分は、きちんとシールドされています
基本は、アルミ素材
ロータリーSW間のシールド板をきちんと活かすために、そのカバーには、きちんとクランプ(接点板)が配されています
3395KHzクリスタル・フィルタは、SSB/CW切り替えが可能です(400Hz巾CWフィルタは、オプション設定)
切り替えは、スライドSWを出入りそれぞれに配して、連動させるアームを使って行います
ダイオードSWではなく機械的な切り替えです
こちらオリジナル
写っているゴム・リングは、まだ実用できるレベルです

チェーン駆動にするためには、左右のVCの間隔が狭く、右側のVCシャフトに取り付けるギア構造のものに工夫が必要になります

この改造、結構大変です
オリジナルは、上写真のようにゴム・リングによる駆動です
時間の経過とともに、ゴムは劣化し最後は切れてしまいます
改造された1台があって、真似ました
チェーン駆動(ドライブ・RF)と糸掛け(ファイナル・ロードVC)に改造です
シャフト径がUSでは、1/4”(6.35mm)、国内は6mm
合わせるのが大変・・・ドリルと丸ヤスリのお世話に
シャフトも3分割です
糸掛けは、プーリー内側に掛けるスプリングさえ適当なものがあれば対応できます
LMO上部に配されている10VのDC電圧を得る部分
ヒーター電圧12.6Vを半波整流して、ツェナー・ダイオードにより得ています
写真はオリジナルですが、この際ですから3端子レギュレータに変更しました
右側のコンデンサ、電圧を上げていくと数100mA電流が流れるという問題が判明、時間を経過すると、こんな問題も生じるということがわかりました(この症状は、初めて!)
もちろん交換しました
写真にあるPLは、ツェナーに電圧供給する位置に直列に入ったもので、電流が流れると抵抗値が下がるフィラメントの特性を活かしたものと思います

 おまけ  SB-101とSB-102の違い
細かいところは別として、大きな違いはLMOのみ
まずは大きく変わらないフロント・パネルから
エンブレには、ちゃんとSB-101の表記が見えます

MICジャックは、オリジナルではありません
当時のデファクトは、TRIO-4Pでしたね
SB-102 LMO
発振、バッファともに半導体で、DC10Vを供給

ファイナル部のシールド板を取り外しています
SB-101 LMO
バッファ部は、真空管で、DC150Vを供給
LMO内部で、DC10Vを得ています
SB-101のシャーシ上面
LMO回り以外、見た目の変わりはないように見えます
長期利用には、いつか問題になるであろうゴム・リングの採用部分(今時点は無事ですが、ひび割れがいっぱい!の状態)
ロードVCドライブも、オリジナルはゴム・リングの採用
写真は、糸掛け式に変更した現状です(付いていたゴム・リングは、伸びて使用に耐えられなかったため)
TRIOも、最初のIF=3395KHz採用モデルであるTS-510は、ゴム・リング方式、まさにモデルとなった本機と同じですが、TS-511・・・もしかしたら途中からかもしれませんが、チェーン駆動方式の採用でした
余談ですが、VCのステータを浮かせて使う方式の採用は、ファイナル部の中和条件を崩さないためのもので、ステータ側を接地して使う連動VCでは、得られないメリットです(μ同調もこのメリットが得られます)
言い方を変えれば、安易な2連VCの採用は、安定した中和がとれない、ということです 

SB-102を2台入手、良いとこ取りとしました・・・なにせ古いもので
シャーシ等はすべてアルミ製で、さびなどは生じません
プリント基板は、ベークライト製で、部品と合わせ劣化は否めません
コンデンサについては、日本の多湿であることを踏まえ、セラミック・コンデンサ以外はまずNGと考えるのが正解のようです(電解コンデンサ以外、意外ともっていました)
発熱の大きい抵抗器についても、怪しいものは交換しました
真空管は全て、入手時点で入っていたそのもので、交換は一切していません
調整はきちんと行いました

40数年ぶりでしょうか、懐かしい音を耳にすることができました
S/Nもよく、歯切れのいい受信音です
チューニングについては、少し手間取りますが、これは致し方ありません
今どきの10Hzステップのデジタル処理されたものとは異なります(自身の手が、なまったのかも!?)

 S/N10dbが得られる入力電圧 
(スペックは、0.35μV以下)
 送信出力 
 7.1MHz 0.3μV 約100W
14.1MHz 0.25μV 約100W
21.1MHz 0.3μV 約100W
28.1MHz 0.35μV  約80W

新スプリス規定問題はありますが、対応出来れば現在でも十分実用に供しそうです

2019.11   JA4FUQ

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