STAR SR-600

 日本初の局発水晶制御、可変中間周波数方式のスーパーヘテロダインということで1963年末に登場
平たく言いかえれば、コリンズタイプのスーパーヘテロダイン方式の国内初採用ということです!
ここまでにあったダブル・スーパーヘテロダインは、1st−IFも周波数固定のものです
イメージ混信に強くということであって、周波数安定度についてはハイバンドでは当然問題がありました
構成的には、Drake2-Bと極めてよく似た設計です
フロント・デザインも左右対称でUSライク、色々な特徴を持ち合わせた受信機です
サイズは 385W x 185H x 255D  重量 約11kg と、やや大型 
Drake2-Bと、ほぼ同様の周波数構成で、全体をデラックス化した(付加価値を重視した?)、いかにも日本的なモノづくりを感じる製品です
1st-IFが、3.4〜4.0MHz それを455KHz、そして55KHzに落として必要な選択度を稼ぎます
構成は、高一中二 3.5MHz帯以外は、トリプル・スーパーヘテロダイン方式となります
ここまでは、Drake2-Bと同じ
28MHz帯は、3分割して標準でフルカバー
ノッチフィルタ、100KHzマーカーを内蔵
VFOは、1KHz直読
などなど、基本は同じであっても、あきらかにDrake2-Bの上を狙っています
シャーシ素材が鉄というのがイマイチですが、機構的にはうまく作られているように思います(高級感が見て取れます)
メインダイヤルは1KHz直読と、当時の日本では画期的
ダイヤルは、1回転100KHzです
ダイヤルとスケールは、同軸/1対1です
このVFO構造は、バリL/ダストコアを前後に出し入れする独特なものです(Drake4シリーズとも機構は異なります  参考:Drake TR-4
詳細は下段で

照明ランプは、Sメーターを含め、このダイヤル奥の一発(1球)だけです
ケース背面

ケースはきっと再塗装されたものと思います

前オーナーから分けてもらった端子台はひとつだったもので、破損していた2つの端子台のうちSP接続側を交換しました
右端のK型100KHzクリスタルの存在が大きく見えます
ケース内部

サブシャーシが多用されています
各セクションを独立させることで、内部ビート混入を軽減させることを狙っています
左から 55KHzバンドパス部
2nd-Mix & VFO部
RF/1stコンバート部
メーター下に見えるケースはBFOのシールドケース
ケース内部
独立したRF/1stコンバート部の中でも、同調VC部分は別シールドケースに収納されています
RF/1stコンバート部と、2nd-Mix & VFO部の間に見えているシールドケースの中にあります
シャーシ下
ブロックごとのサブシャーシ構造が多用されているため、シャーシ下は非常にすっきりしています

AF出力トランスが大きく見えます
左端のトランスは、電源平滑回路のリアクター(チョークトランス)です
独立したRF/1stコンバート部
この構造ほか、クリスタル周波数の選定、結合回路などの工夫でDrake2-Bと比べ、ダイヤル展開周波数内のビート妨害を低減しているというコメントが新製品紹介記事に記載があります(あきらかに2-Bを意識していますね)
同調VCは、ここからは見えません、この奥にある別シールドケースの中に収納されています
これらの構造は、そのままSR-700に引き継がれています

2nd-Mix & VFO部(中央の独立ケース)
写真「上側」のLは、1st-IF同調用
写真「下側」のLがVFOです
この2つのLのダストコアを同時に
ひとつの軸(ダイヤル)の動きで出し入れします
2nd-Mix & VFO部は、独立したケースに収まっています
特徴的なVFOメカ部です、シールドカバーを取り外して写しています
バリL/ダストコア方式です
ネジのピッチによるコアの出し入れ・・・なのですが、長方形の板(結果、板バネ?)を利用して、直接ダストコアをダイヤル軸で駆動するのではない方法がとられています
写真にあるように、メインノブに直結した軸と、ダストコアの軸とは別の構造です(手前、白のねじロックが塗布されているものがVFOダストコアです)
メイン・シャフトは、この板を前後に動かします
同じ板に取り付けられたダストコアが前後に出し入れされます
最初は、目視でもぎこちないダストコアの動きだったのですが、シリコングリスの塗布とメイン・シャフト位置の調整で、かなり落ち着きました

余談ながら、この方式には、ちょっと無理があるような気がします
前後に平行移動するところに、支点がある板がくっついています
可変中間周波数方式の採用ということで、1st-IFの同調をとるバリLを連動させるために、この構造を採用したものと思われますが、VFOの動作だけで見ると不安定要素を増やす構造のように思われます

0〜600KHzのスケールは、メインの回転軸により糸掛け方式で駆動されています

下に白っぽく見えるシールドケースの中身は、55KHz可変バンドパス・フィルタ部です
ノッチ・フィルタ部
ダストコアに直接ツマミが付く構造で、どの位置が正しい位置かが一見ではわかりません
実際に試してみて、見つけました

VRは、DEPTH(深さ)調整用で、フロントパネルより調整できます

余談ですが、BFOも同様にオシレータのダストコアをそのままフロントパネルからツマミで回す構造です(数回転します!)
100KHzマーカーを内蔵
クリスタルは、なんとK型(K-2型)
ちゃんと発振します
HC-6/Uと比べて、いかに大きいか・・・

周波数補正のため、Cを追加しました(周波数が高いほうにずれていました)

本機は、11球による、高一中二構成で、6BE6によるプロダクト検波、6AL5によるAM検波&AGC検出を行います
1st-IFは、3.4〜4.0MHz
2nd-IFは、455KHz
3rd-IFは、55KHz です

手元の資料といえば、CQ誌1964年1月号にあった新製品紹介記事のみ(回路図公開)
詳細は分かりません、実践あるのみです
いつもどおり、メカの清掃からスタート、真空管チェックはいずれもOK(の範囲)
破損していた端子台の交換、切れていたアンテナ線の半田付けなど、必要な修理を行いました
調整箇所は、ほぼほぼ同調が取れていました
ノッチ・フィルタのツマミの位置が違っていた・・・くるくる回る、ダストコアにそのままツマミが付いたもので、どの位置が正しいのかは一見では分かりません
メーターは、もしかしたらオリジナルではないかも…感度が良すぎのため、シャント抵抗を追加しました
VFOの安定度…ドリフトということではなく、機構的な問題で周波数が安定しません
ある受信周波数からメインダイヤルを少し回して、元の位置に戻しても正確に元に戻りません、周波数が微妙に変化し、その動きもぎこちない、すなわち周波数が少しではありますがランダムにジャンプする感じで、SSBの復調には苦労します
VFOのメカに起因する少々厄介な現象です
先に記した対応で、かなりの改善はできましたし、直近の100KHzマーカーでのダイヤル・スケール合わせで、±1KH以内に収まるくらいのダイヤル・リニアリティは得られました
最初苦労したSSBの復調に苦労することは、ほぼなくなりました
ダストコアの動きをスムーズに安定できない・・・ダイヤルメカ全体の劣化ということなのか、しばらく使われていなかったもので、使い込めばきちんと復活(復元)するものか、今時点では不明です(現状で、ほぼほぼ正常に使用できます)

本機は、電源整流回路以外全て真空管で構成されています
Drake2-Bが、たまたま手元にありますので簡単に比較ができます
LCフィルタについて、切れはDrake2-Bの勝ちのように感じます
ノッチはよく効きます(Drake2-Bには、ノッチフィルタは内蔵されていません、Qマルチとセットでオプションです)
SSBの復調については、Drake2-Bのほうが歪みが少なく感じますし、本機でとても気になる強い信号復調時の頭の気になるクリック音などしません
これらの原因が、プロダクト検波入力信号が過大なのか、AGCの利きが悪いのか、いまひとつはっきりしません(本機は、RFとIF1段、そしてミキサー2段にAGCをかけています、私の常識では、ミキサーにはAGCはかけないとなっていますが!)
プロダクト検波器への入力レベルを下げてみたり、IF最終段からのAGCあるいはプロダクト検波の取り出し位置を変更するなどすると、それなりに改善されますが、それでもまだ不満が大きく残ります
AGCのアタックが遅いことだけに注目・・・AGCラインの500KΩの抵抗をダイオードに交換、この単純な一手が一番効果が認められましたので、他の回路はオリジナルに戻しました(AGCのアタックを早めることで、SSBの復調が目に見えて改善)

CQ記事によると、AM 1μV入力以下でS/N10db  SSB/CWでは、0.5μV 以下 とあります

最終調整後の受信感度  S/N10dbが得られるSSG信号強度
 AM 30%変調ON/OFF 
帯域幅 4KHz
 SSB 信号ON/OFF 
帯域幅 2.5KHz
 3.8MHz 0.7μV 0.2μV
7.2MHz 0.7μV 0.2μV
14.2MHz 1.0μV 0.2μV
21.2MHz 1.5μV 0.3μV
28.6MHz 1.5μV 0.3μV
なかなかの感度です
AMについては、残留ノイズの問題か?ハイバンドで今一歩 真空管の選別で向上するかも、です
SSBの復調音の今以上の改善について、
検波器への入力レベルを下げることでより改善されますが、トレードオフで得られる音量が低下します
2020.05  JA4FUQ

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