森山知己ロゴ
10/13//2009  レポート

古筆の流れ 関口研二著

■ 大学を出た頃、日本画について考えるといっても私に出来る事と言えば絵を描く以外に無く、抽象的な問題に終始するばかりだった中、書の基本を通して使う道具や材料そのもの、またはそれらの機能や、それらを使って線を引く技術といった具体的な着目点についての出会いを与えてくださった方がこの本の著者である関口研二さんでした。

その関口さんがこの度、芸術新聞社より「古筆の流れ」という本を出版されました。
 
古筆の流れ 関口研二著 芸術新聞社 表紙
>> 古筆の流れ 関口研二著 芸術新聞社 表紙 (27.12KB)

もう二十数年前になりますが、関口さんとの出会いは、私が描いた絵にする署名、いわゆる落款の印を篆刻していただいたことでした。

その後、おりにふれ古筆の研究会に呼んでいただいたり、ヒントとなる具体的な物を見せていただいたり、私の疑問に対する考え方や進むべき方向性などへのヒントをいただくなど、単に絵と書といったジャンル分けにとらわれないものの見方、この国の文化のコアとのふれあい方を教えていただいたように思っています。
 
このサイトで紹介している筆の事や紙の事、墨、それらの機能をもとにしてこの国の価値観成立について考える手法等も関口さんとの出会いから始まった事の様に思います。


このような話は、ある意味でこの本の紹介としては適していないかもわかりません。なぜならサブタイトル、帯に書かれている通り、この本は「臨書・鑑賞・類聚整理」という構成をとり、関口さんの認める書の有るべき姿、そこに至る学習の仕方を懇切丁寧に伝えてくれているいたって全うな「書の学び方の本」なのです。

好き嫌いといった個人の好みを越えて、良し悪しといった歴史的な価値観を獲得する具体的な方法が、用具用材の選び方、筆の持ち方にはじまり、何を手本にどのような学び方をすればよいのかといった紹介にいたるまで丁寧に書かれているように思います。

同じ「筆」を使う「日本画」を学んだり、考えたりする上で示唆の多い本であることは言うまでも有りません。
                     僭越ながらご紹介まで。