教養講座「日本画って何?」伝統と現在 7月4日
今回はこの池田遙邨作品「南郷の八月」本物が会場に展示されての講座となりました。この絵、洋画から日本画に池田遙邨が転向し、当時の帝展へ出品した作品です。郷里の先輩、小野竹喬との出会い、アドバイスから竹内栖鳳門下となりました。制作の遅れから締め切りに間に合いそうも無くなったとき、同門の仲間が手伝って絵が出来たという話を遙邨は残しており、どうしてそんな事が出来たのか?日本画を描く古典的技術の話を材料、技法の説明とともにまずいたしました。掛け軸のこの絵、当たり前の事ながら巻く事が出来るのです。塗り重ねられた絵の具は多くて4層程度、そんなに難しい事をしている訳ではありません。仕上がりの色を希望通りにするためには下塗りは何を塗るといった決まり事を仲間で共有していたのです。同時に当時日本画の基本とされた「運筆・臨画・写生」の共有も大きかったでしょう。洋画と呼ばれるものでも、そして現在の日本画でも写実的な絵に写生は変わらず存在します。臨画というのは模写をするような価値観と捉えると、一番最初の「運筆」が気になります。続いて今の日本画が失ったかに見える存在、「運筆の秘密」について私の考えをお話ししました。古い画法のことやら、筆という道具の事、そこに存在する「水」の関わりの話。最後は「伝統生態系」と題したテーマで話をまとめました。いま教育に組み込まれようとして話題の伝統教育に日本画として明確な形を与える私なりのアイデアや、日本人の特質、競争力になるものについて、日本画の素材を今日的な意味で捉えなおす話等いたしました。はたして、現在へ伝統がつながった話になっていればよいのですが。楽しんでいただけたとしたら幸いです。来場いただいた皆さん、本当にありがとうございました。
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以下は、今回講演のまとめです。